恋愛説得論
「たとえばさー、こういう状況になるじゃん?」
「うんうん。」
「ここにFWが来て裏をかけたと思っても、DFの頭を越すギリギリのラインってのが難しいんだよな。」
「あー、確かに。うちのDFは背も高いしな。」
「かと言って高く上げすぎると、時間がかかりすぎて回り込まれるじゃん?」
「ははっ、それであの時千裕の頭にぶつけてたのか!」
「そう、わざとじゃないんだぜあれ!でもごめんな!」
「いや、俺は気にしてない。まあ試合中のことだしな。」
今、俺たち東京都選抜は東海選抜との合同練習合宿にやってきている。
初めて顔をあわせたナショナルトレセンから、こうした合同練習や研修会は何回か行われており、
ユース所属の奴は顔見知りもいるし、それでなくても別チームの奴らとも仲良くなることが多い。
そんな中、テーブルを囲んでサッカー談義をしているのは、俺らのチームの
と
東海選抜の山口圭介、小田千裕だ。どうやら先ほどの練習試合での内容について話しているようだ。
「優しいなちーちゃん。」
「いや別に優しいって・・・ちーちゃん?」
「千裕でちーちゃん。かわいくねえ?」
「うーん、そんな可愛いあだ名を千裕につけるのはどうかと思うよなー。」
「それはどういう意味だよ圭介。」
「うわ、別に悪い意味じゃねえって!」
かじゅまなんて呼ばれる自分と、ちーちゃんと呼ばれた小田を重ねながら
俺は長椅子に座って休憩しつつ、ぼんやりと奴らのやり取りを見つめていた。
「じゃあ圭介にもなんか呼び方考えてやれば?」
「そうだな・・・って、平馬くんじゃん!ひっさしぶりー!」
「あれ、さっき一緒に試合したような気がするけど。」
「気がするじゃなくてしてたけどね、思いっきり。
話すのが久しぶりってことな、
俺のこと眼中ないみたいに言わないでね?
まあ、それじゃあ圭介くんはその流れでいくとけーちゃんだな!」
「いらないいらない!流れとかいらないから!」
「えー、いいじゃんな?ちーちゃんとけーちゃん。なー、へーちゃん。」
「・・・そんなことより、圭介。お前に届け物。」
「って無視かよ!自分から話ふっといて!!何?へーちゃんがいけなかったの?!」
「って圭介なみにうるさいよね。」
「え?!なにそれ失礼!!」
「その驚き方は俺に失礼だ!!」
あの
のペースに巻き込まれないなんて、さすがだな横山平馬。
山口くんと
が一緒になって何か抗議しているけれど、全てスルーしてるのもすごい。
・・・俺にもそのスルー技術、伝授してくんねえかな。
「で、届け物って何?」
「ん。」
「・・・ってこれ、まさか。」
「いくら近場とはいえ、合宿先まで熱心だよなー。」
「なになに?どうしたの?」
「い、いや別に・・・」
「圭介、ストーカー被害にあってんだよ。」
「平馬ー!!何サラッとぶっちゃけてんだよ!!」
「まあ主に今みたいな手紙とか、贈り物ばっかで何か実害があるわけじゃないけど。
合宿先だけじゃなくて家にまで送られてくるってのもすごいよなー。」
「わーお、そこまで愛されちゃって羨ましい!」
「羨ましいか?手紙に半分記入済みの婚姻届とか入ってるけど。」
「・・・。」
「・・・。」
「ええー、だって僕らまだ結婚できないでしょー。まっさかー。」
「だってホラ。」
横山が山口くんから無理矢理封筒を奪い、その中身を取り出した。
2枚入っているうちの1枚を開くと、確かに何かが書かれた紙が入っている。
「お前勝手に・・・!」
「なんだよ圭介。いいじゃん手紙の内容じゃなくて、婚姻届の内容見せてるだけなんだし。」
「よくねえよ!お前のそのいいじゃんの意味が全くわからねえ!!」
「うっわー!婚姻届なんて俺、はじめて見たー!」
「
、お前もホラ、返せよ!」
「何でそんなに怒ってんだよ圭介。お前だって迷惑してるくせに。」
「そ、それと封筒の中身を他人に見せるっていうのは別問題だろ?!」
「「「・・・。」」」
「な、何だよお前らその目・・・!」
「そんなんだからつけこまれるんだよ、アホケースケ。」
「なんか圭介くんと話してると俺、すごい嫌な男になった気分になるな。」
「大丈夫、はどちらかと言えば嫌な男の部類だから。」
「ちょ、それどういう意味?!
