コイツに関して、深く考えたって意味なんてないんだよね。






本当、勘弁してほしい。この猪突猛進。

















落ちてきた天使


















「英士英士!どれどれ?!どの子?!」

「・・・顔も知らないの?仕事やる気ないでしょ。」

「だ、だって仕方ないじゃん!情報は限られたものしかもらえないの!自分で確かめないといけないの!!
自分で調べるっていうことも大切なの!」





頬をふくらませるようにして、俺を睨む。
今更言っても無駄だから、俺は大人だから言わないけどね。
ねえ、だったら自分一人で調べなよ。





「英士!ねえ英士ってばー!」

「うるさい。ちょっと待ちなよ。猪突猛進。」





俺たちは今、風祭のクラスであるA組の前にいる。(ちなみに俺はC組)
のやかましい声に、その近くにいる人たちの視線を浴びる。

全く本気で勘弁してほしい。
こんな変人と知り合いだなんて、ましてや仲がいいだなんて勘違いでもされたら。
きっともう立ち直れない。





「・・・いい忘れてたけど。」

「ん?」

「俺、風祭とは仲がいいでもなんでもないからね。」

「へ?そうなの?」

「だからいきなりお前を紹介しても、疑問もたれるだけだからね。」





ああ。そうか。
最初からこう言えばよかった。俺もまだまだだな。





「ここで風祭を呼び出してを紹介しても、不自然でしかないってこと。
もっと自然に近づきたいなら、別の手を考えた方がいいと思うよ?」

「ええ!!」

「風祭がどいつかってことは教えてあげるから。後は自分でなんとかした方がいいんじゃない?」

「ええー!!」





・・・うるさいなこいつは本当に。
でも自分の考えながら正論でしょ。がそれを否定する理由も見当たらない。
とっとと風祭を覚えさせて、早く教室に戻りたい。静かに昼ごはんを食べさせてほしい。





「あれ?郭くん?」





静かに・・・早く・・・このアホ天使から解放・・・・





「どうしたの?あ、誰かに用?僕、呼んでこようか?」





・・・解放・・・されたかった・・・!!
何でこうタイミングよく現れるんだよ。俺の平穏な昼休みを返してよ。





「・・・風祭・・・。」

「うえー?!風祭くーん?!」

「え?!あ、は、はい!えっと・・・?」





ああ、自然な近づき方云々言ってたのが台無し。
そんな大声で初対面の名前を呼んで、ねえ本当お前バカじゃないの。





「・・・彼女はうちのクラスの転校生。」

「そして英士の幼馴染の です!!初めまして風祭くん!!」





くそ。顔を輝かせて挨拶するに、何だか腹が立ってきた。
こんな奴が自分の幼馴染となってるだなんて屈辱だ。
・・・でもここは我慢。俺はそんなに子供じゃないはず。あと1ヶ月くらいの我慢だ。





「ああ。そうなんだ。でも何で僕の名前・・・」





ホラ来た。
どうするわけ?何も考えずに大声で風祭の名前なんか呼ぶからだよ。
俺は風祭と仲良くなんてないから、俺がお前に風祭のことを話したなんて通じないよ。





「え、英士から聞いてたの!!」





人の話聞いてた?!
俺と風祭は仲良いわけじゃないって言ったでしょ?!
風祭だって絶対おかしいと思う・・・





「そうなんだ。郭くんから僕の話まで聞いてるなんて、二人ともよっぽど仲がいいんだね。」





風祭がニコリと笑って、俺たちを見る。
普通は疑問に思って訝しげにを見るはずが、風祭の思考はその上を行ったらしい。



風祭と俺は特別仲が良いわけじゃない
→けれど幼馴染(設定)のは風祭の名前を知っている
→俺が生活の細かなところまでに話している



→二人はそれほどに仲がいい





ち ょ っ と 待 て。どんな想像力だよ風祭!!
ていうかすごい嫌!すごい嫌な勘違いしてるから風祭!!そもそもどうしてそういう思考に走る?!
ニコニコ笑ってるし!ああ、も風祭も殴ってやりたい!(八つ当たり)





