ね、結果は見えていたでしょ










「「「ー!!」」」

「「「お姉さまぁーーーー!!」





ああ、今日も平和・・・ていうか、なんかもう訳がわからなくなってきた。
いつもを追いかけまわす奴らはともかくとして。
どうして選抜のファンではなく、のファンが増えているんだ。(しかも女)

選手そっちのけでマネージャーを見に来るってありえないだろ。





「・・・アンタたち。部外者は立ち入り禁止。帰りなさいよ。」

「ええ!だって私たちお姉さまとお話したいんです!!」

「いいから帰れ。迷惑だから。」





一刀両断するのは、相手が女であってもお構いなしらしい。
選抜の奴らは図太い強いから気にもしないが、さすがに女だと・・・。





「・・・お姉さま・・・!そんなつれないところも素敵です!」





バカな奴ってやっぱり図太いのかな。
女たちのその言葉に、はやはり誰もが見とれるような笑みを浮かべた。





「・・・じゃあお姉さまのお願い。とっとと帰れ。帰って病院に行ってその頭の中を見てもらえ。

「はーい!お姉さまのお願いなら喜んで!!」





はーい、って、本当に病院行くのか?
そんな症状を話して困った医者に、「それは恋の病だね。」とか言われんのかな。
うわ!バカだ!・・・けどバカすぎてむしろその光景を見てみたい気もしてきた。












ーーーー!!」

「うるさい!!一度呼べば聞こえる!!」





の名前を何度も呼んで、ニコニコしながらに話しかけたのは藤代。
は不機嫌そうに藤代を怒鳴るが、当の本人にそれを気にした様子は全くない。





「俺と勝負して?」

「・・・は?」

「まりおカート!1番になったら勝負してくれるって言ったじゃん!!」

「ああ・・・。あれね。」





そう。未だにまりおカート勝負は続いていたのだ。
あの時まりおカート杯に参加していた全員が真田を倒し(真田にとってはいい迷惑だっただろう)
また勝負だとに詰め寄った。そのときのは心底面倒くさそうな顔をしてこう言った。



『じゃあ、アンタらで勝負して勝ち抜いた奴と勝負するよ。』



そしてまりおカート杯(予選)がはじまったようだ。
勝者は藤代。まあ妥当なところだろう。





「でも。もうキスは無しだから。勝ったらデート権獲得ってことでどう?」

「いいわよ何でも?どうせ私が勝つのは目に見えてるし。」





決して口には出さないが(そんなことしたら何をされるかわからない)
まりおカート杯で一番になった藤代を、郭と翼がさりげなく脅したうえでの賞品変更だ。
まああの時は勢いだったけど、さすがにキスなんてな。も女なんだし可哀想だ。





「じゃあ今日も俺のうち来てよ!いやー嬉しいなっ!」

「まさか二人でなんて思ってないでしょ?」

「僕らも行くよ?勝負を見届ける奴がいなくちゃね。」





二人の魔王降臨。
周りの空気がどす黒くなっていくのは俺の気のせいだろうか。(多分気のせいではない)













結局前にまりおカート杯に参加した全員が藤代の家に集まった。
ていうか、何でまた俺までここに来てんだ。





「よし!黒川進行!!」





だから何で俺が進行役?
他の奴がやりゃいいだろ。まあ言葉の通りにしてしまう俺も俺なんだけど。





「えー、まりおカート杯決勝を行います。藤代が勝てばとのデート権。
が勝てば・・・あれ?」





そういやこの勝負でのメリットって何だ?





「バッ・・・バカ黒川!!」

「・・・そういえば私のメリットはアンタたちに付きまとわれなくなることだと思ってたけど・・・。
私に負ける度にこうして勝負を挑まれたら、たまったもんじゃないわね。」





何かを考えだすをよそに、他の奴らに一斉に睨まれる。
え?何?俺のせい?
俺を進行役にしたのってお前らだろ?それもひどくねえか?!





