仲良くなっていく二人。





ねえ、何か間違ってる気がするんだけど。

















落ちてきた天使



















「将ー!タオルだよー!!」

!贔屓はしないの!他の奴ら無視して真っ先に風祭のところに行くのは止めなさいって言ってるでしょ?!」

「ええ!だって姉御!!」

「誰が姉御よ。」





偉いな小島。よくあんな宇宙人の面倒見ようとか思うよね。
さすが一人で女子サッカー部を作っただけのことはある。





「最初に言ったわよね?真面目に仕事してもらうって。」

「え?!真面目にしてるよ!大真面目だよ!」

「そう言うならマネージャーとしてきちんとしなさいよ。風祭にばっかり構ってないで。」

「・・・う・・・。」





そしてあのを黙らせた。
なんかが姉御とか言うの、ちょっとわかる気がする。
何だろうか。小島って何か威厳があるよね。あと何か強そうだよね。





「すみませんでした姉御!!仕事するっす!!」

「・・・・・・わかればいいけど。」

「じゃあその他大勢にタオル配ってくるっす!」

「・・・・・・よろしく。」





小島が何か言いたそうだ。すごく言いたそうだ。

の言葉に返事をするまでの間に、どんな葛藤を繰り広げていたんだろう。
同情するよ。を扱うことに匙を投げた水野や結人も見習えばいいと思うよ。

そしてがその場を走り出して、投げつけるかのようにタオルを配りだす。
皆、唖然とした顔やら、困った顔やらでそれを受け取る。
本人悪気はないんだろうけど、それ、一番タチ悪いから。





「はい!英士!」

「どうも。」

「よーし!これで将にもタオルを・・・!」

「もう桜井が渡してるんじゃない?」

「そ、そっかー!しまった!!栗色ちゃんに先越され・・・あれ?」





が来る前までは、部員にタオルやドリンクを渡していたのは桜井を含めた女子部員。
今はマネージャーとなったがその役割を引き継いでいる。
だが一人では大変だろうと、未だ桜井が手伝って仕事を分担している。
風祭のことが好きな彼女。タオルやドリンクは当然彼女が風祭に渡しているのだろう。
そう、思っていたけれど。





「はい!将!」

「ありがとう。」





風祭は何も手にしておらず、水道で顔を洗っていた。
そして丁度よく渡されたタオルを笑顔で受け取る。
辺りを見回しても、桜井の姿は見当たらない。
先ほどまでは確かにサッカーの練習をしていたはずだけど。

もう一度グラウンドをよく見てみると、グラウンドの隅で体育座りで縮こまっている彼女を見つけた。
その隣には桜井の友達である戸田が座っていて、慰めているかのように彼女の頭をなでている。

けれど縮こまっている彼女の視線はたった一点に向けられていた。





「そっかー。将は背が大きくなりたいのかぁ。」

「うん。牛乳は毎日飲んでるんだけどね。」





いつの間にか背の大きさの話題になっていると風祭。
桜井はそこから動こうともせずに、ただただ二人を見つめていた。





「そっか!でもまぁいいよ!私的には今のままの将でいてほしいもの!





お前の好みは聞いてないよ。
そんなお前の好みに反応を返してくれるのなんて風祭くらいしか・・・。





「体の大きさっていうのは有利になるし。何より憧れるよ。」





あ、風祭がついに話を流すことを覚えた。
の好みスルーした。うん、それでいいと思う。風祭も少しは成長したんだね。



遠くから二人を見つめる桜井には、彼らの会話は聞こえていないだろう。
その内容は風祭の身長の話という、色気のかけらもない話。
だけど端から見れば仲睦まじく話す二人にも見える。





「ふーん…。そういうものなんだね。私はどんな体格でも将は将だと思うけどな?」

「え?」

「そりゃ体が大きければ有利なことはたくさんあるんだろうけど、将にはそんなこと関係なさそう。」





風祭が疑問の表情を浮かべてを見つめた。
は何かを考えているかのように、首をかしげながら言葉を続けた。





「どんな体格でも将は頑張るでしょ?できないことがあったって、できるまで努力する子じゃん!」

「!」





風祭が目を見開いた。
まさかの口から聞ける言葉とは思ってなかったんだろう。
それはそうだ。はいつもふざけてばかりだし(本人は真面目らしいけど)。

それでもは、時々はっとするようなことを言う。
自己中に見えて、意外と他人をよく見ていたりする。





「まあ将が大きくなりたいなら、私も一緒に願ってようかな!」

・・・。」

「でも、一つお願いね?」

「・・・何?」





が真剣な顔で風祭の手を取り、見つめる。
風祭は慌てたようにしながらも、に視線を返した。

そして、いつもとは違う穏やかな笑みを浮かべて・・・
















「大きくなっても可愛い将のままでいてください!!」

















台無し。



せっかくいいこと言ってたように見えたのに。
結構真面目な雰囲気にも見えたのに。
きっと風祭のお前への評価も変わってたはずなのに。
もう本当コイツ、バカだ。








「・・・っ・・・あははっ・・・!」

「なっ、何?将・・・!突然笑い出して!!可愛すぎるんですけど!!」

「そうだよね。背が小さいことを気にしてても仕方ないしね。うん、僕頑張るよ!」

「へ?何?これ以上何を頑張って可愛くなろうっていうの?!今でも充分に可愛いのに!!」





そっちじゃないから。
背のことね。サッカーのことね。可愛くなるのを頑張るとか脳内変換しないでね。





「ありがとう。」

「おう!何のことだかわからないけど!任せて!」





の言葉を思いっきりスルーした風祭。
さすがにこれだけにからまれたら扱い方もわかってきたのだろうか。
でも礼とかは言わなくていいと思う。
何を感謝されてるかもわからないくせに任せてとか言う奴には必要ないと思うよ。



今まで風祭がに見せる笑顔は、他人を気遣うことや、困ったり呆れたりして笑う顔。
だから風祭がと一緒にいて、こんなに楽しそうに笑う姿は初めてなんじゃないだろうか。

別に本当に仲睦まじいってほどに仲がいいわけじゃないだろうけれど。
笑いあう二人。先ほどよりももっと仲がよく見えて当然。



遠くにいる桜井へと視線をうつす。
そしてその時の桜井は顔を自分の膝に埋めて、もう二人の姿を見ていなかった。











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