「あ、」

「「ん?」」



思わず発してしまった間の抜けた声。
その視線の先にいたガタイのいい二人の男が同時に俺の方へと振り向く。



「何だ?」



今回行われたU-19の合宿は、周りには虫の音しかしないだろう山の中。
唯一ある麓のコンビニのパン売り場に並んでいたのは黒川と天城。
その二人が掴んでいたものは、



「お前らがメロンパンとバームクーヘン好きって意外。
顔に似合わず・・・っていや、別に悪い意味じゃないんだけど。」



二人がキョトンとした顔で俺を見る。
そしてお互い、自分が手にしていたものを見て。



「俺がっていうより、妹が。」 「俺じゃなくて妹が好きなんだ。」



同時に言葉を発した。
その直後、今度は黒川と天城がお互いの方へと振り向く。



「そういえば、ドイツに妹がいるんだっけ?」 「お前も妹いるのか?」



また同時。
天城がドイツに行き、そこに母親と妹がいることは俺も知ってる。
でも黒川にも妹がいたんだな。そういえば椎名に妹が云々って言われてたのを聞いた気がするようなしないような。それでも兄妹の話なんてほとんどしない奴だったから、やっぱり記憶は曖昧で。



「アイツ、パン屋とかコンビニとか行くとメロンパン探しだすんだよ。
 だから俺も癖になってんだよな。」

「ああ、俺もそうだ。ケーキ屋でもあれば必ずせがむし、コンビニを見つければ
 買いたいって言うから。俺もつい見つけて手にしてた。」



それをきっかけに俺の存在など忘れたように、妹トークが始まった。
実はメロンパンを買う行きつけの店がある、とか。バームクーヘンのうまい店がある、だとか。
気が強いところがあるだとか、意地っ張りだとか、しっかりしているようで、でもどこか抜けてて目が離せない、だとか。淡々と話は続く。



「・・・。」



俺は妹なんていないし、二人ともあまり表情を大きく変える奴らじゃないからイマイチわからないが。
心なしか二人が楽しそうに見える気が、しなくもない。話してる内容はどちらかと言えば気苦労が多そうな内容なのに、だ。



「なんだかんだで結局買ったのかよ、お前ら。」



話に夢中だったからか知らないけれど。
最終的に店から出てきたときには、黒川の袋にメロンパンが、天城の袋にはバームクーヘンが入っていた。



「まあ俺もメロンパン好きだし。」

「俺も別に、嫌いじゃないからな。」



なんだ、結局自分たちも好きなんじゃねえか。
それがさっきから話してた妹の影響かは知らないけれど。



・・・いや、妹の影響なんだろうな。
話だけでこの二人にこんな表情させるなんて、よっぽどでかい存在なんだろう。



「お前らって実はシスコンだったんだな?」



からかうように二人を見れば、またキョトンとした表情。



「別に普通だろ?」

「普通だよな?」



からかうつもりが、あまりにも普通にあっさりと返されてしまった。
なんだよ、シスコンだなんて言った俺の方がおかしいみたいじゃねえか。

結局、そのまま二人は帰り道も何かをずっと話してた。
その"何か"の内容は聞くまでもない。この天然シスコンどもめ。

しょっちゅう話すような間柄ではないけれど、なんだかんだで長く付き合ってきた仲間。
この日俺ははじめて、そんなチームメイトたちの意外すぎる一面を発見したのだった。







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(2008年09月06日(妹の日!)の日記より)

天城と柾輝の隠れシスコン話。

最後の「普通だろ」は柾輝(シスコンの)自覚あり、天城自覚なしです。
天城はどこまでも天然です。柾輝はわかってて飄々としてます。かっけー!
語りの「俺」が誰かはご想像にお任せします。一応誰かっていうのは考えてあったんだけど、
名前も出てこないからまあいっか、ということになりました。当てはまりそうな子を当てはめてくださいませ!


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柾輝の妹設定は、『
天気雨』のはやさん宅のヒロイン設定(飛葉中の日常シリーズ)をお借りしました。
いやもうすっごい可愛いです!いつもときめきをもらってます。ラブ!
そんな素敵なお話を書いてくださっているはやさんより、この続きとなるお話をいただきました。
素敵な天城に悶え転がりました!はやさん、本当にありがとうございます!


悶え転がるお話は
こちらから!

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