恋愛真偽間
「あーあ、休みかあ〜。休みなのかー。」
「部活の方で試合があるって前から言ってただろ。俺らだってそれぞれの都合で休むことあるし。」
「何か用でもあったのか?」
「あったあった!俺のこの苦しい悩みを聞いてほしかった!」
「苦しい悩みって、どうせ結人の自爆で彼女を怒らせたとかそんなんでしょ。」
「さりげなく言い当てないでくれる?!」
東京都選抜の練習日。が休みだと聞いて結人が嘆く。
練習が終わった今でも、、と呟いてる結人を見て少し心配になったけど、
どうやらその原因はいつものことで、結人の彼女に関わることらしかった。
うん、それなら大丈夫だろ。
「あのなあのな、俺昨日さー、」
「さて、帰ろうか一馬。」
「ええ?!」
「せっかく結人がに相談するようになってから平和だったのに、わざわざ面倒ごと持ってこないでよ。」
「ひどい!親友の悩みを聞いてもくれないの?!」
「悩みっていうか惚気でしょ。他人の惚気話なんて聞いててもつまらない。」
「ひでえ!英士がひでえよ一馬!のろけじゃねえもん!確かにアイツすげえ可愛いけどのろけてなんかないよな一馬!」
「・・・・・・・・・・・・。」
「沈黙で肯定。」
「わざわざ解説しなくていいし!くそう、が!がいれば!!」
「がいても結人の立場は変わらなかったと思「師匠ーーー!帰ってきてええ!!」」
英士と結人のいつもどおりのやり取りを横目に、帰り支度を進めていると、
こちらに近づいてくる大きな気配がした。下を向いていた俺にかかった影に顔をあげる。
「なあ、俺前から思ってたんだけどよ。」
「え?あ?何だよ鳴海。俺は今傷心中なの。お前の空回りの恋愛話なんて聞きたくないからな!」
「いやそういう話じゃ
・・・って、誰が空回りの恋愛だよ!!」
「ああ暑苦しい。俺、もう帰るよ。」
「ダメでしょ!今日は俺と飯食う約束したでしょ!勝手に帰るだなんて許さないんだからね!」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・で、何を思ってたって?」
英士の沈黙に無言の圧力を感じたからか、結人がふざけるのを止めて鳴海に向き直る。
鳴海は鳴海でそれを察したかのように、呆れたようにため息をつくと口を開いた。
「お前、を師匠師匠って言ってるけどさ、アイツってそんなにすげえの?」
「は?」
「そりゃ妙な説得力があることも、知識も度胸もあることは俺も認めてるけど。
肝心の恋愛経験はそんなにあるのかって疑問だったんだよなー。」
「あるだろ!だって、すげえモテるらしいし!」
「それだって見たことあんのか?大体今だって付き合ってる奴はいねえんだろ?
今っていうか、俺らと会ったときからずっとじゃねえの?」
「まあそれはそうだけど・・・」
今までのはあまりにも堂々として、説得力もあったから、まったく疑ったことはなかったけれど。
確かに自身の恋愛話ってあまり聞いたことなかった気がする。
「でも、経験がなけりゃあんな説得力ねえだろー。
それに前、失恋したことも、好きになった子もいるって言ってたし。」
「それは誰かと付き合ってたって話じゃねえじゃん。
大体、モテると恋愛経験があるはイコールじゃないわけよ。」
「うーん。」
「あんな偉そうに語ってるけど、実は彼女のいるお前の方が経験値あるかもしんねえぞ?」
「・・・そんな、まさか!どう思う一馬!」
「ど、どうって言われても・・・。俺にもわかんねえよ。」
「どうなの英士!」
「・・・さあ。」
鳴海の言葉に結人が揺れてきてる。
お前の師匠への信頼、結構簡単にぐらつくのな。
でも、鳴海の言ってることも一理ある、とは思ってしまった。
は男の俺から見てもかっこいいと思うし、誰とでも仲良くなれるような明るさもノリの良さも持ってる。
告白されてたのを見たって話も聞いたし、確か谷口を助けるために女を簡単に騙したなんて話も聞いた。
だけど、確かにそれがイコールで経験がある、に繋がるとは言えないかも。
「よし、わかった!に直接聞いてみる。まあどんな結果でも、俺との友情は変わらないけどな!」
でも、うん、そういうことだ。別にが誰と恋愛してても、してなかったとしても、はだから。
別に俺たちの関係が変わるわけでもない。
「もしかしたらちょっとくらい優越感持っちゃうかもしんないけど。」
・・・って、おい。
「素直に答えてくれるかあ?お前またいつもみたいにはぐらかされて終わりじゃねえの?」
「お前、と俺の仲をなめるなよ?お前が思うよりずっと強い信頼で結ばれてんだかんな!」
「さっきその信頼崩れかけてなかったか?」
二人の問答は終わる気配を見せず、英士は諦めたように奥の椅子に腰掛けていた。