俺すごいいい奴よ?ご近所じゃ笑顔の素敵な孝行息子で通ってるよ?!
なあそうだよな?俺いい奴だよな、ちーちゃん!!」
「・・・。(何で俺だけちーちゃんのままなんだろう)」
「ギャー!ちーちゃんにまで無視されたー!」
いつもはフォロー役であろう小田が無言で考え込んでしまったため、
が一人でギャーギャーと騒いでる。
横山は我関せずって顔をし、山口くんはもらった手紙に目を通しつつ困ったように頭を書いていた。
俺のほかにも数人が同じ場所にいて、奴らを見てはいるけれどあの騒ぎようはいつものことなのだろう、誰も反応しない。
「ていうかなんで平馬が手紙もらってきてるんだ?」
「つまらないものですがって、和菓子もらった。」
「物に釣られたのかよ!お前はほんとにもー!!」
「がめついな圭介。仕方ないから後でお前にもやるよ。」
「あ!俺も欲しい!食べたい!!」
「んー・・・それじゃあ1個だけな。」
「さすが平馬くん!」
「あーもー!本当に勘弁してくれよこいつらー!!」
「論点ずれまくってるな・・・。」
どうやら横山は物に釣られて手紙を受け取ったらしい。
迷惑しているっていう山口くんの叫びにも全く動揺してない。なんてマイペースな男なんだ。
やっぱり一目置いてしまうな、横山平馬。そして全くもって空気を読まない
もさすがだ。
さすがだと思うだけで、見習うべきところは何もないけど。
「で、圭介くんはその子にたいしてその気はないんだろ?」
「え?・・・ああ、うん。」
「まあ圭介くん、好きな子いるもんな!」
「・・・は、え、ええ?!」
「ベタぼれだよな。他の子が入る隙間なんてないっていうか。」
「あまりに一途すぎて絶対うざいって思われてるよなきっと。」
「ちょ、ちょっと待てお前ら!な、何でそんな・・・!」
「え、だって圭介くん、よく話題に出してくる子いるじゃん。家が近いから一緒に帰ってるとか
家で一人のときには料理も作ってもらったとか。彼女じゃないって言ってたけど、好きなんだろ?」
「バレてないと思ってる方がおかしいだろ。」
「まあそこは同感。」
彼らの言葉に山口くんが慌てたように、口ごもった。
飄々としている
たちにたいし、山口くんはみるみる顔が赤くなっていく。
その表情を見れば
たちの言葉が正解だと認めたようなものだ。
俺も隠すのがうまいほうとは言えないけど・・・山口くんもすごい顔に出る人だな。正直者っていうか。
「で、それは伝えたわけ?」
「・・・いや。」
「へ?何で?」
「その子、姿見せないんだよ。」
「え?どういうこと?」
「手紙も贈り物も最初は郵便や宅急便でだったんだ。でもそんな高いものも気持ちを汲んであげられない手紙も
物が届いた時点で受け取り拒否して・・・そうしたら次は彼女の知り合いっていう人が直接俺のところに届けにきた。」
「なんつーまわりくどいことを。なに?極度の恥ずかしがりやってこと?こんな大胆なことしてんのにな。」
「でもさ、その割に手紙の内容は『わたしを好きになりなさい』的な命令形じゃね?」
「だからなんで平馬が手紙の内容知ってんだ?!」
「葉書が来たことあんじゃん?
