「「ようやく見つけた」」





サンドリヨンたちと入れ違いで現れたのは、あの日舞踏会で出会った二人の青年でした。
あの日、王子に出会ったことで王族の描かれている書物を読んだシンデレラは
その二人が両方とも王子であることに気づきます。



『あれっ・・・?もう台本ねえぞ・・・って横山?!』

『やけにスムーズに話しているな。またあいつにだけ台本が渡されていたということか?』





「な、なぜ王子が二人もこんなところに・・・?」

「それは・・・」





バンッ!!





「え・・・?!」

「なんだ?!」





王子がシンデレラの前に現れた理由を伝えようとしたところ、
玄関の扉が勢いよく開きました。驚いてそちらに視線を向けると、そこには美しい少女が立っていました。





「・・・はっ・・・はあ・・・!よ、よくもあんな奴を押し付けてくれたね、シンデレラ!」

「サンドリヨン?!なんで・・・!王子様と一緒に出て行ったはずじゃ?」

「なんで僕があんな男とハッピーエンドなんて迎えなきゃならないわけ?
そもそもこんな役聞いてないんだけど!僕はそもそも・・・」

「あー、落ち着けそこの。」

「役は最後までやり切れよ!俺だって・・・俺だってピンクの・・・くっ・・・!

「知らないね。シンデレラ。お前が一番愛しているのは誰?
双子の姉である僕に決まってるよね?そうだよね?
いきなり現れた王子にいきなり嫁いでいきなりハッピーエンドな展開だなんておかしいよね?」

「はあ?!」

「ちょ、待てお前っ・・・!」

「まあ・・・お互いいじめられてて支えあってきた姉妹だから・・・大切っていうのはわかるけど・・・」

「わかった!」





サンドリヨンは大きく頷くと、指を鳴らしてどこかに合図を送りました。
そこに現れたのは・・・





「はーい!また会ったね〜!」

「魔法使いさん?!」

「お疲れやな〜」

「商人さん!!」

「これ以上俺たちに何をやらせると・・・」

「もう嫌!俺!」

「ねずみさーん!!」

「僕も混ぜてください〜」

「お母様まで?!」

「ちょっと待てお前ら!!」

「なんだこの展開っ・・・!!」





『ちょっとちょっと何この展開!どうするの?魔王でも倒しに行くの?!

『そういえばこの間藤代に渡された漫画は、同じような展開だったな。
そうか、王子が敵か。』

『そうか、じゃねええ!!そこ納得するところじゃないから!』





まるで少年漫画の王道のように、今までの登場人物たちが一斉に王子に飛び掛りました。
・・・あれ?ところで姉たちは?





「役に立たなそうだったから、呼んでない!」





そうですか。教えてくれてありがとう。
唖然とするシンデレラをよそに、サンドリヨンは不敵な笑みを浮かべます。





「僕があんな終わりで納得すると思った?あまいね!」

「そこ勝ち誇るとこじゃねえよ!!」

「ちょっと、マジで待て!おい従者!今こそお前らの出番だろ?!」

「「ただいま業務時間外です。」」

「お前らって奴は・・・!あーもう!」

「なんだこの展開!!お前らもこれでいいわけ?!」

「おもしろいからいいと思うよ〜!僕もまた出番もらえたし!」

「せやな。普通のハッピーエンドよりはおもろいわー。」

「僕も同感です。本当はお母様エンドとかあるとよかったんですけどね〜

「・・・悪い、俺たちは逆らえない。」

「・・・うっ、うう・・・」

「さて、行くよシンデレラ!」

「ど、どこへ?!」

「もちろん、二人で暮らせるところへ!」





王子たちが埋もれて動けない間に、サンドリヨンはシンデレラの手を引いて走りだします。
シンデレラは戸惑いつつ、けれど大好きなサンドリヨンが一緒にいることに嬉しさを隠せません。
ただ、ひとつ気がかりだったのが・・・





「サンドリヨン、本当にいいの?」

「何が?」

「だって王子様と結婚できたんだよ?もういじめられることも、貧しい思いをすることだってなかったのに・・・」

「バカじゃないの?」

「え?」

「どんなにお金があっても、楽が出来ても、お前が傍にいないと意味がない。そんなこともわからないの?」





シンデレラを見ることなく前を向いて走ったまま、まるで当たり前のように伝えられた言葉に、
彼女の不安は取り除かれ、自然と笑みが浮かびました。





「シンデレラもいいよね?」

「何が?」

「さっきの間抜けな王子たちと、幸せに暮らせたかもしれない。」

「あはは、そうかもね。」

「でも、もう後戻りは出来ないし、させない。僕が幸せにしてやるから。」

「うん!」





二人は笑顔で走り続けます。
きっとこの先も、たくさんの困難が待ち受けていることもわかっていました。

けれど二人ならば大丈夫。



今まで苦労してきた分、いや、それ以上に幸せになれる。



そうして信じて、これからもお互いを支えにし、幸せに暮らしていくことでしょう。





Fin





『いや、Finじゃねえよ!この子ら姉妹だろ?!根本からおかしくね?!どういうオチ?!』

『サンドリヨンエンド。』

『横山ー!お前何やってんの?!いつの間にあんな台本もらってたの?!』

『また渡すのを忘れていたのか?』

『ううん、渋沢たちが出た時点でオチを予想した椎名が、協力者たちを買収・・・集めたんだよ。』

『すげえな椎名!!』

『最初は魔法にかけられていたサンドリヨンが、男に戻るって話だったんだけど、
それじゃあ話が長引くじゃん?それはナレーターの俺が困るので、駄々をこねてみた。』

『駄々をこねる?!説得じゃなくて?!』

『で、埒があかなかったから、あの辺で妥協したらしい。
それがあのサンドリヨンエンドです。完。』

『完。じゃねえよ!お前さっきからちょくちょく使いすぎだろ?!』

『ああ眠い。お疲れー。』

『無視すんな!!』

『ふむ・・・今回はなかなか学ぶことが多かったな。』

『学ばなくていい!変な知識は入れなくていい!そのままの君でいて!!』





お疲れー!打ち上げでも行くかー!!