「みゆき、アンタ一人でサッカー部続けていくの?」

「え?」





教室には数少ない生徒。
それでも1年前の同じ時期に比べると、あきらかに明るい騒ぎ声。





「椎名先輩も渋沢先輩も卒業して・・・結局今はアンタ一人しかいないじゃない。
しかも部員じゃなくて、マネージャー。」





中学校からの親友であるしーちゃんは、お弁当の中身を口に運びながら私に問う。





「・・・わかってるけど・・・サッカー部を無くしたくなんて、ないから。」





明るくて、強くて、まっすぐで。
心優しい先輩たちとの温かな時間。彼らと別れてから最初の夏。





「あの場所は、先輩たちとの思い出がたくさんつまってるから。」





あれから、1年。
私は今日も、変わらない日常を過ごしてる。














最後の夏に見上げた空は 

−この声が届くように−


















「こっちに来られるんですか?皆も?」





それは半年前に桜塚高校を卒業した翼さんからの連絡だった。
この高校にサッカー部をつくり、先輩たちの居場所を作った翼さん。
彼は学校を卒業してからクラブユースに入り、今ではU-19の選手だ。
その実力は高校のときから変わらない。ううん、もっともっとうまくなっているんだろう。
本人は補欠だと言っているけれど、彼はU-19の日本代表にも選ばれていた。





『うん、半年前にも集まっただろ?それと同じ感じでさ。
あいつらにも・・・会いたいしね。』





半年前にも、彼らを想う人たちがこの場所に集まった。
翼さんに渋沢キャプテン、西園寺先生に功先生。多くはなかったけれど、彼らの家族も。
私が知る人の中でその場所にいなかったのは、ただ一人。
先輩を想ってこの学校へやってきて、そしてこの町を去っていった三上先輩だけだった。

そのときの私は、泣くことしかできなかった。
彼らの眠る場所で、彼らの名前が刻まれた場所で、ただ立ち尽くして。
楽しくて幸せだった思い出がよみがえって。

皆、そうだったんだろう。
何かを喋っていても、その表情はどこか切なそうで。
それでも彼らの前でそんな顔を見せられないと必死でその表情を隠して。

私はそんな気遣いすらもできずに、ただ泣き続けた。
我慢しようと思っていたのに、私はそんなに大人にはなれなくて。
消えることのない優しい思い出。もう彼らに会えることはないとわかっても、
いつかまた会いたいとすら思ってしまう。

三上先輩も同じ気持ちだったのかもしれない。
私と同じように、未だ現実を受け入れられなくて。
ただ、悲しむことしかできなくて。そんな自分を相手に見せたくなかった。
去年の夏から一度も会っていない三上先輩。彼は今・・・どうしているのだろう。





『その日、練習は休みなんだ。みゆきはどう?来られそう?』

「はい・・・!絶対行きます・・・!」





断る理由なんてない。
まだこの町にいる私は、先輩たちに会いにいってはいるけれど
そこには誰もいなくて。ただ、寂しさだけが募る。
翼さんたちが集まってくれることで、またあの温かい時間がよみがえるようで嬉しかった。






















「・・・あれ?まだ誰も来てないんだ・・・。」





約束の日。バスを乗り継いできたその場所にはまだ誰も来ていなかった。
時計を見ると、約束の時間よりも大分はやい。

何度も来ている場所。
迷うこともなく先輩たちの名前が刻まれた石碑へと向かう。





「・・・。」






雲ひとつない青空。夏の暑い日差しは、あの日のことを思い出す。
短い人生を精一杯生きた彼ら。

笑って、それでも段々苦しそうに。
ひとりずつグラウンドに倒れていく。私はその光景から目をそらしたくて。
それでも絶対に見届けるのだと心に決めて。彼らの最後の時をずっと見つめ続けていた。





「「「「ありがとうございました!!」」」」





最後のその時まで笑って。
お礼を言いたかったのは、私の方だったのに。





「・・・っ・・・。」





つらいことがあったとき、くじけそうになったとき、私はいつも彼らのいるこの場所へやってくる。
けれどここに来る私は、彼らの思いでに縋って、あまえて、泣いてばかりだ。
先輩たちが望んでいるのは、私のそんな姿ではないとわかってるのに。





