俺の周りまで巻き込んで。





人を疲れさせることに関しては、右に出る者なんていないよね。















落ちてきた天使















「何でそんなに水野と敵対してるの。」

「だってタレ目さん、将のこと狙ってるよね!」

「・・・。」

「せっかく私が任務を全うしようとしてるのに!ていうか彼とは元々相性あわないし!!





本音は後半部分だよね?絶対。
ていうか狙ってるって・・・。水野は男なんだけど。
そりゃ風祭を必要以上に可愛がってるっていうか、過保護にしてるっていうか・・・。
何故かいつも一緒にいるけど・・・・・。

・・・いや、まさかね。





「おはよ!英士、ちゃん!」

「結人。おはよう。」

「おはよー!」

「今日も仲良く登校?羨ましいな英士!」





じゃあ変わる?喜んで変わってあげるよ結人。
そんな思いをこめて結人を見たら、結人はすごい勢いで目をそらした。





「お!おーい一馬!おーっす!」

「え?あ、おはよ。結人と英士、と・・・。」





結人が勢いよく手を振った先には、欠伸をしつつこちらへ向かってきていた一馬の姿。
俺たちに挨拶を返しつつ、を見て口ごもる。
そういえばと一馬が喋ってるのってあまり見たことなかったな。





!私はですが!何一馬、私の名前忘れたの?!」

「ち、違えよ!名前くらい覚えてるっての!」

「じゃあ何で呼んでくれなかったの!」

「別に、深い意味は・・・。」

「深い意味なく名前呼んでくれないの!ひどい!結人と英士は呼んで私は呼ばないの?!ひどい!!」

「え、あ、いや・・・。」





ああもううるさいな。
でも、うん、何となくわかった。
一馬も水野に似てるところがあるんだ。いや、悪い意味じゃないよ?
常識で測れないタイプが怖いと思うってところが。





「一馬ー!ちゃん泣かせるなよー!」

「な、どこが泣いてるんだよ!全然・・・」

「ひどい一馬・・・!私、こんなに泣いてるのに!!」

「泣・・・?!どこがだよ!!?涙だって浮かんでないじゃんか!!」

「泣いています。心で泣いています。涙大洪水です。」

「わかるかそんなもん!!」





あーあ。結人がノッてくるからまた面倒なことに。
ていうか一馬、そんな全部に反応しなくていいと思うよ。
調子乗るから。結人もも。





「ホラ、私の名前を言ってごらんなさい。せーの!」

「は、はあ?!」

「ノリ悪いぞ一馬ー!泣かせたんだからちゃんと名前呼んで謝ってやれよー。」

「だから泣かせてなんかっ・・・」

「ごちゃごちゃうるさいぞかじゅま!男なんだから決めるときは決めろ!」

「・・・っ・・・。」





ホラね。
助け舟を出してもいいけど・・・こんなんじゃ先が思いやられるし。
心を鬼にして見守っていよう。え?いや、決して俺が面白いからってわけじゃないよ?





「わ、悪かったよ・・・。」

「・・・。うっ・・・!」

「一馬!ちゃんが泣いた!どうすんだ!」

「え?いや、何でだよ!俺、謝ったじゃねえかよ!」

「もう一回だ一馬!めげるな!」

「っ・・・ご、ごめんってば!!」

「・・・ううー!」

「さらに泣いたー!どうすんだ一馬!!」

「な、何でだよ!何が悪いんだよ!」





ねえ一馬。
もうこんなバカな奴らほっといていいと思うよ。
そうやって全部真面目に返すからからかわれるんだよ。
まあそれは一馬自身が気づくことだから、俺はあえて言わないけどね。
え、いやだから、面白いからじゃないってば。





。」

「え?」

。」

「一馬っ!下の名前だって!」

「え、ええ?!」

「・・・。」

「ホラ、ちゃんがキラキラした目で待ってる!決めろ一馬!」

「いや、な、何で呼び方・・・」

「うわああ
「ごめん!!!」・・・・・・・うん!気にしてないよ!一馬!」





あ、一馬が心底疲れてる。
可哀相にね。まだ1日の始まりだっていうのにね。
ていうか始まってもないよね。大変だね。





「・・・え、英士っ・・・。」

「お疲れさま。一馬。」

「・・・。」





そう言ってニッコリと笑うと、今度は一馬が泣きそうになってた。
そんな一馬をがじっと見つめる。





「ねえ一馬。」

「な、何だよっ・・・うわあっ!!」





ピッタリと抱きついたに一馬が顔を真っ赤にする。
一馬の叫び声も空しく、俺も結人も一馬を助けようともせずに、ただその光景を見守っていた。





「・・・発見!」

「な、何がだよ!ていうか離れろ!!」

「私のオアシスその2!!」

「・・・やめろー!!英士!結人ー!!」





オアシスその1である風祭を想像したからだろう。
一馬が必死の形相で俺たちに助けを求める。
さすがに結人も一馬を助ける気になったのか、俺をチラチラと見る。





「・・・俺を見る前に自分で助けてあげたら?」

「いや、それは無理。マジで無理。」





だから皆、根性足りないんじゃないの?
俺はそれを毎日耐えてるって言ってるでしょ。

ていうかこれ、さっきの水野と風祭のパターンと一緒だよ。
まだ10分と経ってないよ?何でまた同じこと繰り返してるの?





「・・・。オアシスその2とかやってると、その1である風祭が逃げていくと思うよ。」

「へ?」

「当たり前でしょ?その1とかその2とか。癒しの場所はひとつに絞らないと。
そう何個にもいい顔してたら風祭だって気分悪いよ。荒んじゃうよ。癒しの風祭じゃなくなるよ。





ごめん風祭。
俺はたいして仲良くない君よりも、親友の方が大事だから。
だから頑張って犠牲になってね。応援だけはするから。





「う・・・。」

「・・・。」

「・・・そうか・・・。癒しはひとつか・・・。」

。」・・・。」

「・・・そっか、ごめんね一馬!」

「は?」





謝りながら一馬の体からが離れる。
謝られた方の一馬はワケがわからないように、唖然とした表情を浮かべた。





「私・・・やっぱり一番は将なの!
彼こそベストオブ癒し!!だから・・・一馬は仲良しな友達でいてね・・・?」

「「「・・・。」」」





え、何この痛い人。すごく殴りたいんだけど。
ホラ、俺はさすがに当事者じゃないから。だから一馬、お前ならいいと思う。
そんな唖然と間抜けな表情のまま固まってなくていいから。軽くヘッドロックでもお見舞いしてやりなよ。





「・・・わ!やべ!もう朝練始まるじゃん!」

「あ、本当だ。」

「い、行こうぜ!!」





早めに来たはずなのに、に構ってたらこんな時間。
ああもう、水野に怒られるなんて屈辱的なことになったらのせいだからね。

ファイトーと手を振るを一瞥する。
いや、お前もマネージャーでしょ?準備あるでしょ?

勿論そんなことを言うのに労力は使わなかったけど。
を見た先に、彼女をじっと見つめている視線が目に入った。

とても友好的とは言えない視線を送る後輩の姿。
がしてることを考えれば、まあ当たり前だとも言えるけれど。





さて、はどうするのかな。ちゃんと任務のこと考えているだろうか。
まあ何も考えてないんだろうけど。どうするのかちょっと見ものだね。






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