「はじめまして。君が双子の妹さんだね?」

「は、はい・・・。」

「俺は隣国の王子だ。先日の舞踏会にも参加させてもらっていた。」

「そしてこれがそちらの彼女が所有していたダイヤの靴でーす!」

「なるほど、型も一緒だ。まあ確認するまでもないけれど、証明できるものがあったのは何よりだな。」





ダイヤの靴の持ち主がサンドリヨンだとわかってから、事態は急転します。
同じ家にガラスの靴の持ち主、そしてダイヤの靴の持ち主がいたことで、
家にはたくさんの使いが現れ、慌しい状態となっています。
そして今、部屋の一室で二人の目の前にいるのは、シンデレラは面識がない、柔らかい物腰の青年。
もう一人はその彼についているらしい従者でした。





「・・・仕組まれてたんだよ。」

「仕組まれてた?」

「そんな言い方はよしてくれ。俺も本当なら君を迎えに行きたいところだったんだけどね。」

「商人が僕らにランプをくれたのも、魔法使いが現れたのも、舞踏会でコイツに会ったのも。
全部仕組まれてたってこと!」

「あー!王子にコイツなんて言ってますよ!ダメじゃないっすか!」

「いいんだ。俺は彼女のそんな正直なところにも惹かれているから。」





シンデレラにはまだ事態が飲み込めません。
サンドリヨンと隣国の王子が知り合いだったことも、すべて仕組まれていたと言われたことも、
一体何を言っているのか、いまいち理解ができず、疑問の表情を浮かべます。
そんなシンデレラの表情を見て、隣国の王子は穏やかに笑みを浮かべます。





「俺は町で君たちの姿を見ているんだよ。」

「え?」

「実は・・・ここだけの話だが、こちらの国に来た際、どのような国なのかと町に出てみたくなってね。
王子という肩書きがつくと、皆かしこまってしまうから・・・」

「お忍びってやつっすね!」

「それで買い物中の君たちの姿を見たんだ。そして俺は・・・彼女に恋をした。」

「けど、自分の国でもない場所で好き勝手に出かけて、そこで見つけた町娘を好きになっただなんて、
さすがに言えないって王子は言うんですよ。俺だったら好きになったら突っ走っちゃうけどな〜!」

「はは、けれど俺はどうしても彼女が忘れられなかった。そこで閃いたのが今月開かれる舞踏会の話だ。
もともと俺は招待されていた身だからな。」

「でも、彼女が来るか、来られる立場かどうかはわからないっしょ?
だから自然に舞踏会へ行くようにいろいろ根回しをさせてもらったんだよね。」

「それじゃあ・・・いつも来る商人さんから・・・?」

「ああ、騙すような形になりすまなかった。」





シンデレラは唖然としつつ、あまりにも順調に進んだ舞踏会までの道のりを思い出し、妙に納得してしまいました。





「じゃあ、サンドリヨンが突然消えたのも・・・」

「ああ、俺と一緒にいたんだ。」

「一緒にいた?誘拐したって言い直してよね。」

「多少強引ではあったな。すまない。」

「王子ってより、お前だよ!従者!」

「だって彼女、暴れようとするからー!」





王子に対して気兼ねなく話すサンドリヨンを見て、シンデレラは安心したように笑みを浮かべます。
口は悪いけれど、表情が嬉しそうなことは、シンデレラにはわかるのです。





「誰が嬉しそ「でね!本当はダイヤの靴なんか使わなくても、彼女の正体は知ってたんだけど・・・」」

「やはり隣国の娘ということで反対意見が多いのは目に見える。
けれどなんとか説き伏せて、この靴の持ち主を探しだせたら結婚を認めてもらうことになった。
もちろん、正体はまったくわかっていないという前提つきで。」

「偶然にもこの国の王子たちも同じ状況だったし、割とスムーズにいきましたよね!」

「あとは彼女が、確たる証拠となるもう片方の靴を、売り払ったりしていないことを信じるだけだった。」

「そうと決まれば、この国の探し方に従って、一緒に彼女を探していくだけ!」

「そして、出会った彼女はもう片方の靴を大切に持ってくれていた。」

「誰も大切になん「そしてここからは俺の望みなのだが・・・」」

「なんですか?」

「君が彼女と仲の良い双子だということは知っている。けれど、俺には彼女が必要なんだ。
どうか、彼女と結婚させてもらえないだろうか。」

「なんで僕がけっこ・・・むぐぐっ・・・!」





『・・・すっごいスムーズ。』

『渋沢がちょこちょこ藤代を使って、椎名を黙らせてるもんな。』



誠実な王子の様子に、シンデレラが断る理由などありませんでした。
最愛の姉が幸せになれる。それ以上に嬉しいことがあるでしょうか。





「もちろんです。サンドリヨンを幸せにしてあげてください!」

「そうか!ありがとう!」

「二人で話を進めるな!!」

「あ、さっきご両親にも許可もらいましたから大丈夫っす!」

「そういう問題じゃなくて、僕の意志は?!」

「それでは早速俺の国へ来てくれ。シンデレラ、彼女の大切な君も連れていきたいところだが・・・」

「・・・?」

「君を待っている人もいるだろう。また今度、ゆっくりお茶でもしながら話をしよう。」

「ちょっと待てえええ!って、おい、藤代?!人を抱えあげるな!離せー!!」

「いいなあ、サンドリヨン。・・・・・・・・・・・いいなあ。」





『すごく王道になったな。翼姫が。』

、あれ本気で呟いてね?』

『まあの相手たちはアレだから。』

『渋沢は意外と演技うまいなー。俺惚れそうになっちゃった!』

『人の趣味にとやかくは言わないけど・・・』

『その覚めた目やめてくれる?!冗談だよ冗談!』





幸せそうな二人を見送り、それと入れ違いで家にやってきたのは、
先日舞踏会で出会ったこの国の王子でした。





そして、シンデレラに声をかけたのは・・・





自分勝手だけれど面倒見の良さそうな兄

引っ込み思案だけれど優しい心を持つ弟


ちょっと待ったー!!