かかってきなさい










「「「ー!!」」」





ああ。今日も平和だ。
もう見慣れたこの光景を見て、そう思える俺はまるで悟りでも開けたかのようだ。

あの『まりおカート杯』からの恋愛対象じゃなくなった彼ら。
けれど彼らは諦めなかった。





。手伝おうか?」

「いや、マネージャーの仕事だから。アンタたちは練習に専念しなさいよ。」

「・・・そういうところがのいいところだよね。」

「それはどうも。ところで近寄りすぎなんですけど。」

「言っとくけど・・・もう俺を恋愛対象外だなんて言わせないよ?」

「・・・え?」





郭の言葉をことごとく流していたが、歩みを止め郭を見上げた。





「俺は一馬にまりおカートで勝ったよ。つまりもうよりも強いってことだ。」

「!」

「僕もそうだよ。もう対象外返上だね。」

「「「椎名!郭!!抜け駆けーーー!!」」」

「うるさいな。お前らがバカなだけだろ。」

「抜け駆けとか言わないでほしいな。正当な手段でしょ。」

「「「!!!真田(一馬)ーーー!!俺と勝負しろーーーー!!!」」」

「・・・はあー。」





偶然1位になった真田は皆に負けるだろう。(ていうか、負けさせられるだろう)
結局最初に逆戻り。あのくだらなさ満点のまりおカートは一体何だったのだろう。












選抜の練習が始まり、このときばかりはアイツらも大真面目だ。(に対しても大真面目なんだろうが)
サッカーに関して気を抜くことはないし、とのことも切り分けて考えている。
そういうところはしっかりとしてると思うし、さすが選抜に選ばれただけはあると思う。





その練習途中にスパイクの紐が切れ、俺は監督の車にあるという代えの紐を取りにやってきた。
途中の道で見たのは、数人の女に囲まれるの姿。





「・・・って・・・調子に乗ってんじゃないわよ!!」

「全然乗ってないですけど。」

「何その態度!むかつくーーー!!」

「むかついてんのはこっちよ。私はアンタたちみたいに暇じゃないの。
これから洗濯とドリンクの補給と選手のデータ整理が残ってるのよ。
アンタらそれ全部やってくれるの?遅れたら責任とってくれるの?ていうか、とっととどきやがれ。





に駆け寄ろうとした俺は思わず固まってしまった。
翼に負けず劣らずのマシンガントーク。やはりコイツは普通の女では到底叶わない。





「何よその偉そうな態度!!」





女が片手を振り上げる。
そしてそれがの顔を目掛けて落ちてきた瞬間。





ガシッ





女の手をががっちりと掴む。
そして彼女は不敵に笑った。





「やるならやるわよ?どうぞ三人ででも、かかってきなさい。」





綺麗な顔で笑うと、それは結構な凄みになる。
その光景を見ていた俺は見惚れるとともに、少しの恐怖さえ感じてしまった。
しかしこんなことをしている場合じゃない。いくらと言えど、3対1ではさすがにつらいだろう。





「おいっ
「素敵・・・!!」





・・・は・・・・??





「は?」

「どうしよう・・・すごい胸がドキドキする!!」

「おいおいおい!どうしちゃったのいきなり!!」





まさにの言うとおり、さっきまで彼女を責めていた人間と同一人物とは思えない。
リーダーとなってを痛めつけようとしていた彼女の豹変ぶりに、残りの二人も戸惑いを隠せないようだ(むしろ引いてる)





「お姉さまって呼んでもいいですか?」

「止めてください。何の嫌がらせですか。」

「どうして?こんな強くて綺麗で格好いい人・・・。他にはいません!!」





どうやら彼女はの行動、そして不敵な笑みに陥落してしまったようだ。
ありえない。普通はありえないが・・・それに陥落しているバカ、もとい仲間たちを見てきているだけに
全くの否定もできないのが恐ろしい。ていうかそれは女にも通じるものだったのか。





「君たち!」

「は、はい!!」

「君たちのリーダーはどうやら頭がおかしくなってしまったようだわ!
一刻も早く病院へ連れていきなさい!それが彼女のためよ!!」

「え・・・ええ・・・?!」

「返事!!」

「はいぃ!!」





茫然とリーダーらしき女を見ていた残りの二人が、の勢いに押され思わず返事を返した。
リーダーの腕を掴み、引きずりながらその場を去っていく。
「お姉さまぁーーー!!」と(俺にとっては)理解不能の言葉を残して。

・・・あれかな。の周りにはバカが集まる運命なのか。
うわ。それだと俺もになる。いや、俺は違う。断じて普通だぞ?!





「マサキくーん??」

「おわ!!!」

「見ーてーたーわーねー?」

「わ、悪い!!偶然・・・お前らが・・・そしたら・・・っ・・・」

「何笑いこらえてんのよ!失礼な!!」





顔を赤くして、不満顔で俺の背中を叩く
どうやらコイツは男だけでなく、女も陥落させてしまう奴らしい。



まあ今回のは、結構格好よかったかなとは思うけど。
ほんの、少しだけな。






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