「姫は王子のくちづけで目が覚めるって相場は決まってるんだから。」
ヒュッ・・・!
東の王子が白雪姫にくちづけようとしたそのとき、彼の横を何か鋭いものが通り過ぎていきました。
『ひゃー弓だ・・・じゃなくて、めっちゃ危なくねえ?!』
『まあ作り物だしね。』
『そういう問題?!』
『ていうか郭、全然矢に反応してないんだけど。』
「・・・。」
「東の王子がこんなところで何してるの?」
「・・・。」
「人の話無視するな・・・って止まれ!!」
「おい!郭・・・王子!すべて無視して暴走すんなてめえ!!」
「王子は意外と熱いキャラだったんですねー。」
『熱いとか関係ねえよこれ。』
『・・・英士・・・!』
「そいつを止めろ小人!」
「あ?命令すんな!」
「それどころじゃないだろ?お前はバカか!」
「・・・って、やべ、もう遅え!」
ベシッ
「「「・・・。」」」
『・・・。』
『・・・。』
『うわあああ!白雪姫起きちゃったーーー!!』
『よっぽど危機感持ったんだな、当然だけど。』
「・・・おはよう、白雪姫。」
「おはよう。ふふ、貴方は誰かしら?」
「貴方を助けに来た東の王子だよ。」
「ふふ、あはは、助けに来てまさか無理矢理くちびる奪おうなんてしてないわよね?」
『怒ってるぞこれ!』
『これ以上話がややこしくならなきゃいいけど。』
え、えーと・・・あー・・・
『黒川頑張れ!ちょう頑張れ!』
『軌道修正はお前の手にかかっている。』
王妃と小人、そして王子二人の願いが神に届いたようです。
なんと白雪姫が目を覚ます奇跡が起こりました。
『頑張った!』
『黒川に拍手。』
「奪おうとしたけど。まあでも後々嫁になる予定だし、いいんじゃない?」
「よくない。」
「もうお前・・・!本気で勘弁しろよアホ!」
「絶対人選間違ってるよ。王子はやっぱり僕一人の方がよかったと思うけど。」
目を覚ました白雪姫に、小人がこの状況を説明しました。
この国を助けに来た東の国の王子が彼女を助けようとしたこと。
そして突然現れた男性はなんと東の国と対の位置にある西の国の王子でした。
この国の書状はふたつの国に送られていたようです。
東の国だけじゃなく、西の国の王子もこの国と白雪姫を助けにきたのでした。
お互い話をして、わかりあった彼らは考えます。
王妃が悲しみ、白雪姫を憎んだ理由。他の国に助けを求めるほどに苦しんでいる国民。
その諸悪の根源は一体なんなのか。
「白雪姫以外の全員。あんな風に騒いで物語をぶち壊してどうするわけ?」
「ふざけんなこの変態。お前を諸悪の根源にすんぞ。」
「僕も三上と同意見だね。もうそれでいいんじゃない?」
「ああ、その方が意外性があって面白いかも。乙女のくちびるを強引に奪おうとするなんて!」
「・・・乙女?」
「このやろう三上、哀れそうな目で見ないでくれる?!」
・・・わかりあい、仲良くなった彼らは冗談も言い合いながら、けれど意志はひとつです。
さあ、もう冗談は終わりにしろ・・・しましょう。
『黒川が力尽きてきた・・・!』
『耐えろ。あと少しだ。』
「・・・それじゃあ私、城に帰る。」
「俺も行くよ、嫁にもらうからには一応挨拶に行かなきゃね。」
「当然僕も行く。この国の実情と王の器を確かめに行きたいね。」
「・・・仕方ねえな。俺も行ってやるよ。」
「「「「いざ、王を倒しに・・・!」」」」
『まとまってきた・・・って、倒しに行くの?!』
『説得じゃないとこがあいつららしいよな。』
「私は情にほだされるといけないのでここで待ってますねー。吉報を期待してます。」
こうして白雪姫たちは王のいる城へと向かっていくのでした。
そこでは一体何が彼女たちを待ち受けているのでしょう。
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