「・・・1ヶ月。」

「え?」

「俺らの代表が負けたら、1ヶ月は勝負を挑まないよ。それでどう?」

「郭!何言ってんだよ!!」

「・・・僕も郭の意見に賛成だね。それでどう?」

「・・・ま、それでもいっか。」





郭と椎名以外の奴ら(真田除く)がぶつぶつと文句を言っている。
二人の意図が俺にはなんとなくわかった。
のことだ。この勝負に負けたら一生付きまとうなとか言いそうだ。(本気で)
そんなことを言われる前の先手必勝だったんだろう。1ヶ月は郭なりのギリギリのライン。
短すぎず、長すぎず。(こいつらにとっては凄まじく長いのかも知れないが)

ついでに『負けたら』ってところがミソだと思う。
つまり藤代が勝てば、すぐにでも次の勝負を挑めるってことだ。





「じゃあ、そういうわけで。どうぞ始めてクダサイ。」





前の対戦時もそうだったが、棒読みになっているのは気にしないで欲しい。
俺だって小さな抵抗くらいしてみたいんだ。





「くっ・・・!!手ごわいな!」

「当たり前!私を誰だと思ってんの?」





・・・。





「よっしゃ!チャンス!!」

「させない!!」





・・・・・。





「くそ!そんなガードするなんて卑怯だぞ!!!」

「勝負に卑怯も何もないわ!勝ったもの勝ちよ!!」





何も知らない奴らが台詞だけ聞いたら、どんな格好いい勝負を思うだろう。
でもこれまりおカートだから。

俺と真田以外、白熱してるけどこれまりおカートだから。





そして最後のコースに入ったとき、前を走っているのはだった。
しかしこれはまりおカート。運転技術だけがものを言うゲームではない。
勝負はアイテムに大きく左右されるゲームなのだ。(俺もよく知らなかったが、翼の練習相手にさせられて知っている)

そして藤代が最後に取ったアイテムはスター。
面倒なので説明は省くが、とにかく無敵になる。(省きすぎか)

つまりは今それを使えば、に勝てることはほとんど確実だということだ。





「いけっ!!藤代!!俺らがに近づけなくなるよりマシだぁ!!」

「よっしゃ!!任せとけ!!」

「やめてっ・・・!!藤代っ・・・お願い・・・!」





見たこともないのしおらしい態度に藤代の指が止まる(操作は続けているが)
ついでに周りの男たちもそんなを赤くなって見ている。(これは真田もだ)





「でもこれ・・・勝負だろ?・・・?」

「・・・だって・・・私・・・。」

「俺だってとのデート権がかかってるんだから・・・!負けるわけにはいかないし・・・!!」

「藤代・・・!」





の悲痛な叫びに、またもや藤代の指が止まる。
見たこともない彼女に皆が固まっている。





「はっ!!ダメだ藤代!惑わされるな!!使え!使うんだ!!」

「椎名!!そうか!そうだよな!!」

「ゴォォーーールーーーーー!!」





藤代がアイテムを使用した瞬間、聞こえたのはいつものの声。
ガッツポーズをとり、唖然とする藤代に笑みを向ける。





「残念だったわね藤代!この勝負私の勝ちよ!」

「ひ、ひっでえーーー!!」

「言ったでしょ?勝負に卑怯も何もない。勝ったもの勝ちだって。」





首をかしげて爽やかに笑うに、男たちは言葉を返すことができない。





うなだれる藤代。
そしてそんな彼をタコ殴りにしている残りの面々。(お前らも固まってたくせに)
そんな藤代を哀れそうに見ている真田。(コイツも同じめにあったからな)

俺も真田と同じ気持ちで奴らを見ていると、ふいにと目があった。
はまたニッコリと笑って。










「ね、結果は見えていたでしょ?」










悪びれもせずに笑う。
それでも綺麗に見えてしまう、俺も相当のバカなのかもな。





この自己中で口が悪くて一刀両断な、それでも何故か憎めない彼女に
俺たちはこれからも振り回されていくのだろうと妙な確信を持ちながら。





俺もに応えるように、小さく笑った。









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