白雪姫が選んだのは、小人の手でした。
「ねえ、このまま森に帰るの?」
「いや、せっかくだから森を出ようと思ってるけど。」
「え?戻らないの?!皆心配するよ?」
「大丈夫だろ。置手紙残してあるし。」
「うっわー、すごい淡白。」
「そんなもんだ、男の友情なんて。」
白雪姫には友達と呼べる人間がいません。
関係としては友達といっても良い人間はいたのでしょうが、周りがそれを許してくれなかったからです。
少しだけ小人が羨ましくみえ、彼女は小人を見つめました。
「あ?なんだよ。」
「友達たくさんいていいなあと思って。」
「お前の友達でもあるんじゃねえの?あいつら。」
「・・・そう思って、いいのかな?」
「むしろそれくらい思ってやらないとまた騒ぎ出すぞ。」
「そっか・・・!」
本当に嬉しそうに笑う白雪姫を見て、小人も静かに笑みを浮べます。
小人の隣を歩きながら、何か思い出したように白雪姫はまた彼に視線を戻します。
「森を出てどうするの?」
「適当に旅でもしようかと。」
「そうなの?!」
「ていうかお前がそうしたいと思って。」
「!」
「お前があの国が好きなのはわかりきってるからな。
どうせならいろんな国でいろんなことが知りたいだろ?」
「・・・一緒に行ってくれるの?」
「暇だからな。」
「ありがとう!」
最初はツンデレ・・・ゴホン、白雪姫を嫌っていた小人でしたが、彼女と一緒にいるうちに
白雪姫の国を思う純粋さや、それゆえの強さも見てきました。
そんな彼女だからこそ、彼は協力したいとそう思ったのです。
「・・・ところで三上。」
「あ?」
「小人の姿に・・・戻らないの?」
「え?ああ、別にどっちでもいいけど。何で?」
「・・・いや、あの・・・小人のときの三上って可愛いよね。」
「・・・は?」
「あんなちっちゃいのに強がってるとことか、かっこつけてるとことか、見れなくなるのが心苦しい・・・!」
「・・・お前・・・」
「私、実は可愛いもの好きなのかもしれない・・・!」
白雪姫の新たな一面に呆れつつ、小人は少し考えると出会った頃の姿に戻りました。
白雪姫はその姿を見て喜びながら彼を抱きしめます。
「可愛い・・・!!」
「・・・。」
「この姿だったら憎まれ口言われても怒らないかも!」
「・・・この間すでに怒ってなかったか?」
「それは大人三上を知らなかったからよ。この姿がこんなに恋しくなるなんて思わなかった!」
「・・・なんか屈辱。」
「何言ってるのよ、こんなに可愛がってるのに!」
純粋無垢な白雪姫はどこへ行ってしまったんでしょうか。
ああでもある意味可愛いもの好きなだけなのでセーフですかね?
「やっぱりやーめた!旅するのも不自由になるし。切り替えって結構体力使うし。」
「ちょ、ちょっと待って!そんな可愛い姿なんだからもう少し・・・」
「可愛がりたいって?」
「うん!」
「じゃあ、交換条件。」
「え・・・?」
その言葉と同時に小人の体がまた成長し、ぶかぶかだった服がピッタリに戻りました。
名残惜しそうに小人の頭があった場所を見たままかたまった白雪姫を小人が抱き寄せます。
「お前が俺を可愛がる以上に、俺はお前を可愛がってやるよ。」
「な・・・な、何よそれ!」
「当たり前だろ?男にそんな屈辱を味あわせるんだ。」
「それとこれとは・・・」
白雪姫が何か言おうとした途端、今度は彼の体が縮んでいきます。
そしてまた小人の姿になった彼はつぶらな瞳を輝かせながら言います。
「ダメか?」
「いいです。」
「は、単純。」
「くっ・・・そんなに可愛いなんて反則よ!」
一国の姫と森の奥深くに住んでいた小人。
二人の旅はこれから始まります。これから先何が待ち受けているのかは、まだ誰にもわかりません。
Fin
『あー、ナレーション大変だった・・・!』