白雪姫が差し出された手を取ったのは、東の王子でした。









「待て待て待てちょっと待て!その手は何、顔が近い、体も近い!」

「どうしたの、夫婦なんだから当たり前のことしようとしてるだけでしょ。」

「誰が夫婦か!一番興味あったのが東の国だっただけ!」

「だからそれは東の国に骨を埋めるってことでしょ?」

「アンタの思考回路を直してやりたい!ネジ何本落っことしてきたのよー!」





東の国に向かう道中も、言い争いが絶えません。
仲がよい証拠でしょう。





「これのどこが仲いいの?!」

「ナレーター、よく見てるね。」





英士に褒められた・・・!





「あーもう・・・だからそういう嫁とか関係なくて、私は純粋に東の国を見てみたいのよ。」

「どうして?俺がいるから?」

黙れアホポジティブ。三国の中で一番発展してる国だからよ。資源も財力も政治力も。」

「まあ俺のいる国だからね。」

「だからってわけでもないけど、きっと学べることがたくさんある。」

「ふーん。」





白雪姫は国を出ることを選択しましたが、国を捨てたわけではありませんでした。
彼女なりに学び、たくさんの人を見て、世界を知りたいとそう思っていたのです。





「・・・英士はそんなに嫁が必要なの?」

「え?」

「会ったときから嫁だ嫁だって言ってたでしょう?そもそも私のことなんて知らなかったはずなのに。
一体何が目的だったの?」

「・・・。」

「・・・英士?」





それまでアホポジティブ・・・じゃなかった、何事にも動じていなかった東の王子が悲しそうに目をふせました。
予想外のことに白雪姫は慌てて王子に声をかけます。





「な、何?どうしたの?」

「・・・最初から知ってたって言ったら・・・どうする?」

「・・・え?」

「知ってたんだよ、白雪姫。」

「な・・・なんで?私、国以外で公の場に姿を現したことなんて・・・」

「俺は君の国に行ったことがある。ここへ来るには公務っていう理由が必要だったけど、
何かと理由をつけては、君の姿を何度も見にいってる。」

「!」





王子の突然の告白に白雪姫は驚きを隠せません。
言葉を失ったまま、王子の言葉に耳を傾けます。





「知ってるよ、君が国民に慕われる理由も、王に溺愛される理由も。
俺がこんなにも惹かれているんだから。」





いつもふざけているように見えた王子からのまっすぐな言葉。
白雪姫は戸惑いを隠せませんでした。





「これからも一緒にいよう。他の誰でもなく、と一緒にいたいって思う。」





今まで城に閉じ込められてきた白雪姫は、こんなにもまっすぐな告白を初めて受けました。
思わず王子から視線をそらします。





「顔が赤いよ?お姫様。」

「う、うるさいっ」





東の国につき、馬から降りて白雪姫は王子に手をひかれます。
馬から降りてもずっとそのまま繋がれた手を白雪姫がふりはらうことはありませんでした。



そして国政を学ぶためとそう言ったこの国の滞在理由が、少しずつ変わって見えていったのは
彼女を想う人の贔屓目か、それとも―――。







Fin





『あー、ナレーション大変だった・・・!』