「みゆき、アンタ一人でサッカー部続けていくの?」

「・・・わかってるけど・・・サッカー部を無くしたくなんて、ないから。」




しーちゃんの言葉が浮かんだ。
楽しかった、温かかった場所。
けれど今はもう、誰もいない。皆、いなくなってしまった。





「あの場所は、先輩たちとの思い出がたくさんつまってるから。」





大切な思い出の場所。無くしたくないのは本当で。
だけど私は。





「・・・うっ・・・ううっ・・・」





本当は、1年経った今でも。
まだ、認めたくない。





「みゆきちゃん!」





何度泣いたって、何も変わらないのに。
何度願ったって、彼らが戻るわけないのに。

それでも、変わらずに過ぎていく日常が怖い。
この町から去っていく人たち。先輩たちと共に過ごした日々。
忘れるわけなんてないのに、それでもその思い出が遠くなっていくようで。
私の憧れだった、私の居場所だった彼らが遠くなっていくようで。

変わることなんてないはずなのに、少しずつ過ぎていく日々が怖かった。

半年前も私は同じ気持ちで泣いていた。
先輩たちを想うフリをして、結局は自分のためだったんだ。
そんな自分が嫌で、情けなくて。





「・・・うわ。」





その場で泣き崩れる私の後ろから、足音と一言の低い声。
私は反射的に後ろを振り向く。





「・・・み、かみ・・・先輩・・・。」

「くそ、やっぱ来るんじゃなかった。」

「ちょ・・・ちょっと待ってください・・・!」





そう言って踵をかえして帰ろうとした三上先輩を必死で引き止める。
この間、翼さんは三上先輩が来るとは言ってなかったけれど、
半年前には姿を見せなかった三上先輩が、今日はやってきたんだ。
私の涙なんかを見せて、面倒になって帰ってしまっただなんて皆には絶対言えない。





「・・・俺はあー悲しい、あー懐かしいとか言いながら湿っぽく思い出に浸る為に来たんじゃねえんだよ。
くだらない馴れ合いをしに来たわけでもねえ。アホどもが来い来いうるせえから来たってのに、いきなりこれかよ。」

「ち、違うんです!そんなの私だけで・・・!皆は前を向いてます!」





そう、馴れ合いなんてしてない。
皆、前を向いている。彼らがそうだったように、まっすぐに生きているんだ。
未だ彼らの影を求めて、縋っているのはきっと、私だけ。





「・・・自分だけが後ろ向いて生きてるって?」

「・・・そうです。変なところを見せてしまってすみませんでした。」





ようやく歩みを止めてくれた三上先輩に安心して、私は涙を拭った。
なんとか笑みを浮かべて、先輩を先ほどまでいた石碑の前まで連れていく。





「・・・。」





三上先輩は彼らの名前が刻まれた石碑をただ静かに眺めていた。
あの夏の日。尊い命を失った桜塚高校の2年生。
たくさんの名前がある中で、三上先輩はある一点で視線を止めた。