「改めて、僕は風祭 将です。よろしくね?さん!」

「・・・。」

「転校してきたばかりでわからないことも多いと思うけど何かあったらいつでも聞いてね。」

「・・・。」

さん?どうしたの?」





さっきまで騒がしかったの声が聞こえてこない。
風祭を見つめたまま、ボーっと突っ立っている。





「・・・感銘を受けました・・・!!」

「「は?」」





思わず風祭と一緒に声を揃えてしまった。
相変わらずの言動は予想がつかない。





「その優しさとその笑顔!素晴らしい・・・!!」

「・・・ええっ?」

「・・・。」

「えっと・・・あの・・・?」

「ああー・・・。今の態度にも癒される!君は癒しの天才か!!

「あの・・・さん?」

さんだなんて他人行儀な・・・!でいいよ!
ね?!将!!





風祭が困惑した表情で、を見つめた。
しかしはその表情もヒットしたようで、周りも気にせず風祭に抱きついた。





「っ・・・さん?!」

「私・・・いじめられたり、黒いオーラに包まれたり、首絞められたり・・・いろいろあって人間不信だったの・・・!」





それ、俺のこと言ってるわけじゃないよね。まさかね。





「そうだったんだ・・・。うん。僕も力になれることがあったらいつでも言ってね?」

「うん!うん!ありがと!将!それで、私の呼び方はね!!」

「あ、うん・・・。でも・・・その・・・そろそろ離れてくれないかな・・・?」





に抱きつかれてから風祭の顔は真っ赤だ。
それはそれは可愛らしい表情で。
ていうかに抱きつかれて赤くなるなんてどんな天然記念物だ。





「何で?将に出会えた喜びを体で表現してるのに・・・!!」

「あの、でも・・・さ「。」」

さん「。」」

「・・・。」

「はーい!じゃあそろそろ離れます!」





ねえ、誰だっけ。
呼び方に文句つけたら、ケチつけた奴。我侭だとか言った奴。

風祭もそろそろ気づいたほうがいいと思うよ。
コイツを調子づかせてはならないと。





「また遊びに来てもいい・・・?」

「うん。勿論!」





風祭がまたニッコリと笑う。
その表情にも嬉しそうに笑う。
何だか俺と全然態度が違わない?まあ別にどうだっていいけど。

・・・あれ?
でもは経緯はどうあれ、『任務対象』である風祭と面識を持ったわけだ。
人間不信だなんて言って(絶対嘘だと思う)、風祭の同情も引いた。
そしてクラスに遊びに行く約束も交わしたわけで。





・・・もしかしてって、ここまで考えての行動だった?





「英士?何ボーっとして!そろそろクラス帰ってお弁当の残り食べようよ!」

「・・・誰のせいで食べれなかったと思ってるわけ?」

「え?あはっ!ねえ〜?」

「・・・。」

「あわ!私のせいですね!あははっ☆英士には感謝してるよ!」





もう風祭と別れたらしいが、俺たちの教室へと歩を進める。
俺はため息をついて、彼女の後につく。(ていうか帰る方向同じだけなんだけど)





「いい子と友達になったなぁ〜!」

「・・・風祭?」

「うん!彼は私の心のオアシス!!」

「・・・。」





あの少しの時間で、面識を持った風祭と
がそこまで計算してたなら、実はコイツは相当のキレ者・・・





「よかったね。任務対象と仲良くなれて。」

「・・・へ?任務対象?」





・・・そうだよね。そんなわけなかったよね。





「・・・あ!うん!そうそう!!任務対象!私の計画どーり!!」





慌てて出てきたの勝ち誇った言葉に俺は反応もせず
そこに流れたのは、の空しく響く台詞と冷たい空気だけだった。












TOP  NEXT