俺もそろそろ疲れてきたので、英士の隣に行こうとしたそのとき、
「お前ら!そこまでだ!」
「「あ?」」
「それ以上、俺の心の友を侮辱することは許さん!」
「誰だよ。呼んでねえ。」
「キャラ変わりすぎだろ谷口。」
「それから心の友っていうのは勘違いだから。妄想は一人でして。」
「俺に対しての反応、足並み揃いすぎじゃね?!」
突然現れた谷口に容赦ない言葉が飛び交う。
のことについては口を出さなかった英士までもが、参加してるっていうのがまたなんというか。
しかし谷口はそんな扱い慣れているとでも言うかのように、顔を上げて言葉を続けた。
「そんなにのことが知りたいなら、確かめに行けばいいじゃねえか。」
「は?」
「知ってるか?今日、が休みだった理由。」
「部活で試合があったからだろ?」
「実はこの近くなんだよ、その試合。俺のダチの学校がその対戦相手で試合場所。」
「え?!マジで?!」
「ダチに会いに行くついでに、あくまでもついでに!にも会おうかと思ってたけど・・・
お前らがそこまで言うなら、そこに行っての評判でも聞いてくればいいだろ?」
「いや、そこまでし・・・」
「おお!いいないいな!面白そう!部活でのって見たことなかったし!」
「仕方ねえなー。にはぐらかされないよう、俺も行ってやるか。」
「英士と一馬も行くだろ?!」
「え・・・」
「・・・まったく、どれだけ暇なわけ?」
ちょ、ちょっと待て?そこまでする必要があるのか?!
わざわざに会いに行って、恋愛経験あるのか?とか聞くの?!マジで?!
ていうか、そんなことで盛り上がってる俺らは勿論暇なんだけど、暇なんだけどさ!
英士がそう言いながら、明らかに一緒に行く準備をしているのが気になるんですけど!!
「帰ったああ?!」
「ああ、少し前に。」
「なんだよー、なんでもっと引き止めといてくれねえんだよー!」
「知らねえよ。いきなり来て何言ってんだ。」
そして、結局皆で谷口の友達の学校にやってくることになった。
確かに谷口の言っていた通り、かなり近い場所で、電車で一駅、駅から数分歩くとそこに着いた。
しかし肝心のは、すでに試合を終えて帰ってしまっていたというのだ。
なにやらがっかりしたような、安心したようなそんな気持ちだ。いや、安心した気持ちの方が大きいな。
「おい谷口〜!」
「お前らがくだらない言い合いしてるから遅くなっちゃったんだろ?!」
「おい谷口ー!」
「俺のせいだって言うのかよ!大体試合時間なんて・・・」
「時間の無駄。さあ帰ろう。」
いつしか谷口はいじられキャラが確立してるみたいなんだけど、なんでか俺はそれに参加しようとは思えない。
それは俺が人見知りだとか、そういうことは関係なく、いや・・・逆に。
なんか、なんだか・・・すごい親近感が沸いてくる気が
・・・したら終わりな気がする。
「あれ?もしかしてアンタら、ジュニアユースの選手?」
「え?」
「この間見た雑誌に載ってた。川崎ロッサの3人のコンビネーションがすごいって。
そういえば谷口と同じ東京都選抜なんだっけ?」
「お、おお、おおー!そうそう!」
「雑誌に載る有名人と仲がいいなんて、谷口も結構やるな〜!」
「別に仲はよくないけどね。」
「俺は?!俺は知らねえの?!明星中の鳴海貴志!」
「・・・悪い、知らない。」
「はははは!」
「くそ!ユースの何がそんなに偉いっつーんだ!」
谷口の友達が俺らのことを知っていたことから、結人は機嫌よく自己紹介なんて始め、
蚊帳の外に追い出された鳴海と谷口は、不満そうな顔でふてくされた。
「で?何で揃いも揃ってうちの学校に来たんだ?谷口と仲が良くてついてきたって訳じゃないんだろ?」
「あ、うん。今日ここで練習試合あっただろ?その対戦相手が同じ東京都選抜で俺らのダチなんだ。
俺らもたまたま近くで練習してたから、ちょっと見に来てみたんだよな。」
「へー、名前は?」
「。」
「あー、!9番だろ?話した話した!面白い奴だよなー!」
「そうなんだよ!面白い奴なの!」
「あ、そういや、うちの学校の女子かなり持っていかれたよ。
なんで自分の学校で他校の男を応援されなきゃなんねえんだって思ったけど、憎めない奴だったなー。」
「ふ、ふふふ!ホラ見ろ鳴海!はモテるんだよ!」
「ああ?!だからそれと経験は関係ねえって言っただろ?」
「?」
「なあ、他には聞かなかったか?」
「彼女が迎えに来てたとか、応援してた女子の中から誰かお持ち帰りしたとか!」
「そうそう!のすごいとこ教えてやってくれよ!」
「いや、俺もそこまでは・・・」
お前ら、相手軽くひいてきてるから。それくらいにしとけ?
