右の道へ入っていくと、そこから先は1本道でした。
必死でイヤリングを探す白雪姫は後のことなど考えず、どんどん森の奥へと進んでいきました。

そしてしばらくすると、小さな小屋を見つけます。
小さな子供ならばともかく、大人が暮らすには少しばかり小さく見える家です。
ずっと歩いてきて疲れ果ててしまった白雪姫は、少しそこで休憩をさせてもらおうと考えました。





「・・・こんにちは。誰かいますか?」

「うん。」

「私、ずっと森を歩いていて・・・少しだけ休憩させてもらえませんか?」

「うん、別にいいよ。俺も休憩させてもらってるだけだし。」

「ありがとうございます・・・って、貴方、この家の人じゃないの?」

「うん。」





ドアを開くとそこにはまるで自分の家のように、ベッドでくつろぐ男の姿がありました。
確かにこの小さな家に住むには体が大きすぎます。





「休憩すれば。なんなら一緒に寝る?」

「寝ない。つーか何でそういう話になるの。」

「ほら俺ベッド占領してるから、一緒に入らないとダメだろ。」

「・・・なんで何個もベッドをくっつけて・・・って、ベッドの数はあるのに、ひとつひとつが小さいんだ」

「多分ここ小人の家だから。」

「小人?」





あまり外へ出たことのない白雪姫は、小人を見たことがありませんでした。
元々森の奥深くにいて人前には姿を現さないと言われています。





「貴方は誰?」

「俺?狩人。白雪姫を暗殺してこいって言われてたんだけど、いつまで経っても現れないからさ。今休憩中。」

「・・・。」

「・・・あれ?」

「・・・。」

「あー、アンタ白雪姫。」





『ゆるい!どこまでゆるいんだ横山!』

『これ、多分演技じゃねーよな・・・。』





「・・・っ・・・」

「別に逃げなくても殺さないって。」

「な、なんで・・・?」

「めんどくさい。」

「そんな理由?!」

「その辺で猪でもしとめてグロイ感じのもの持っていって暗殺成功したーって言えばいいだろ。」

「お母様がその嘘に気づかないとでも思ってるの?!」

「・・・じゃあやっとく?」

「心からご遠慮します。」





母親に命を狙われるという白雪姫を不憫に思った狩人は、彼女に逃げるよう促します。
このことがばれてしまえば自分も危ないというのになんたる美談でしょうか。びっくりです。

『めんどくささから始まってる美談だけどな。』
『むりやりすぎんだろ。』





「まあそんなわけだから、しばらくここにいれば?」

「でも、ここって小人さんの家なんでしょ?」

「いいんじゃね?俺なんか数時間前から自分の家と思ってくつろいでるけど。」



『お前はくつろぎすぎだ!』
『数時間前って、最初から暗殺とかする気なかったろコイツ。』



「さて、そろそろ白雪姫でも捕まえてくるか。」

「へ?」

「あー、猪な猪。そんな変わんないだろ。」

「変わるよ!そこは変わるって言って!」





自分のことも省みず白雪姫を助けることを選択した狩人は、小人の家をあとにしました。
白雪姫はそんな狩人に感謝しつつ、彼の後姿を見送ると、疲れ果てて眠りについてしまいました。





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