突然の言葉。
ねえ、どうしてこんなにも人を振り回すのかな。
落ちてきた天使
「先輩っ・・・!!」
「お!どうしたどうした栗色ちゃん!」
「あの、あのあのっ・・・!」
風祭への気持ちの誤解も解けて、今やは桜井の恋愛相談役となっていた。
人は選んだほうがいいよ、って俺は一応言ったよ?言ったからね?
けれど桜井は結局への相談を止めることはなく、部活が終わった今もこうしてのところへと足を運んでいる。
この慌てぶりからすると、風祭との間に進展でもあったのかな?
「どうしたの?将の新たな癒しポイントでも見つけた?私にも教えて!・・・いや、やっぱり自分で見つけるからいい!!」
だからお前の思考回路はどうしてそっちに行くの。
どうでもいい。心底どうでもいいよ、そんなこと。
「いえ、風祭先輩はいつも癒され・・・じゃなくて、違くって・・・あのっ・・・!」
そして桜井まで何だかに毒されてる。
だからに相談するのなんて止めなって言ったのに。
「将の背伸びたとか?やったね!将も大喜び!!」
「背は伸びてません!でもいいんです!・・・って違うんですってばー!」
ねえ風祭バカ二人。話全然進んでないよ。
そしては話を聞け。
「一緒に・・・!一緒にサッカーの練習してもいいって言ってくれたんです!」
「練習?」
「あの、私、サッカーの自主練習してるんですけど・・・。場所がなくって・・・。
それを風祭先輩に相談したら・・・一緒に練習する?って…!」
「おお!やったね!」
興奮した様子の桜井の頭をがなでる。
ていうかあれ?告白はまだしないのかな?
まあでも、自分で動いて風祭と二人になるきっかけも作ったわけだし。
気の弱い桜井にしては一歩前進ってとこかな。
「でも、先輩の邪魔にはならないようにしようと思ってるんです。」
「何で?その勢いで押しちゃえばいいのにー。」
「先輩のことは好きですけど・・・サッカーのことはまた別の話だと思うんです。
サッカーをしてるときは、それだけ見ていてくれていいんです。」
「栗色ちゃんはそれでいいの?」
「はい!私、サッカーをしてる風祭先輩が一番好きなんです!」
オドオドとして、と風祭の心配をして泣きそうになっていた桜井が嘘のように。
彼女は笑って頷いた。もまたそんな桜井を見て笑みを浮かべる。
「じゃあ何も言うことはないぜ!頑張れ栗色ちゃん!」
「はい!先輩も!お話聞いてくれてありがとうございました!」
「おう!頑張るさっ!またいつでもおいで!」
本当に報告に来ただけらしい。まだジャージ姿だった桜井はそのまま、女子サッカー部の部室へと戻っていく。
なんていうか、この短期間によくなんかに懐いたものだよね。
桜井を見送るを見ていると、ふいに彼女がこちらへと振り向く。
「ねえ英士。」
「・・・何?」
「私に一体何を頑張れと言ったのでしょうか。栗色ちゃんは。」
「・・・あんなにはっきり返事しといて、何言ってんのヘボ天使。」
「ぎゃー!ひどい!だってあんなに爽やかに言われたら返事するしかないじゃんさー!!」
本当、桜井は人選を間違ってるよ。
今からでも遅くない。別に人を探したほうがいいと思う。
「・・・進展したはいいけど。あれじゃあいつまで経ってもくっつかないんじゃないの?あの二人。」
「でもいつかはくっつくと思うよ?」
「いつかって・・・それまでずっとここに居座るつもり?」
「・・・へへっ!」
その笑いは何。
返事になってないから。一体いつまでうちに居つくつもりだよ。
既に日常になりつつある、のいる生活。
こんな生活に慣れてしまった自分が少し、恐ろしい。
「・・・そういえば。」
笑って誤魔化そうとするを一瞥して、俺はふと思い出す。
一番初めにとした約束。
「もうすぐ1ヶ月だね?」
「え?」
「最初に約束したよね?1ヶ月経ったら、全て元に戻して俺の家を出ていくって。」
それはちょっとした意地悪で。
1ヶ月・・・残り数日であの二人がくっつくはずもないし。
ここまで付き合った以上は追い出す気もないんだけど。
わかってたけど、があまりにヘラヘラしてるから。ちょっとからかいたくなった。
「・・・あー・・・。」
「まさか忘れたわけじゃないよね?」
「そっか。1ヶ月か…。」
当然、わめいて困った表情を浮かべるんだろうって思ってたから。
急に静かになって神妙そうにその台詞を呟くに少し驚いてしまった。
「へへっ!ちゃんと覚えてるよ!」
「・・・意外と冷静だね?行くところが決まってるとか?」
「そうだね!」
のあまりに堂々とした態度に、さらに驚く。
ていうか、ここまで面倒みてきたのにそのあっさりした態度は腹が立つというか・・・。
いや、別にいいんだけど。うるさいがいなくなって、平穏な生活が戻ってくるんだろうし。
「どこに?」
「帰るの!天界に!」
「・・・は?」
やっぱりの思考回路も言動も理解できない。
俺の母さんを元に戻せるのにかかる時間が1ヶ月っていうのは聞いた。
しかもその時サバよんで1年って言おうとしてたのも覚えてる。
任務も終わってないのに、どうして天界に帰るんだ?
「・・・一時帰宅みたいなもの?」
「あはは!一時帰宅って・・・!」
「じゃあ何なの?」
「帰るんだよ。一時じゃなくて、もう戻ってこない。」
あまりにもあっさりとそういう彼女の言葉の意味が理解できなくて、思考が停止する。
聞きたいことは山ほどあったはずなのに。
このときの俺は腹が立つほどの笑顔で笑うを、ただ見つめて固まっていた。
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