あれも俺に手渡されたんだけど、
葉書って封もないし誰に見られてもいいって解釈で。」
「どういう解釈だ!」
「まあまあ。で?結局伝えられずにいるんだ?」
「届けに来た人も伝言は受け取れないって言うし、おそらくあの子だろうってことで声をかけようとしたこともあるんだけど、
その度逃げられてて。」
「・・・ふーん。」
山口くんが頭を書きながら、疲れたようにひとつため息をついた。
まあ正体不明の奴からそんなに贈り物されても、合宿所までついてこられても困るよな普通。
しかも自宅への贈り物に手紙に婚姻届か・・・。そりゃため息もつきたくなる。
「その子、圭介くんの家まで知ってるんだっけ?じゃなきゃ贈り物とかできないもんな。」
「え、まあ、うん。」
「わー、そのうちわたしは圭介の彼女です、とか言っておしかけてこなきゃいーけど。」
「むりやり婚姻届に判押させられたりして。」
「18になる前のでも有効になんのか?」
「さあ、でも彼女の行動力を聞いてる限り、その辺もなんとかしちゃうかもな!」
「お前ら俺をなぐさめたいのか?怖がらせたいのか?遊んでるのか?!」
「「全部。」」
「・・・あー、そうですか・・・。」
山口くんの気を落としたような声のすぐ後に、練習を再開するとの声がかかる。
今まで騒いでいた奴らもすぐに準備を始め、グラウンドへと出て行く。
山口くんも気持ちを切り替えてはいたみたいだけど、なんだか疲れているようにも見える。
うーん、大丈夫だろうか。
「というわけで!」
「せんせー、僕ら何も説明聞いてませーん!」
「えー、俺を見て察しろよ結人!英士ならわかるよなー?」
「・・・山口くんの話?」
「よーし、さすが英士くんだ!結人くんも彼を見習いなさいね!」
「ええ?!何でわかったの英士?!」
「勘。」
「何それきもい!」
「は?」
「嘘です英士くんと
くんは本当に仲がいいんだねー以心伝心ってやつだねー羨ましいわー」
「
と山口くんたちが騒いでたって話は聞いてたし。
だからその時の内容の確率が高いかなって思っただけ。結人の考えが浅いだけでしょ。」
「うわーんかじゅま、考えが浅いって言われたー!」
「・・・。」
「ちょ、黙んなよ否定しろよ!」
今日の練習が終わり、俺たち東京都選抜のメンバーは宿泊しているホテルへと帰ってきた。
の部屋に入ってからの第一声に、俺はやけに嫌な予感を感じていた。
「一馬は聞いてたと思うけど、圭介くんのピンチらしいんだよな!」
「え?一馬聞いてたの?」
「え、いや、まあ、その場にはいたけど・・・」
「お前話に参加してたようなもんじゃん!心の中でたくさんツッコミ入れてたくせにー!」
だから何でお前は心が読めるんだ・・・!!
ていうかツッコミどころ満載の会話をしてるお前らがいけないんだろ?!
ちくしょう、首をつっこむつもりなんてなかったのに。
口に出さなければ、つっこまなければ巻き込まれることはないと思っていた俺があまかったのか?!
それから
は山口くんたちと話していたことを、かいつまんで結人と英士にも説明をした。
ていうか、何をするつもりなんだ・・・!わざわざ俺らに話すってことは何かするつもりなんだよな・・・。
「というわけで、天然爽やか僕らのヒーロー圭介くんが好きな俺としては、協力をしてあげたい気分です!」
「何すんだかわかんないけど、俺も協力するぜ!山口くん好きだし!!」
「そうだね、俺も協力するよ。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・何?」
「・・・英士以外集合!!」
の一声で英士を除き俺たちは肩を組み合って輪になった。というか無理矢理輪の中に入れられた。
同じ部屋で英士以外集合とか言われても、全く意味をなさないと思うんだけどな俺は。
「英士が無条件で協力をOKしたぞ?!一体何の前ぶれですか?!」
「明日は大雨だな!」
「ばかやろう!大雨じゃすまない!嵐だ!嵐がやってく・・・」
「バカな話はやめてくれる?」
「ギャー!!英士以外集合って言ったでしょ?!英士入ってきちゃダメでしょ?!」
「そんなことより、さっきの話の続きをするんじゃないの?」
「「「・・・。」」」
「・・・英士って、もしかして山口くんのこと好き?」
「別に、普通。」
「じゃあ何で珍しくそんなに協力的なの?」
「別に。そんなくだらない女に振り回されて、まともにプレーできなくなったら可哀相でしょ。」
「まあそうなんだけど・・・。」
「ホラ、さっさと話すすめて。」
そういや英士、サッカー雑誌見てるときも何でか山口くんが載ってるページを見てることが多かったような・・・。
今回の東海選抜との合宿も心なしか楽しみにしてるように見えた気も・・・。
ああ、うん、そっか。英士、山口くんのこと好きだったんだな。
「何三人ともにやけた顔してんの?埋められたいの?」
しかし俺らにはきつい言葉!!やめてくれ!お前が言うとシャレに聞こえない!!
