『なあ、何でねずみが相談役?怒りのアドリブ?』

『いや、別に怒ってないけど。俺なりの妥協案。』

『妥協?』

『椎名があまりにもドレスを嫌がるから、じゃあいっそ意地でも着せてやろうって思ってて。
だけど途中で面倒になって、でも一度決めたしなーどうしようかなーそうだ、それなら他の奴に投げればいいか、と。』

『それでねずみ?!お前、難題を投げられたねずみの気持ちを考えたことがあるのか?!』

『まあ台詞がほとんどなかったのが、増えたんだしいいことじゃん。』

『お前はそれ喜ぶの?』

『喜ばない。』

『っ・・・なんて気の毒なねずみさんたち・・・!』





「ねずみさん。ねずみさーん!」

「・・・いくら出番がもうすぐだったとはいえ・・・準備できてるの?」

「シンデレラ。ここ。」





シンデレラとサンドリヨンが台所でねずみを呼ぶと、2匹のねずみが現れた。
二人は博識なねずみに事の経緯と、自分たちの願いを説明する。





『・・・台本ないといつもの口調に戻るのな、不破。』

『まあ仕方ないな。』





「・・・と、いうわけで、舞踏会に行きたいんだけど、どうすればいいと思う?」

「・・・自由にできる金はない。ドレスの余りも隠されてるんだよな。」

「うん。」

「僕は行けないなら行けないでいいんだけど。」

「それじゃあシンデレラ、自分の持ち物で何か高価なものはない?
それを売ってドレス代にするっていうのはどうだ?」

「でも私・・・そんな高価なものは・・・」

「何かあるかもしれない。部屋を見に行こう。」





『ちょ、ねずみかっこよくない?!』

『伊賀の冷静さに拍手を送ろう。さすが俺の見込んだ男。』

『お前適当に投げただけだろ?!』





ねずみに促され、早速何か金になるものはないかと、自分たちの部屋を探し出した。
そして棚を開けると、金色のものが光るのを見つけた。





「シンデレラ、それは何だ?」

「あ、これはこの間商人さんにもらったランプだよ。大切にしてると願いが叶うんだって。」

「やっぱりこれを売るべき?」

「いや・・・そうだ、それに月の光を当ててみろよ。」

「月の光?」

「何かが起こるかもしれない。」





『伊賀すげえ!魔法使いを呼ぶ流れに引き戻した!』

『さすが俺の見込んだ・・・』

『それはもういい!』



シンデレラはねずみの助言どおりに、金色のランプに窓から指す月の光を当てる。





「・・・。」

「・・・。」

「「・・・。」」

「・・・何も起こらないね。」

「・・・ああ、そうだな。」





『伊賀のナイスフォローが!!魔法使い誰!空気読みなさいよ!』

『若菜に言われたくないって。』

『お前にはもっと言われたくねえよ!』





結局それから何も起こることはなく、少女二人の部屋にも高価なものは何もなかった。





「仕方ない。別の手を考えよう。」 

「そうだね・・・って、何?!」

「部屋が・・・揺れてる?!」

「・・・う、うわっ・・・」





『なになに?!どうしたの?!』

『とりあえず、やっと上原が喋ったな。』

今そこ重要?!いや、確かに空気になってたけどもさ!』





落胆した様子で部屋から出ようとしたとき、突然彼らの部屋が揺れだす。
立っていられなくなり、全員がひざをつくと、そこに現れたのは・・・





「やっほー!魔法使いだよー!!」









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