『なあ、シンデレラはわかるけど、サンドリヨンって何?』
『シンデレラが英語、サンドリヨンがフランス語。意味は同じ「灰かぶり」だ。
フランスの文学者であるペローが書いたものをサンドリヨン、グリム兄弟によるグリム童話がシンデレラと考えると良いだろう。
名称としては映画にもなったシンデレラの方が有名だが、ガラスの靴やかぼちゃの馬車が出てくるのはサンドリヨンだ。
つまり現在演じているものは実際の原作と流れは異なっているわけだが、多くの者が知る題名として「シンデレラ」としたのだろう。』
『不破先生すげえええ!!』
シンデレラとサンドリヨンは、外での仕事を終えて、家の中へと戻ってきました。
たくさんの仕事を終えたばかりだというのに、二人ともとても明るく可愛らしく笑いあっています。
「いい?シンデレラ。僕らがいつまでも言うことを聞いてるなんて、大間違いだってわからせてやろう。」
「そうだね!配役的にもやられキャラの人とか入ってるし、いけそうだよね!」
『配役とか裏事情を堂々と言うな。』
『やられキャラ?誰のことだ?』
『継母と姉二人。一番不憫なのはだーれだ。』
『鳴海か。』
『正解!』
「この扉を開けたらあいつらがいる。なめられないように毅然とした態度をとりなよ?」
「OK!まかせて!」
二人が立つ扉の先からは、甲高・・・野太い笑い声が聞こえてきています。
そう、二人に仕事を押し付け自分たちは何もしない、継母と姉たちです。
二人は顔を見合わせると、扉に手をかけました。
キィィ・・・
「ほーっほっほ!舞踏会の招待状が来ましたわお母様!」
「お・・・王族になれるチャンスですわねっ。」
「そうですね〜。舞踏会に参加して玉の輿に乗りましょう〜。」
「・・・。」
「・・・。」
『・・・。』
『・・・。』
これはひどい。
『横山ー!声、声出てる!本音出てるぞ!』
『・・・。』
『不破!不破もしっかりしろ!!』
『理解の範疇を超えていた。世の中まだまだ研究の余地があるな。』
『そこはいい!研究しなくていいから!!』
「あら、シンデレラとサンドリヨンじゃない!なにぐずぐずしてるの?!」
「そ・・・そうよそうよ。そんなところでボーっとしている暇があるのなら、暖炉の掃除でもしていなさい。」
「貴方たちには灰かぶりがお似合いですよ〜」
そんな野太・・・違った、いろんな意味でひどい姉たちは、シンデレラとサンドリヨンを労うこともなく、
次の仕事を言いつけます。
「・・・わ・・・わかっ・・・わかりましたわ、お義母さま、お義姉さま・・・!」
「ちょ、シンデレラ?!」
「サンドリヨン・・・無理よ、私には反抗するなんて無理っ・・・!
お義母さまやお義姉さまの、こんな、こんな痛々しい姿見たら・・・!」
「そりゃ確かにひっどいけど、同情で言うことを聞くなんて間違ってるだろ?」
『俺も泣けてきたぜ・・・!なんでわざわざ母と姉を大型の奴らで揃えたの?誰が得すんの?』
『一部のマニアックな方々に送る。』
『不破あ?!』
『と、書いてある。』
『誰が書いたの?!』
しかし、心優しい少女二人。
反論などするはずもなく、その仕事を引き受けます。
「そうそう、もうすぐ舞踏会があるの。ドレス直しも商人に頼んでおいてちょうだい!」
「く・・・靴とアクセサリーもね。」
「ふふふー、楽しみですね。いろんな意味で。」
『なあ、何で鳴海はあんなに姉の演技がうまいの?』
『俺は内藤がなぜいつもつまづいてから喋るのかが気になるな。』
『須釜に至ってはなんであんなに違和感がないの?』
「サンドリヨン。私・・・これ以上この人たちを傷つけられないよ・・・!」
「・・・あーもう。わかったよ。言うとおりにすればいいんだろ?」
「わかってくれた?」
「あまり好き勝手してたら話も進まないしね。」
「今更それ言う?!」
カラン、カラン・・・
義母、義姉たちの横柄な態度に腹を立てることもなく、それらを引き受けたそのとき、
家の門を叩く合図が聞こえました。二人は玄関まで客人を迎えに行きます。
「まいど〜!ドレスの仕立てからご注文まで、何でも承りまっせ〜!」
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