久しぶりにちゃんと仕事をするのかと思えば。





むしろ彼女よりも俺の方がちゃんと仕事してる気になるよね。

















落ちてきた天使


















「ヨンサ!!二人でどこ行くの?デート?」

「デート?!やだ!ユンそんな、恥ずかし
「部活だよ。」





昨日の休みは部活がなかったわけだけど、今日は1日ずっと部活だ。
残念なことにマネージャーとなってしまったと共に家を出ようと準備する。

ていうか休みの日にわざわざ制服着てデートとかしないからねユン。





「ええ!僕ひとり?寂しいよそれ!」

「仕方ないでしょ。ユンも急に来るから。」

「ヨンサを驚かせたかったのにー!何日も休みが続いて会いに来れることなんて滅多にないのにー!ヨンサのケチー!」

「・・・。」





口をとがらせて俺に猛抗議するユンに、小さくため息をついて。
ワガママ言わないでと窘める。全くもう、俺はユンの保護者じゃないんだけど。





ー!!」

「ユン・・・。」





俺には何を言っても無駄だとわかったのか、今度はの名を叫びながら彼女に抱きついた。

一緒に遊べないのなら、別にユンを部活に連れていったっていいんだ。
結人や一馬は顔見知りだし、ユン自身もサッカーは得意。
一番やっかいな水野だって、サッカーうまい奴を連れていくことに文句は言わないと思う。

けれど、を俺の幼馴染だと思ってる奴らとユンを会わせて、ボロが出ても困るでしょ?
だからユンには悪いけど、今回は大人しく家にいてもらおう。

チラリと俺を見たに視線を送る。
俺のこの考え、わかるよね?





「うん・・・!わかるわかるよ・・・!!」





ああ、わかってるみたい。
でも口には出さなくていいから。





「英士はひどいよね!冷たいよね!ユン寂しいんだよね?!」

「わかってくれる?!!!」





・・・・・・・は?!





「ひどいよ英士!ユンこんなに寂しがってるんだよ?!一緒にいてあげたっていいじゃん!!」





ひどいのはお前の思考回路だ。
え、ていうか、何で俺が責められてるの?





「私わかるもん!ひとりは寂しいんだから・・・そうだ!ユンも一緒に部活に来ればいいんだよ!!」

「え?僕も行っていいの?!」

「大丈夫大丈夫!タレ目さんは私が黙らせてあげるから!!」

「やったー!!ありがと!」

「・・・。」





・・・えーと。
何か二人で手を取り合って喜び始めたんだけど。
そして二人とも俺に対して思い思いの顔で威嚇してくるんだけど。

あ、どうしよう。
何だかコイツら、すごく殴りたくなってきた。





「ユンはサッカーできるの?」

「うん!できるよー。」

「英士よりも?」

「ヨンサよりも!」





・・・む。ユンめ、俺の力をなめてるな。
前に会ったときはユンの力の方が上だったけれど、俺もあれから大分成長したんだよね。





「それは聞き捨てならないねユン。」

「ヨンサ!じゃあ久しぶりに勝負する?」

「いいね。そうしようか。」





一応のことも考えてたわけだけど、俺もユンとサッカーしたくなかったわけじゃない。
むしろ久しぶりの勝負もしたかった。
何より考えてやった本人がユンを誘ったんだし(何故か俺責められたし)もう俺は知らないからね。


















部活に突然現れた部外者は、その実力を見せ付けて
「今日だけ」という条件で俺たちと一緒に練習に参加した。
あの頑固な水野を黙らせるプレーを見せるなんて、ユンはやはり相変わらずだ。

休憩時間になると、皆がユンの周りに集まる。
うるさいくらいの笑い声。俺はその集団から離れた場所にあるベンチに腰をおろす。





「風祭先・・・「将ー!!ドリンク持ってきたよー!!」」

「・・・あ、。ありがとう。」

「おう!将の為ならいくらでもドリンク作ってあげるさ!任せて!!」

「・・・。」





疲れきって地面に仰向けに転がっていた風祭。そこにいるの全然気づかなかったな。
彼にタオルでも渡そうとしたのだろう、に言葉を遮られた桜井が声をかけたそうにその場に立ち尽くす。

・・・これはの作戦なんだろうか。
風祭に必要以上にくっついて、桜井を焦らせる・・・って感じかな。

風祭はに渡されたドリンクを手に取り、それを勢いよく喉に通した。
その様子をはニコニコしながらじっと見つめる。





「な、何?」

「ふふふ。やっぱり将は癒されるなあ。」

「い、癒されるって・・・。あの、・・・手・・・。」

「いいじゃん!抱きつくの禁止なんだもん!」





風祭をずっと見つめていたが、さりげなく風祭の手を握る。
小島に「風祭抱きつき禁止令」(何それ)を出されていることはちゃんと頭にあったようだ。
風祭の手を両手でしっかりと握り、離さない。
一方の風祭はそんな光景に真っ赤になって固まっている。
風祭って本当に・・・単純って言うのか、純情って言うのか。





「毎日体力いるからね!将で充電しとかなくちゃ!」





そうだね。の場合、使ってる体力の90%以上が無駄な体力だと思うけどね。





「あのさ、僕のどこが癒されるの・・・?」

「え?全部だよ!将がそこにいることで癒しの空間が出来上がるわけですよ!素晴らしいねっ☆」

「・・・ぜ、全部って・・・。」

「その困った顔も可愛い!抱きつきたい!何なの将!私を萌え殺す気ですか!!」





もうお前、どんな変態だよ。
多分風祭引いてる。ちなみに俺はドン引いてる。





「かっ・・・風祭先輩は・・・!!」





搾り出したかのように叫ばれたその声は、ずっと立ち尽くしていた桜井。
お?反撃するのかな。












「風祭先輩は・・・全然可愛くなんてありません!!」













・・・あれ?





「栗色ちゃん?」

「はっ!あのっ・・・いえ、違くてっ・・・そのっ・・・」





「休憩終了!練習続けるぞ!!」





唖然とした表情の俺とと風祭。
桜井が何か言おうとしたその時、水野の声がグラウンドに響いた。(本当タイミング悪いよねコイツ)





「じゃあ僕戻るね。ドリンクありがとう。」





そう言って風祭はグラウンドに戻り、俺も立ち上がって駆け出した。





「何言ってるの栗色ちゃん!将すっごい可愛いじゃんかさー!」

「だからそのっ・・・あの・・・何でもないですっ!!」





走り出した後ろでかすかに声が聞こえて、桜井もその場から離れたようだった。





「うーん?」





その場には疑問な表情を浮かべて、ひとりが立ち尽くしていた。





「ま、いっか!!」





よくないよ。
お前は仕事上、ちゃんと気にしなよ。

結局練習に戻って、そんなことを考えてる余裕もなくなったけど。
桜井は結局、何が言いたかったんだろう。












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