貴方の側にいたい。





支えでありたい。





それがどんな形でも、構わないから。













想い
















「克朗っ!」

「・・・ん?。」

「・・・はーっ。こんなとこで何してんの?」

「何って・・・読書だが・・・。」





学校中を駆け回ったんじゃないかって位に走って、やっと克朗の姿を見つけた。
きょとんとした顔の克朗がいる先は図書室。静かな空間に、私と克朗の声が響き、
数人の図書室常連の生徒が顔を上げて私を見る。





「わかってるよそんな事!」

?何怒ってるんだ?」

「っ・・・。」

「とりあえずココを出るか。周りの迷惑になるからな。」





克朗が席を立ち、本棚へ本を戻す。
まるで何事もなかったかのように、いつも通り穏やかな表情のままに。

私の様子を見てか、克朗は人気のない学校の裏庭に向かう。
そこでまた、優しい笑顔を向けて、静かに問い掛ける。





「・・・どうした?」

「・・・ちゃんに・・・会った。」

「そうか。じゃあ、聞いたんだな。」

「・・・。」

「やっぱり、ダメだったみたいだ。の決意は固かった。」

「克朗・・・。」

「俺はが好きだが、には別に好きな人が出来た。
それなら・・・俺はの幸せを願うよ。」

「克朗っ・・・!!」





あまりにも悲しそうに笑顔を見せる克朗に抱きつく。
どうして克朗がこんな想いをしなければならなかったんだろう。
私だってつらかった。悲しかった。でも。
克朗が幸せでいてくれたことが、何よりの救いだったのに。





「私の前でまで無理しないでよ・・・!無理して笑わなくったっていいんだよっ・・・!」

「・・・・・・。」

「優等生じゃなくていい。いい人じゃなくったっていい。
私の前でくらい、本音を出していいよっ・・・!!」

「・・・。」

「私っ・・・!克朗が・・・」





想いが溢れて。
克朗の側にいたいと、今までずっと思ってきたのに。
それでも、こんなにも貴方の側にいたいと思ったのは初めてだった。





「っ・・・。」





想いを伝える言葉は途中で途切れて、代わりに私は克朗に強く抱きしめられる。
そして何かをこらえるように、言葉にならない声が聞こえる。





「どうして・・・だったんだろう。」



克朗のかすれたような声が聞こえる。



「こんなに、こんなに人を好きになったのは初めてだったんだ・・・。」



胸が、痛む。



「この幸せな時間が続けばいいと、そう願っていたのに。」



胸が、苦しい。



「どうして、どうして俺ではダメだったんだ・・・。」



まるで自分のことのように、痛くて。苦しくて。



の幸せな顔を見ていたかった・・・。笑っている顔を見ていたかった・・・。」





涙が、溢れ出す。
克朗の言葉に自分を重ねて。克朗の想いの深さを思い知って。

いつも冷静な克朗が、こんなにも取り乱して。
いつも笑っている克朗が、涙を流してまで想う相手。

克朗の初めて好きになった相手。





お互いの泣き顔を隠すように、抱き合ったまま、無言のままに時間は過ぎる。
5時間目の予鈴が鳴ったとき、克朗が力を緩める。





・・・。」

「・・・何?」

「すまなかった。すっきりしたよ。ありがとう。」

「・・・私は何もしてないってば。」

「そうか。」

「やっぱり5時間目・・・出るわけ?」

「そうだな。」

「こんなときまで、バッカじゃない?」

「はは。ひどいな。」

「・・・私はサボろっかな。」

「まあ、たまにはいいんじゃないか?」





もう泣いた跡も目立たない克朗と違い、私は克朗以上に泣いていたから
きっと目が赤いだろう。こんな顔、誰かに見せるのは嫌だし。





「じゃあ俺は行くな。」

「・・・克朗。」

「・・・ん?」





「私は、いつでも側にいるよ。」





「・・・?」



克朗が振り向いて、少しだけ驚いた表情を見せる。



「私は・・・。」



私の言葉を待って、私を見つめる。









「私は克朗の、幼馴染でしょ?」










「だから謝らなくていいよ。いつでも頼って。」

「ああ。そうだな。ありがとう。」





克朗にちゃんって存在が出来たとき、私は後悔した。
自分の想いを伝えなかったことに。
だからもしも『次』というものがあるのなら、すぐに気持ちを伝えたかった。

けれど、きっと今の克朗にとって、私の気持ちは重荷でしかないから。
ただでさえ苦しんでいる貴方を、これ以上苦しめる必要なんてない。





克朗が去った後の裏庭で、私はまた涙を流す。
克朗の想いの強さに、自分の想いの強さに。

こんなに自分が無力だなんて思わなかった。
周りに褒められたって、何かで一番になったって、こんなとき何もできない自分が悔しくて仕方が無い。





克朗はこれからも、何もなかったかのように過ごすのだろう。
笑顔で、悲しい心を隠して。それこそ誰にも気づかれないように。

ちゃんが、気にすることのないように。





それなら私は、そんな克朗の居場所になろう。





克朗が弱音を吐いても、泣きたくなっても
いつでも受け止められるような居場所になろう。





それが幼馴染としてでも構わない。





それでも私は、貴方の支えになりたいから。












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