「あれ、姫様おかえりなさい。」

「ただいま!お父様は?」

「姫がいなくなったとかで泣きながら部屋にひきこもってますよ。」

「本気でしょうもねえ王だなオイ。」





ついに城までたどり着いた白雪姫一行。
彼女たちを迎え入れたのは、いつも彼女の世話をする使用人でした。





「ところでここ数日、どちらにいらっしゃったんですか?そんなに心配してませんけど。

「してよ心配!いや、またお母様の策略にはまっちゃってさ。」

「またですか?親子のコミュニケーションもたいがいにしてくださいね?」

「あ、それでね、お母様の暴走を止めるためにもお父様をこらしめてやろうと思うんだけど。」

「ああ、それで家来を連れて帰ってきたわけですね。」

「うん。」

「誰が家来だよ!」

「・・・意志を共にしたものくらい言ってほしいんだけど。」

「俺は彼女の未来の旦那だよ。」





心配をかけてしまった使用人に、自分の苦労も話さずに労いの言葉をかけます。
そんな白雪姫に仲間は、この人の力になりたいと改めて強く思うのでした。





「お父様にこの国を任せてはおけないわ!それにお母様のこともちゃんと考えてもらわないと。
貴方たち、準備はいい?」

「上等。王に喧嘩売るなんて経験、なかなか出来ねえからな。」

「仕方ないな。まあうざったい義父は結婚の障害かもしれないしね。」

「もちろん。それで王を守る奴らはどれくらいいるの?そこを通り抜けなきゃならないわけだろ。」

「いませんよ。」

「「「は?」」」





使用人の言葉に3人は耳を疑いました。
仮にも一国の王を守る人間がいない?そんなまさか。そんなことあるはずがありません。





「まあ表面上はいますが・・・皆快く通してくださると思いますよ。」

「ええ!そこまで嫌われたの?お父様!」

「姫がいなくなったのも、王がしつこすぎてのプチ家出だと思われていますからね。
むしろ暴動が起こりそうになったくらいです。」

「・・・。」





『なんか俺、尾花沢元監督に同情してきた・・・。』
『いや、役柄だからな。尾花沢元監督がそんな嫌われてるわけじゃないからな?』





「後ろの方たち、そんな武器なんて物騒なものはしまっていいと思いますよ。
姫がいれば全て解決します。」

「「「・・・。」」」

「え?私だけでいいの?」

「王は今心身ともに弱っています。あと一押しです。」

「何をすればいいのかな?」

「簡単です。」





使用人と白雪姫はひそひそと二人で作戦を練りだします。
王子と小人の立場は一体どうなってしまうんでしょうか。





『設楽、完璧アドリブになってきたな。』
『まあもういろいろ今更だし。ストーリーはあいつらに進ませて俺らはそのとおりにナレーションする方が疲れないかも。』








「お父様!!」

「おお!ーーー!!帰ってきたか!心配したぞおおお!!」

「お父様、私この数日でいろんなことがありました。」

「そうかそうか、ゆっくり話そう。」

「とりあえずこの紅茶をどうぞ。」

「お前が淹れてくれたのか!やはりお前は優しいなあ!」





王の部屋にやってきた白雪姫は、運んできた紅茶を王へ差し出し
王は喜んでそれを飲み干しました。
それを確認すると白雪姫はさらに言葉を続けます。





「お父様、これ以上国民の税をあげるのはおやめください。いえ、もっと下げるべきです。」

「しかしそれではこの国も城にも金が無くなってしまうだろう。」

「少しくらい我慢すれば良いのです。それに節約できるところなどいくらだってあります。」

「ワシはお前に何不自由ない生活をしてもらいたいのだよ。わかってくれるかね?」

「私・・・と言いながら自分もでしょう?」

「ふはは、王族に生まれたものならば当然のことだろう。
働くべき者が働いていればよいのだ。ワシらがそれを気にする必要などない。」

「・・・そうですか。」





心優しい白雪姫は誠意を持って話せば、父親もわかってくれると信じていました。
けれど王からは期待どおりの言葉は返ってはきませんでした。





「それではお母様のことはどうお考えで?」

「どういうことだ?」

「お父様はいつも私のことばかり。お母様はいつも寂しがっているのを知ってらっしゃるでしょう?」

「あの年で寂しがるも何もないだろう!美しい者が愛されるのは当然だ。ハーッハッハ!」

「ふふふ、お父様ったら。」





白雪姫は悲しみに顔を歪めながら・・・いや、悲しすぎて思わず笑いを零しながら
手の中に潜めていた小さなボタンを押しました。





「ハーッハッハ・・・ぐぁっ?!」

「ふふふ、お父様。貴方はやはり支配者には向いていません。」

「な・・・何を・・・」

「お父様の紅茶にこれを入れました。」

「?!」





「城下町の発明家、不破印の何かよくわからない電波発生器『コラシメ〜ル』!!」





ぶはっ・・・!ゲホ、ゴホ!



『ぶは!冷静な設楽が吹き出した・・・!』
『誰がつけたんだよあの名前・・・』





「お父様が他人を信用していないのはわかっていました。こうした飲み物ひとつでも誰かに毒見をさせてから飲むことも。
私からだとしても同じことだった。けれど私を失ったばかりだった今なら疑いもせずに飲んでくれると思っていました。」

「そ、そんな・・・!・・・!」

「貴方のおなかの中には枷がはめられました。それはこのコラシメ〜ル溶解剤がないと無くなりません!
お父様が間違ったことをするたびその『コラシメ〜ル』に懲らしめられます!つまり今のような腹痛が起こります!」





白雪姫としても断腸の思いだったことでしょう。
けれど彼女は国民と母親への思い、そして父親にも改心してほしいという思いからコラ・・・コラシメ〜ルを使ったのです。





「ぬ、ぬおおお・・・!」

「ドアはあちらよ、お父様。」





あまりの腹痛のひどさに、王はドアを乱暴に開けどこかへ走り去ってしまいました。
ドアの外に控えていた使用人と白雪姫は目をあわせ、高らかに手をかかげお互いを称えました。



こうして白雪姫にも、この国にも、平和の兆しが見えてきたのです。





「・・・俺らは何しに来たんだよ!」

「王子への扱いじゃないよね、なめてるの?」

「後は俺と白雪姫の結婚話でエンディング?ああ、それでいいんじゃない?」

「お前はポジティブすぎだ!」








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