それは、彼がずっと想っていた人の名前。



三上先輩は何も話さなかった。ただ、その一点だけを見つめて。
表情が変わったようにも見えなかった。
けれど、私はそんな彼の姿に胸がしめつけられるかのようだった。



半年前にこの場所に姿を見せなかった三上先輩。



彼は今、どんな気持ちでいるのだろうか。



どんな想いで、その名前を見つめているのだろうか。






「・・・何だよ。」

「・・・あ・・・。」






私が凝視していることに、三上先輩が気づかないわけもなく。
先輩がこちらを向いて、不機嫌そうに顔をしかめる。





「・・・あ、あの・・・三上先輩は今・・・どうしてるんですか?」

「別に。」





サッカー部で見ていた三上先輩を思い出させるように。
たった一言で返されてしまった。
それもそのはず、私は三上先輩と話したことなど無いに等しかったんだから。

先輩の隣にいたときは、あんなに優しく笑っていたのに。
先輩がどんなに特別だったのかがわかる。





「・・・お前はまだあの学校に通ってんのか?」

「え・・・は、はい!」

「サッカー部も続けてるわけ?部員とかいんのかよ。」

「・・・い、いません。今はもう私以外は・・・」





私、一人しかいない。
サッカー部を無くしたくないくせに、部員を増やそうとも思っていない。
思い出の場所には、誰も入ってきてほしくなくて。





「・・・ふーん。」





興味なさげに呟くと、また石碑に視線を戻した。
私のように泣くこともなく、表情を変えることもなく、ただまっすぐに先輩だけを見つめる。
そんな三上先輩を見て、私は無意識に彼に言葉をかけていた。









「・・・どうしたら・・・私も前を向けますか?」









三上先輩が目を見開いてこちらを見た。
私はその言葉を言った後に、思わず自分の口を押さえた。
押さえたって、今問いかけた言葉が消えるはずもないのに。





「・・・は?」

「す、すみませんすみませんっ・・・!!」





わかっていたことだった。
誰よりも愛しく想える人が、限られた時間しか生きられないこと。
それでも、残酷にもやってきた最後の日。目の前で大好きな人がいなくなる。

先輩の名前を見つめる三上先輩は、本当に切なく見えて。
今でも先輩が好きなのだと、ほとんど話したことのない私にも伝わるほどに。

それでも三上先輩は。
先輩のいない未来を歩んでいくことを、悲観しているようには見えなかった。
彼女の名前を見つめる瞳は、あまりにもまっすぐだった。

謝り続ける私を一瞥して、三上先輩がため息をつく。
視線は石碑にもどして、私を見ずに口を開く。





「・・・前向き前向きって、誰も彼もが格好よく生きてるなんて思ってんじゃねえよ。」

「・・・え?」

「そう必死で見せかけてるだけだ。」

「・・・でも、三上先輩は・・・」

「あーうるせえな。俺だって必死なんだよ。って言わせんなこんなこと。」





三上先輩がちゃんと答えてくれて。
それでも私の疑問はつきなくて。





「私も・・・私もそうしなきゃって思ってます・・・!でも、私はいつまで経っても先輩たちの姿ばかりを追って・・・
前に進もうとさえしてない。先輩たちに縋ってばかりいるんです・・・!」

「・・・。」

「先輩たちのことは絶対に忘れない。でも・・・先輩たちの姿を探して前に進まないことなんて
絶対に望んでないんです。前を向くだけでもいい。それが見せかけでも・・・私は先輩たちを安心させてあげられない・・・!」





こんなことを聞いても仕方ないのに。
それは自分自身の問題でしかない。答えなんて、ないんだ。
なのに一度吐き出してしまった言葉は、止まることをしらない。





「・・・何でそんなにあいつらに頼ってんだよ。そんな頼りがいのある奴らだったか?」

「あります!明るくて、優しくて、強くて・・・!私の憧れでした・・・!」

「うっわ。そんなこと言ったらすっげえ調子に乗りそうだなこいつら。」

「・・・でも、恥ずかしくてそんなこと・・・言えませんでしたけど・・・。」

「・・・そういやお前、風祭のこと好きだったんだっけ?」

「・・・え、ええ?!」





まさか三上先輩が私の好きな人を知ってるなんて思わなくて。
私は思わず間抜けな声をあげてしまった。





「あ・・・先輩に聞いたんですか・・・?!」

「見てりゃわかんだろ。」

「え、あ・・・」





隠していたはずの気持ち。
けれど気持ちは溢れだしてしまっていて。
サッカーばかりを見ていた将先輩には気づかれなかったけれど、
やはり何人かには見破られてしまっていた。
まさか三上先輩まで知っているとは思わなかったけれど。





「それを言わなかったのも、『恥ずかしかった』からか?」

「・・・ち、違います・・・。その気持ちを言って・・・将先輩の重荷になりたくなかったんです。」

「・・・重荷ねえ。」

「だって、私がそんなこと言っても・・・将先輩を悩ませるだけでしょう・・・?!」





三上先輩の伝える雰囲気は、どうして伝えなかったんだというようにも見えて。
けれどそれは正しくても、正しくなくても私が私なりに考えて出した結論。つい声を荒げてしまった。





