「お母様、これがコラシメ〜ル溶解剤です。お母様に渡しておくのが一番いいかと思って。」
「ありがとうございます。私は貴方にひどいことをしたというのに・・・」
「すべてお父様がいけないのです。そういうことにしときましょう、その方が綺麗にまとまるから。」
「そうですね〜」
王にコラシメ〜ルという枷をつけることに成功した白雪姫。
それから王はいろいろなショックも重なり、王政から引退を表明しました。
そしてそれを引き継いだのは王妃、つまり白雪姫の母親です。
「けれど貴方が新たな王になった方がよかったのでは?私なんかよりもよっぽどしっかりしています。」
「いいえお母様。私はまだ何も知らない子供です。まだまだ学ぶことがたくさんあります。」
「・・・そうですか。それでは貴方がこの玉座に座ろうとするまで、ここは私が守っていましょう。」
「それでは私はこれで失礼します。」
今までのわだかまりがなかったかのように、穏やかに笑いあう白雪姫と王妃。
そして城の中も国も新たな王を歓迎しています。
「!」
「翼、英士、三上!」
「挨拶は終わったの?」
「うん、お母様の政治構想も聞いた。やっぱりすごく頭がいい。私なんか全然及ばない。」
「そんなことないと思うけど。確かに知識は叶わないかもしれないけど、には人を惹きつける力がある。
力になってやりたいってそう思わせる力もね。」
「結局一人で解決しちまったしな。ここまで来た俺らは一体なんだったんだよ。」
「ところで、全て終わったんでしょ?もう帰ろうよ俺の国に。」
「「空気読め、郭!!」」
辛苦をともに・・・ともにするはずだった仲間たちは、訪れた平和を祝福します。
白雪姫も自分が姫であることを忘れるくらい、気を許せる仲間たちになっていました。
「まあ郭の言ってることはともかく・・・一度僕の国に来ない?歓迎するよ。」
「は、結局お前も狙ってんじゃねえか椎名。」
「別に?まあ徐々にお互いを知っていきたいとは思ってるけど。」
「・・・そういえば椎名、俺ら決着まだつけてなかったね。ここで沈めてやろうか?」
「・・・ははっ、望むところ!」
「やるなら城の外でやってこい。城を壊すな。」
仲間たちと笑い合っていると、廊下から声が聞こえてきました。
言い合いを続ける仲間たちはほっておいて、白雪姫は聞き覚えのあるその声の方へと向かっていきます。
「やはりそうですか。さすがにビックリしましたよ。」
「ふふふ、そうですか?」
そこには王妃と使用人がいました。
白雪姫は声をかけようとしましたが、なにやらただならぬ雰囲気。思いとどまり彼女たちの声に耳を傾けました。
「王が嫌われていることは知っている。用心深いことも知っている。
だから姫を使うなんて、本当に悪ですね王妃。」
「そんなことはないですよ。」
「姫を憎むフリをする。けれどそこに王に愛されないという悲しい理由をつけ、さらにそれを姫に気づかせる。
そしてわざと森へと誘導し、外の世界を見せつけ王の悪政までも知らせる。優しく正義感のある姫が何もしないはずはない。」
「本当にあの子はいい子に育ってくれましたよねー。」
「最終的には貴方が王になるための計画だった。そういうわけですよね。」
「ふふふ。」
白雪姫は耳を疑いました。
なんと白雪姫がしてきたことは、全て王妃の計画だったのです。
「けれど私は前王よりもこの国をよりよくするつもりですし、いずれあの子にもこの玉座は譲るつもりです。
というよりもむしろ、ずっと一緒にいればいいんじゃないですかね〜そんなエンディングもありですよね〜」
すべては母親の手の上で踊らされていたのです。
白雪姫はひどくショックを受けました。
「(お母様がそんな・・・そんなこと・・・)」
「(やりかねない!!)」
そして王妃の言葉を受け、なんだかとてつもなく嫌な予感がした白雪姫はその場から走りだしました。
「おい!」
「僕らもあの王妃に踊らされてたわけか・・・腹立つな。」
「まあこの国も母親も俺はどうでもいいけどね。」
城の外まで走ると、白雪姫は足を止めました。
そして追いかけてきた男たちは、白雪姫の悲しげな後ろ姿を見てそれぞれ声をかけます。
「、やっぱり王妃とは少し離れた方がいい。
王妃も国のことはきちんと考えてるみたいだし、これからの構想も聞いて納得したんだろ?」
「そうだな、また悪政の噂でも聞いたら次はアイツを倒しにくればいい。」
「この国から離れることは俺も同意だね。」
「「「一緒に外に出よう。」」」
白雪姫は振り返り、彼らをまっすぐに見つめます。
さあ、彼女が手をとるのは・・・
一番口数は多いけれど、大体の場合まともなことを言っている西の王子
一番言動がおかしいけれど、どこか底知れなさを感じさせる東の王子
一番素直じゃないけれど、いつもさりげなく助け舟をだしてくれていた小人