「でな、とりあえず姿の見えない彼女をひっぱりだすことから始めたいんだよな。」
「あー、姿見せないんだっけ?」
「でも俺らが引っ張りだしても聞く耳持たなそうだよな。聞いた話じゃ思い込み激しそうだし・・・。」
「そういう勘違い女はタチが悪いからね。
で、どうするの?埋めるの?」
「こわいこわいこわいこわい!!英士くん君ちょっとおかしくなってるからね?!ちょっと黙ってようね?!」
「誰がおかしいって・・・「というわけで!俺は考えたんだけど。」」
英士の物騒な台詞を
がなんとか押さえ、やっと結論だ。
一体何をしようと言うのか。俺は不安に駆られつつドキドキしつつ、
の次の言葉を待った。
「圭介くんに彼女を作ろうと思います!嫉妬に狂ってボロを出すんじゃないかと。そこを俺らがひっ捕らえる!
で、圭介くんに顔をあわせた上でキッパリと振ってもらう!」
「え?でも彼女いないんだろ?」
「だから作ろうと思うって言ってんじゃん!」
「圭介くんの好きな子とくっつけるってこと?」
「俺らの合宿3日だぜ?そんな時間はないし、目的はその子を引っ張りだすことだから、仮でいいんだよ。」
「仮ったってそんな簡単に適当な彼女なんて・・・」
の言葉に疑問を抱いていた結人の言葉が止まった。
俺も意味がいまいちわからずにいたけれど、
の次の発言に言葉を失う。
「見目麗しい方々がここにいらっしゃるじゃないの!」
「まさか・・・」
「そう!お前らが女になって山口くんの彼女のフリをすればいいじゃなーい!!」
「「なにーーー?!」」
「うまく行けば引っ張りだすだけじゃなくて、その子も諦めてくれるかもしれないし、
下手なことして恨まれたとしてもそれは実在しない女ってことになるし。
最終的に俺たちは東京に戻るわけだから足もつきにくい。」
「・・・ちょ、でも、それは・・・」
「というわけで、誰か彼女役やったげて!」
あーもーまた
がとんでもないこと言い出しやがった・・・!
なんで合宿にきてまで女装とかしなきゃなんねえんだよ・・・!いや合宿に来なくたって嫌だけど。
そう、俺は嫌だからな!絶対嫌だからな!
「じゃあ俺、髪とかメイクとかやってやるよ!そういうの得意!」
結人が逃げた・・・!ていうかお前がやらなかったら誰がやるんだよバカ!!
俺も何か役目・・・別の役目・・・逃げれる言い訳・・・!ないじゃねえかよちくしょう!!
「それじゃあ一馬しかいないね。」
「は・・・?な、何でだよ!別に俺じゃなくても英士も
もいるじゃねえか!」
「俺は指示係だからダメ!どんな計画にも監督は必要だろ?
つーか俺じゃあ可愛くなりすぎちゃうから、山口くんに惚れられても困るし!」
ねえよ!何だその言い訳!!
「何言ってるの一馬。何で俺が女装なんてしなきゃならないの。」
「そ、その理屈だと俺だって何で・・・」
「山口くんが困ってるっていうんだから仕方ないでしょ。
俺が女装なんてするわけないし、残りは一馬しかいないよ。」
お、おかしいよな・・・?!その理屈明らかにおかしいよな?!ていうかただの押し付けだよな?!
