白雪姫が差し出された手を取ったのは、西の王子でした。





「西の国は初めて・・・だよね、あの国に閉じ込められてたってくらいだから。」

「うん。だけど私は閉じ込められていたって感覚はないの。あの国のことは好きよ。皆すごくいい人たちばかりなの。」

「そう・・・。あんな目にあってもそう思えるところがのいいところだよね。」

「え?」

「何でもない。ホラ、見えてきた。あれが西の国だ。」

「わあー!」





白雪姫のいた国とは全く違う町並みに、服装、溢れ返るような数の人々。
王子に街を案内されながら、白雪姫は感嘆の声ばかりをあげていました。
そんな白雪姫に王子は優しく、ひとつひとつを説明していきます。





「おお姫さん!お帰りかい?!」

「だから僕は姫じゃないって言ってるだろ?!」

「これ安くしとくよ・・・って、姫さん!嫁さん連れてきたのかい?!」

「おーい皆ー!姫さんが嫁さん連れてきたぞおーー!」

「「「なにーーー!!」」」





行商人が周りに知らせるように大声で叫ぶと、みるみるうちにひとだかりが出来上がりました。
楽しそうな人々に白雪姫にも自然と笑みがこぼれます。





「あちゃー、これじゃあもう姫さんって呼べねえなあ。」

「だから僕は元々王子!業務停止にするよ?!」

「そりゃひどい!」

「そういって停止にしたことなんて1回もないくせになあ。」

「ふふっ・・・あははっ・・・!」





人だかりを抜けても白雪姫の笑いがやむことはありませんでした。
出会ったときから、彼は確かにとても可愛らしかった。
けれど、王子という立場にも関わらずこんなにも国民にからかわれているとは。





「いつまで笑ってるわけ?」

「ご、ごめんごめん。」





不満そうにしかめる顔もやっぱり可愛らしくて、けれどそれ以上彼を怒らせるわけにもいかない。
白雪姫は謝りながら笑いをとめ、また一緒に街を歩きます。





「言っておくけど、」

「え?」

「僕は男だよ。」

「え・・・あ、うん。」

「可愛らしいとか思われても全く嬉しくないから。」

「・・・はい。」

「何、今の間。おもいっきり思ってたってことだよね?そうだよね?」

「いや・・・そ、そんなことは・・・ないですよ?」

「嘘つくの向いてないよ、。」





確かに可愛い顔がコンプレックスなのかもしれない。
可愛いだなんて思ったり、笑ったりして失礼だったと白雪姫は反省し俯きます。





「まあいいけどね。」

「え?」

「言っただろ?お互いを知っていきたいって。」

「う、うん。」

「そのうち可愛いなんて思いたくても、思えないようにしてやる。」

「!」





女の子のような綺麗な顔をした王子は不敵に笑い、
白雪姫の白い肌はみるみる赤くなっていきました。





「覚悟しときなよ?」





それから王子の両親に紹介されて、白雪姫はとても気に入られたり
城下町で新しいものを見つけては驚き、喜んだりとしばらく西の国で過ごします。
そして、王子と笑いあいながら一緒にいる姿が度々目撃されたそうです。

その後の彼らがどうなったのかは、また別のお話。







Fin





『あー、ナレーション大変だった・・・!』