「誰も別に責めてねえよ。そんなん本人たちの勝手だろ。」

「・・・あ・・・ご、ごめんなさい。」

「けど・・・。」

「・・・?」

「・・・あえて言うなら、それじゃねえの?」

「え?」





相変わらず三上先輩の視線はこっちにはない。
対照的に私は三上先輩の言葉の意味がわからなくて彼をじっと見つめた。





「・・・言葉が少なすぎたんじゃねえのかってこと。」

「・・・言葉・・・?」

「恥ずかしいとか、重荷になるとか。何の理由があるのかは知らねえけど、お前の話を聞いてるとそればっかじゃねえか。」

「!」





自分で考えて、考えて。先輩たちに幸せでいて欲しくて。
私の一言が彼らの重荷にならないように。私のことで、優しい彼らが気を病むことなんてないように。
何かを話すときに言葉を選んでいたこともあった。そんなことを彼らが望んでいるはずもないのに。
思っていた言葉を改めて口に出すことはなかった。だって、そんな別れの前みたいな台詞、言えるわけもない。



飲み込んだたくさんの言葉。



本当は彼らに伝えたかった言葉が、たくさん、たくさんあった。







「・・・三上先輩は・・・先輩に伝えられましたか・・・?」







三上先輩の肩がピクリと揺れた。







「俺がお前みたいに遠慮なんてする奴に見えんのかよ。」







いつでも幸せそうだった二人。
私も自然と笑みが浮かぶ。








「・・・今からでも、先輩たちは聞いてくれるでしょうか?」

「・・・さあな。つーかお前の方があいつらのこと知ってんだろ。」









三上先輩の言葉が嬉しかった。
そうだ、私は先輩たちを知ってる。先輩たちに憧れて、先輩たちとともに過ごし、その温かさに包まれていた。


















空を見上げた。
そして、大好きな彼らを想った。









「・・・ありがとうございました!」








そして、伝える。想うだけで良いと思っていた。言葉にすることがなかったこの想いを。
先輩たちに届くようにと願いながら。








「玉蹴り遊びだなんて、バカにできなかったよなー。」

「意外と奥が深かったんだよな!いつのまにかハマってたし!」








「桜庭先輩と上原先輩の掛け合い、いつもすごく楽しかったです・・・!」








「こんなに夢中になれるもの、他にはなかった。」

「サッカー部に入れて・・・本当によかった。」

「俺、サッカーがこんなに楽しいものだなんて知らなかったっす!」









「天城先輩の突破力も、水野先輩の正確なパスも、
藤代先輩のいつでも前に攻めていく姿勢も・・・すごく格好よかった・・・!」









「アンタが、翼自身がそう思えるなら、俺らも嬉しい。」

「自分にもまだ楽しめるものがあるって、教えられました。」









「黒川先輩と笠井先輩は冷静に見えて・・・さりげなく気遣ってくれる優しさが・・・すごく嬉しかったです・・・!」









「ここは私にとっても、皆にとっても、すごく大切な場所でした!」








「もっと・・・もっとたくさん話したかった・・・。恋の相談もしたかったです・・・有希先輩・・・!!」












「うん!すごく楽しいよ!」



「皆でサッカーが出来て、本当に楽しかった!ありがとうございました!!」








「将先輩・・・!」








「ありがとう。みゆきちゃん。桜塚高校に、サッカー部に来てくれて。」









「ずっと、ずっと・・・大好きでした・・・!」















止めたはずの涙が、再度私の頬を伝っていた。
私は空を見上げながら、遅すぎたその言葉が彼らに届くように祈った。
大丈夫、先輩たちならきっと、聞いてくれる。

考えて、考えすぎてばかりいて、伝えられなかった想い。



時が経っても、いつまでも先輩たちに縋っていて、前を見ようともしなくて。



臆病でごめんなさい。



弱くて、ごめんなさい。






それでも、ずっと思っているんです。





先輩たちと過ごした日々。





明るくて、楽しくて、陽だまりのような場所にいられたこと。





大好きだった、私の憧れだった先輩たちは