なんだよ英士!お前山口くん好きなら自分で女装すればいいだろ?!なんで、何で俺が・・・!!
「一馬でいいと思う人ー」
「「「はーい。」」」
お前らこういうときだけ団結しやがって・・・!!いや、いつもタチの悪い団結の仕方してるけど・・・!
「とりあえず練習でもしてみよっか?」
「でも道具とか服とか何もないぜ?」
「西園寺監督に聞いてみたら貸してくれねえかな。
罰ゲームなんですとか言えば面白そうって貸してくれそう。」
「後で写真とか求められそうだけどね。」
「いいんじゃない?一馬だし!」
「一馬だしな!」
「一馬だもんね。」
「よくねええーーー!!!」
俺の悲しい叫びは、友達であるはずの3人の威圧にかき消されてしまった。
結人に「お前肌のノリがいいな」と褒められ、英士に「似合ってるんじゃない?」と言われ、
には
「ちょ、お前可愛すぎるだろ・・・!バカ!誘惑すんな!」と罵られた。
おかしい、何かがおかしい。もーやだ!そろそろ俺、くじけそうです・・・。
「つーわけでさ。一馬に彼女役になってもらおうとしてたんだけど。」
「そ、そうか。」
「源氏名はリンゴちゃんって決めてさ。準備は万端だったんだぜ。」
「あー・・・うん。」
「だけど俺もリンゴちゃんに泣きながら嫌だってせがまれたら、もう仕方ねえなーって気分になっちゃって。」
「・・・そうなのか。」
「というわけで、監督兼女優ということで、俺が2代目りんごちゃんを引き継ぐことになりました!
初代との違いはカタカナとひらがなです!」
「お前らの行動力が本気で恐ろしい・・・!」
わかる、わかるぞ小田・・・!
俺も女装させられて本気で泣きそうになった。こんな姿で外に出るのは勘弁してくれと必死になって頼んだ。
そしたら意外とあっさり
が折れて、仕方ないから自分でやると言い出した。そして俺は難を逃れたのだ。
写真はキッチリ撮られたけど。
「ちなみに今回の女装セットは平馬くんが持ってきてくれました!」
「いやーまさか本気とは思わなかった。」
「そう言いながら、女装セットを持ってくる平馬くんもなかなかだな!」
「本気でも本気じゃなくても面白いと思って。」
「うんうん!わかってるね平馬くん!」
お前ら、面白いを基準にして物事を進めるのやめようぜ?!
俺は面白くない!断じて面白くないからな・・・!
「と、いうわけで決行は今日の練習終了後な!」
「練習の後?俺らは自宅からだけど、そっちはホテルだろ?監督の目とか大丈夫なのか?」
「あー、ホテル抜けだそうとする奴らにまぎれるから。囮になりそうな奴もたくさんいるし!」
「仲間をエサに・・・つくづく恐ろしいな
。」
「機転が利くといってよちーちゃん!」
ああ、抜け出そうとして監督に見つかる奴らの姿が目に浮かぶ。
はずる賢いっつーか、他の遠征でもコンビニに抜け出したりとかしてるもんな。
俺とか結人を犠牲にして。
英士はあまり出かけようとしないけど、
にむりやり連れていかれるとタッグ組んで絶対バレないようにするもんな・・・。
と英士がいれば、確かにホテルから抜け出すことはなんとかなりそうだ。
「そして俺たちの戦いが始まる・・・!」
「戦いって・・・」
「作戦名、『俺、愛する彼女がいるから君がどんなに素敵な人でも気持ちには応えられないんだ。え?彼女と別れるまで待ってる?それもやめてほしい。俺、今の彼女を傷つける気はないし、君みたいな素敵な人を縛っていたくもない。彼女を好きな自分のことも好きだって思うから。だから君には次の恋を見つけてほしい。それが俺の願いなんだ。気持ちは嬉しかった、ありがとう。』で行ってみようと思います!」
作戦名長いうえにしつこいうえにいろいろありえねえ!!
「ふふ、ははは、どんな女が来るか見ものだね。」
こっちは怖いし!!
本当大丈夫かこいつら。
俺、無事に東京に戻ることが出来るんだろうか・・・。
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