むかしむかしあるところに、とても美しく優しい少女がおりました。
彼女は聡明な父、明るく穏やかな母親に囲まれ、幸せに暮らしておりました。
しかし、母親の死と同時にその幸せは徐々に失われていってしまったのです。
母親の死から数年後、父親が連れてきた再婚相手、そしてその連れ子が家へやってきたとき、
苦難はさらに加速していきます。

少女を邪魔者扱いし、疎んじる継母とその子供たち。
心優しく抵抗さえしない彼女を召使いのように扱い、次々に仕事を押し付け、毎日のように蔑みます。
そして、いつしか少女はこう呼ばれるようになりました。



灰かぶりの娘、シンデレラと。











「ふう、今日の分はこれで終わりね。」

「よくもまあこんな大量の洗濯物を出せるもんだね。節度ってものを知らないバカたちだよね。」




晴れ渡った日差しの中、ボロボロの服を着た一人の少女が・・・
・・・あれ?少女二人いるんだけど・・・





『あ、そういえば配役がちょっと変わったって言われた気がする。』

『む、そうなのか。』

『台本ももらった気がする。』

『ふむ。』

『もしこれ渡さなかったら面白そうだなって思ってたら、すっかり忘れてた気がする。』





横山あああ!!よこせ!それよこせ!



『マイク、マイク。入ってますよー。』



知るかー!!





ゴホン、晴れ渡った日差しの中、ボロボロの服を着た二人の少女が
たくさんの洗濯物を干し終わり、満足そうに笑顔を浮かべます。
優しい心を持った彼女たちは、次は庭にある花壇へ水をやります。
色とりどりの花々に声をかけながら水をやるその姿は、ボロボロの服を着ていてもとても可憐で美しい姿でした。





「シンデレラ、花に水はあとでいいからさ。あのアホどもをどうするか考えようよ。」

「ちょっと待って、シンデレラはそっちでしょ?私はサンドリヨンって話で・・・」

「すでに話はついてるはずだよシンデレラ。サンドリヨンは僕。」

「話はついてるって、元々シンデレラはそっ「いい加減にしろよ?シンデレラ?」」

「くっ・・・!」





・・・・・・。





『ところでなんでがシンデレラになってんの?椎名が選ばれてなかったっけ?』

『ああ、俺も衣装係から突然がいなくなったので、疑問に思い本人に聞いてみた。
「権力と圧力と自分の弱さに負けた」そうだ。俺には意味がよくわからなかったが・・・』

『あー、なるほど。』

『横山、お前にはわかるのか?』

『まー大体。後で教えてやるよ。』

『頼む。』





・・・父親の再婚によって、新しい家族が出来た双子の姉妹は
毎日のように継母と姉たちにいじめられておりました。
けれど姉妹はそれを憂うことなく、持ち前の明るさを持って仕事をこなしていました。





「大体、これだけこき使われてて何も言わないって、僕にはまったく信じられないね。
どうせ僕らがいなければ何もできないんだから、仕事放棄でもなんでもすればいいんだよ。」

「そこは同感。あ、この洗濯物ほつれてる。このまま糸全部抜いてみるのはどう?」





・・・・・・。





『あれ、姉妹っていうからには女役だよな?椎名は僕っこキャラでいくわけ?』

『ぼくっこ?なんだそれは?』

『辞書で調べてみたら?』

『ふむ、そうしよう。』





今日もまだまだ仕事はたくさん残っています。
けれど姉妹はめげません。笑顔を絶やさず、優しい心でいきいきと、
毎日をしっかりと生きていくのです。





「あとさ、あとさ、掃除のときに、ついでに恥ずかしいものも発見してやるとか!」

「はっ。確かに正攻法よりも効くかもね。」





・・・・・・・。





そうして二人は笑顔を浮かべながら、家の中へ入って・・・いくのっ・・・でし、た!





『若菜が震えてる。』

『どうしたんだ?』





むりー!俺このシンデレラむ・・・ブツッ・・・





『先輩マイク入ってる。』

『仕方がない奴だな。こちらで話すときはマイクを切れと指示があっただろう。』

『何でお前らそんな冷静なのー?!ひどいよ?!あいつらひどいよ?!
ナレーターのこと何も考えてない好き勝手ぶりだよ?!』

『まーアドリブOKだしな。』

『あいつらの考えてることはわからん。』

『いやー!あんな黒いシンデレラは、いやーーー!!』









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