ずっとずっと、私の誇りです。





















三上先輩はやっぱりこちらに視線も向けずに、黙って私の叫びを聞いていた。





「・・・すいません・・・何だか私・・・周りを気にもせず・・・」

「・・・意外と恥ずかしいことすんなお前。」





三上先輩の言葉に、私は涙を流したまま顔を赤くした。
でも、いいんだ。ずっと伝えたかった言葉だったんだから。





「けどあいつらは単純だから、泣いて喜んでるかもな。」

「・・・あはは、そうだと・・・嬉しいな。」





三上先輩がからかうように呟いた。
先輩の言うとおりだったらいい。この声を聞いて、皆が笑ってくれればいいと思う。





「三上先輩も・・・叫んでもいいですよ?」

「バカかお前。調子に乗んな。」

「す、すいませんっ・・・。」





何だか優しく見えた先輩に冗談を言ってみたら、怒られてしまった。
やっぱり彼が無条件に優しいのは、たった一人だけなんだろうなあ。





「三上先輩。」

「あ?」

「私、三上先輩と先輩にも伝えたいです。」

「・・・はあ?」





怒られるかもしれないけど、呆れられるかもしれないけれど。
今の三上先輩はあまり怖くない。
先輩だって、きっと笑って聞いてくれる。











先輩と三上先輩の関係、ずっと憧れてたんです。
私も将先輩と・・・二人のようになりたかった。」











また三上先輩の肩が揺れる。








「・・・バッカじゃねえの。」







そう一言呟くと、三上先輩はまた黙り込んでしまった。
・・・少し無神経だったかと不安になり、私は三上先輩に声をかけようと口を開くと、







「・・・三上先輩?」

「うるせえ。もう話しかけるなお前。」







一瞬、ほんの一瞬だったけれど。
三上先輩は確かに笑っていた。
先輩を見ていなかったら、見逃してしまうほどの小さな笑み。



そんな先輩を見て、自然と笑みが浮かんだ。



きっと先輩が今、先輩を思い描いているように。



将先輩を、サッカー部のみんなを思い描いて。












少し遠くから、ざわめきが聞こえた。
時計を見ると、もうすぐ約束の時間。皆がやってきたんだろう。





「お前、その顔なんとかしろよ。絶対俺が疑われる。」

「え、は、はい!」





そう返事をした瞬間、





「・・・ちゃんと来たな三上!うん!って、ああー!三上が桜井泣かせてる?!」

「はあ?!来いとは言ったけどみゆきを泣かせろなんて言ってないよ僕は!」





三上先輩の予想通りになった。先輩は面倒そうに彼らの言葉に耳を塞ぎ適当にあいづちを打っていた。
功先生の声と翼さんの声が響いて。渋沢キャプテンが彼らをなだめてる。
後ろからやってきた西園寺監督はそんな光景を面白そうに笑って眺めていた。





半年前、泣くことしかできなかったこの場所。





だけど今やっと、私は笑えている。








先輩たちのように強くなんてまだなれないけれど。





それでもようやく言葉に出来た、伝えられなかった想い。





何も言わなくても伝わってると思ってた。





でも、私はきっと私自身の言葉で、彼らに伝えたかったんだ。





ずっと心にひっかかっていたものが、重苦しい自分への情けなさが






少しだけ軽くなったような気がした。












ありがとう。






ありがとう。






何度言っても足りないけれど、私は先輩たちと一緒にいられて本当に嬉しかったんです。






たくさんの時間をかけてしまったけれど






ようやく自分の心と向き合えた気がする。













幸せだったあの日々は戻らない。






だけど、






私は前を向いて生きたい。







何度もそう願っては、くじけてきたけれど。






今度こそ、押しつぶされそうな負の感情に負けたりしない。






まっすぐに、前を見て歩いていく。













大好きな、大好きな先輩たち。








どうか、見守っていてください。













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