シンデレラとサンドリヨンを乗せたかぼちゃの馬車は、王子のいるお城へと向かいます。
道中、少女二人はこれから見る新しい世界に胸を躍らせていました。




「・・・負けたっ・・・」

「何が?」

「さっきはねずみさんに夢中でちゃんと見てなかったけど・・・なんでそんなに可愛いのよ!自信なくすわー」

「・・・それは何?誰のことを言ってるの?まさか僕じゃないよね?僕なわけないよね?当然だよね?」

「・・・ちょ、冗談っ・・・」

「何言ってるのサンドリヨン。すっごく可愛いよ〜?」

「だまれ魔法使い!!」





綺麗なドレスに身を包まれ、穏やかで楽しそうな空気が流れます。
しかし、あのごつい奴らとは大違いです。いやもう本当びっくりした。





「・・・ナレーター・・・あとで覚えてろよ・・・?」

「えっと、でもさでもさ!魔法使いさん、サンドリヨン贔屓してない?」

「なんで?」

「だってサンドリヨンのドレスは何かいろんな宝石がついてるよね?アクセサリーも輝きが違うっていうか・・・」

「そんなこと気にしてるわけ?こんなの何着たって一緒だろ。」

「あとこれ。靴もさ、見た目は似てるんだけど、何かオーラが違わない?」

「ああー、そうかもね。使ってる材料が違うから。」

「材料?」





シンデレラの靴は、透き通ったガラスの靴でした。
月の光に照らされとても綺麗ですが・・・サンドリヨンの靴はなんでしょうか?





「さてなんでしょう!チッチッチッチッ・・・」

「え?えーとえーと、水晶??」

「もーなんでもいいよ・・・」

「チッチッチッチッ・・・ブー!不正解〜!」

「えー、それじゃあ何ー?」

「正解はダイヤでしたー!」

「ふーん、ダイヤかあ・・・ダイヤ・・・ダイヤァ?!





『そんな予算があったのか?』

『そこ?!いや、さすがに本物じゃないだろうけど・・・ガラスとダイヤ。格差にもほどがあるな・・・!』





「なんでそんなに差があるの?!どうせあれでしょ?このドレスもガラスと宝石くらい違うんでしょ?!」

「ほら、あまり高価なものをつけると、その価値に負けちゃうことってあるでしょ?」

「あー確かに・・・って、今すごく失礼なこと言わなかった?!

「・・・いいよ、僕のと交換しようよシンデレラ。」

「いや!私には美しい宝石に囲まれ、さらに際立っている美しさのつば・・・サンドリヨンから
それらを奪うことなんてできない・・・!ていうか私はきっと負ける・・・!」

「大丈夫だよシンデレラ!シンデレラも十分可愛い!ソボクさがあって僕は好きだよ!」

「ありがとう魔法使いさんっ・・・!」

「お前らいい加減にしなよ・・・?」





そして馬が足を止め、気づけばもうお城の前でした。
お城のあまりの大きさ、壮大さに、ただただ唖然とするばかりです。





「それじゃあシンデレラ、サンドリヨン。楽しんでこいよな。」

「ねずみさん・・・名残惜しい・・・」

「そ、そうだぞ。お、お、お、お前たちの幸せを、い、祈って、いら、いるぞ!」

「「「「・・・。」」」」





『空気になってた上原がようやく台詞を!!』

『しかし何を言っているかわからん。』

『それは言わないであげて!彼、一生懸命やってるからー!』





「それじゃあ行ってきます!おいしいチーズでもかっぱらってくるね!」

「ははっ、じゃあ頼んどく。」

「任せて!ありがとうねずみさん!」





・・・ねずみとシンデレラの物語でも始まりそうな雰囲気ですが、
それはそれで面白いかもしれません。



『横山ー!それはダメ!ねずみさんかっこいいけど、さすがにそれはダメ!』

『それだともはやシンデレラの面影も何もなくなるな。』





「行くよシンデレラ!何が悲しくて脇役のねずみとハッピーエンドになるんだよ!」

「私、それくらいでいいです。最初から脇役のはずだったし。サンドリヨンには負けてるし。」

「ねーねー、僕もシンデレラ争奪戦に参加したいなー。」

「これ以上いらん!魔法使いもここで待機!」

「えー!!」

「誰かこいつの保護者連れてきてよもう!」





元の美しさにさらに磨きがかかった二人は、そこらの令嬢や姫よりもよっぽど美しくなり、
城の門番たちもその笑顔に、招待状を持たない者とは気づきません。・・・大丈夫かこの城のセキュリティ。




「あっ!僕の魔法、深夜の12時までしか効かないから〜!魔法が解けたら裸になるよ!!」

「お前っ、今すごいこと言い逃しそうになってただろ・・・?!」

「馬車には服を用意してるから大丈夫ー!」

「そういう問題じゃないだろ!」





そして二人は遂にお城の舞踏会へと足を踏み入れるのでした。






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