「悲しき運命の姫、せめて来世で貴方に祝福がありますように。」
ヒュッ・・・!
西の王子が白雪姫にくちづけようとしたそのとき、彼の横を何か光るものが通り過ぎていきました。
「何だ・・・?!」
「何してるの、西の姫?」
「お前は・・・東の王子!ていうか誰が姫?僕のどこをどう見たら姫に見えるわけ?
目おかしいんじゃないの、いや、そうか頭おかしいんだったねお前は。」
「ああ、ごめん。姫にしか見えなかったものだから。
でもその理屈だとお前の国の国民もみんな頭がおかしいことになるよね。」
そこに現れたのは西の王子と同じように豪華な服を着た一人の男でした。
どうやら顔見知りらしく、そして彼は西の王子とは対の位置にある東の王子のようです。
『・・・なあ、光るものをスルーしてるけど・・・床に落ちてるあれって・・・』
『・・・ナイフじゃね?』
『ギャー!なんつう物騒なもん投げつけてんのよ英士は!』
『落ち着け若菜。あれつくりものだから。』
『そういう問題?!』
「白雪姫は俺の嫁にしに来たんだけど。手出さないでくれる?」
「もしかしてお前の国にも書状が・・・いや、まあそれはいい。
お前、この状況わかってる?手出すも出さないもそれ以前の問題。」
「眠ってるんでしょ。俺が起こすから椎名はどいてて。」
「後から来て何言ってるわけ?勝手に進めないでくれる?」
なんと書状はふたつの国に送られていたようです。
西の国だけじゃなく、東の国の王子もこの国と白雪姫を助けにきたのでした。
けれど白雪姫は眠ったまま、二人は心配そうに目を閉じたままの彼女を見つめます。
「先も後も関係ないでしょ。用は白雪姫がどっちに起こしてもらいたいかなんだから。」
「関係あるね。僕は先に彼女にたどり着いてお前は遅れた。その時点で減点だよ。
それに彼女にどっちを選んでもらうにしても、僕は負けない自信があるしね。」
「相変わらず口だけはよくまわるね。じゃあ白雪姫に決めてもらおうか?」
「ご自由に?」
「お前らよく見て!白雪姫眠ったままだからな?!その辺わかってるか?!」
「白雪姫、起きなよ。俺と椎名、どっちがいいわけ?」
「この際だからどっちが真の王子か決めとこうか?」
『もう軌道修正無理じゃね?』
『英士に続き椎名まで・・・!恋とはこんなにも人を狂わせるものなのね!』
『お前まで壊れるな、手におえなくなる。』
「「襲うよ?」」
「うああああ!よっく寝たーーー!!」
・・・・・・・。
『・・・。』
『・・・。』
『うわあああ!白雪姫起きちゃったーーー!!』
『条件反射だなこれ。』
「・・・?何で起きてんだよお前はああ!」
「だって貞操の危機が・・・!オーラが・・・!」
「ああ、起きたね。それで俺と椎名とどっちがいいの?」
「わかりきってるけど、一応聞いてやるよ。わかりきってるけどね。」
「お前らちょっと黙れ!」
え、えーと・・・あー・・・
『黒川ちょう困ってる・・・!がんばれ黒川!』
王妃と小人、そして王子二人の願いが神に届いたようです。
なんと白雪姫が目を覚ます奇跡が起こりました。
『おおおお!黒川すげええ!!感動した!!』
『若菜には絶対出来ない芸当だな。』
「あああ白雪姫・・・!よかったですね〜!」
「どさくさにまぎれて抱きつくなスガ・・・王妃!!」
「大丈夫、白雪姫?俺が目覚めのくちづけで落ち着かせてあげ「もう目覚めてるから結構です。」」
白雪姫が目を覚ましたことで、皆お祭り騒ぎです。
楽しそうに冗談を言い合ったり、笑いあっています。
「それで、そもそも誰が悪いんだっけ?」
「ああ、さっき白雪姫に抱きついてたよね王妃。」
「いや、そこじゃねえよ!そこから離れろ。王妃とはもう和解してんだよ。」
「そうです。和解した娘と抱き合うのは当然のことですよー。」
「とりあえず王妃がむかつくから、征伐していい?」
「僕も加勢しようかな。」
「やめろ。」
そしてわかりあった彼らは考えます。
王妃が悲しみ、白雪姫を憎んだ理由。他の国に助けを求めるほどに苦しんでいる国民。
その諸悪の根源は一体なんなのか。
「私、お城に戻る。」
「俺も行くよ、嫁にもらうからには一応挨拶に行かなきゃね。」
「当然僕も行く。この国の実情と王の器を確かめに行きたいね。」
「・・・仕方ねえな。俺も行ってやるよ。」
「「「「いざ、王を倒しに・・・!」」」」
『まとまってきた・・・って、倒しに行くの?!』
『説得じゃないとこがあいつららしいよな。』
「私は情にほだされるといけないのでここで待ってますねー。吉報を期待してます。」
こうして白雪姫たちは王のいる城へと向かっていくのでした。
そこでは一体何が彼女たちを待ち受けているのでしょう。
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