むかしむかしあるところに、小さな王国がありました。
小さくとも資源や食糧にも恵まれ、自然に囲まれた穏やかな国でした。

そしてその国には一人の姫がおりました。
真っ白い肌にリンゴのような赤い唇。愛らしいその姿と使用人にも気さくに話しかける明るさと優しさ。
多くの人に慕われていた姫は、その美しさから『白雪姫』と呼ばれておりました。





「姫ー!白雪姫!勝手に外に出ないでください!」

「えー、だって退屈なんだもの。」

「退屈じゃありません!姫にはしていただくべきことがたくさんあるんですよ!」

「だって、部屋にいたらお父様がしょっちゅう覗きにくるの。
親バカ通り越してストーカーだよあれ。」

「ああ、王様ですか。あれはうざいですね。」

「ねー、そうだよねー!」





『・・・気さくっていうか、その辺の友達との会話じゃね?』
『これで愛らしい姫はねーよ。』

・・・ゴホン、その気さくな姫は使用人と庭で花をつみながらも、一人悩みを抱えておりました。
それは自分を溺愛する王と、それを疎ましく思う義理の母親のことです。





「気持ちはわかりますが、一人で外に出ないでください。この間は熊に襲われたでしょう?」

「あれはやりすぎだよねお母様。もう少しさりげなさを覚えてほしいよね。」





『熊って・・・!』
『どこから調達してきたんだよ。』

『気にするとこそこ?!』





ー!!何をしているんだ?花摘みか?よし、ワシも一緒に摘んでやろう!」

「あ、噂をすれば来た。うざい人。」

「うざ・・・じゃなかった王様でしょう。ひどい言葉を使わない。」

「あれ、うざいってアンタが言ったんじゃないの?!ひどくない?!」

「何を話しているんだワシの可愛い!ほらどのお花が欲し「あ、結構です。もう終わったんで。」





美しく可憐さもあわせ持った白雪姫は小さい頃から王である父親の愛情を一身にうけています。
けれど一点に集中された愛情ゆえ、他の者へそれが向けられることはありません。
義理の母親である現王妃にさえも。白雪姫はそれが原因で王妃に疎まれていることも知っていました。
けれど彼女は優しすぎる性格ゆえに、王である父親の愛情を邪険にはできません。

『めっちゃ邪険にしてるよこれ!』
『ナレーションとあってなさすぎ。これ本当に台本に書いてあんのかよ、のアドリブじゃね?』
『それを言うなら笠井も悪ノリしてるよな絶対。』





・・・いつの間にそんなに照れ屋になったんだ。もしくはそうか、思春期にある反抗期ってやつだな!
まあは何をしていても可愛いがな!ハーッハッハッ!!」





『なんか王の演技うまくね?年頃の娘に嫌われた父親のようなリアルさが!』
『いや、リアルさでいうならポジティブすぎだろ。』
『けどまさか、尾花沢元監督がこの役引き受けるとは思わなかった。』

『元監督も寂しかったんじゃね?』





悩みはあれど、皆に愛され、笑い、幸せな毎日を送っておりました。
けれどその幸せも長くは続きませんでした。



今まで静かに白雪姫を見守っていた王妃が、ついに動き出したのです。





『いや、熊で襲っておいて静かはねーよ。』
『ここまでナレーションとかみ合わない話もめずらしいよな。逆に新鮮。』
『・・・お前ら自分がナレーションしてるときにはつっこみ入れるの止めとけよ?ほら、交代。』










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