ていうか谷口、お前友達だよな?なんでか一番ひかれてるぞ。
「・・・あれ、の学校の奴らが戻ってきた。」
「なんだろ?」
グラウンドに入ってきた数人の元へ、谷口の友達が駆け寄った。
何かを少し話して頷くと、こちらへ戻ってくる。
「更衣室に忘れ物したんだって。俺取ってくるから、遊んでるなり帰るなり好きにしてくれていいよ。」
「おー、行ってらっしゃーい。」
軽く手を振り見送ると、鳴海と結人が顔を見合わせて笑った。
嫌な予感・・・と思うよりも早く、二人はグラウンドに入ってきた奴らの元へと向かった。
「英士、もうあいつら止めてくれよ。」
「嫌だ。面倒くさい。」
「あー、もう!」
そりゃ思ってるだけで、あいつらに何も言えない俺も悪いけどさ。
あいつらが言うこと聞く奴なんて、限られてるだろ・・・?!
なんてことを考えていたけれど、どうやらそれは杞憂に終わった。
結人と鳴海は、先ほどのようにあっという間に、見知らぬ奴らと仲良くなってしまったからだ。
「?うん、いい奴だよな?」
そして短時間で自己紹介も終え、のことを聞き出すことに成功したようだ。
本当すごいな。俺にも、多分英士にだって出来ない技だ。
わきあいあいと話す姿を見ると、本当、こういうのは結人の才能なんだろうなと思う。
「がさー、自分はいろんな女と付き合ってきたーとか言ってたんだけど、それって本当なのか?」
「はそんなこと言ってな・・・もがっ!」
「真偽のほどはどーなのよ?クラスメートくん。」
「あー、今はいないけどなあ。」
「今はってことは・・・昔はいたってこと?」
「うん、いたいた!」
「やったー!ホラ見ろ鳴海!!やっぱりは俺の師匠なんだよ!」
「そうだよ!俺の心の友なんだよ!」
「「混ざってくるな谷口。」」
「ひでえ!!」
「なんだよくそー。せっかくアイツの弱みを握って遊んでやろうと思ってたのに。
なあ、の彼女ってどんな子だったんだ?」
「どんな子って・・・」
のチームメイトらしき奴らが、顔を見合わせて少し悩むような表情を浮かべる。
そうだよな、さすがにそこまでは他人の口からは言いづらいよな。
このままだと結人も鳴海も谷口も暴走し続けそうなので、意を決して俺は奴らへと駆け寄った。
「どの子のこと?」
「「「・・・。」」」
しかし、その前に返ってきた言葉は予想外のもの。
俺も他の奴らもかたまったまま、目を丸くして目の前の男を見た。
「・・・そ、そんなに迷うほどの人数と付き合ってたの?」
「え?本人に聞いてたんじゃないの?」
「だって今、彼女いないんだろ?!」
「あー最近はいないよな?確かに。」
の意外な真実に俺たちは、揃ってポカンとした表情を浮かべた。
皆同じ表情で並んでる姿はさぞかし間抜けなものだったと思う。
いや、がいろいろ経験しているんだろうって予想はしてたわけだけど。
でもアイツ、誰かと付き合うってことにも、恋愛の考え方も割と誠実だったから、
何人もの女と付き合ってたなんてイメージは沸いてなくて。
「・・・それっていつから?」
「えーと、いつだったかな・・・。中1の・・・いや最近?あんまり考えたことないからはっきりとは・・・」
「ふーん。」
「なんで俺らの年でそんなに何人もとつきあってんだよ!ふざけんな!!」
「そうそう、がいきなり女と付き合わなくなったからさ、結構話題になったぜ?
そういや男が好きになったとか、そんな噂も流れたな。ふははっ!」
「そうそう!の本命がお前だとかいう話もあったよなー!」
「まあ俺ら仲良しだから!仕方ねえかな!」
「はっ。」
「ちょっと聞き捨てならねえ!!俺だってと仲いいからな!」
「そうだ!俺の心の友だ!」
何お前ら張り合ってんの?!
結人と谷口はいつものことだけど、英士は鼻で笑ってるし。
ていうかいつの間に会話に参加してたんだよ。
「で?の本命って誰なんだよ?あれか?前に話してた失恋したっていう女子大生か?」
「え?俺は女教師って聞いたけど?」
「ちょっと待て!俺はコンビニの店員って聞いたぞ?!」
「どんだけ失恋してんだよアイツ。」
「つーか、適当に言ってただけだろ。」
「アイツ、嘘がうまいからな・・・!俺が認めただけのことはあるぜ!」
「嘘を見抜けない君らが鈍いんじゃないの?」
「ああ?!」
「やめて!アタシのために争わないでっ!!」
「「「?!」」」
ちょっともう英士、何でお前まで会話に参加して、しかも喧嘩売ってんの?
もう俺どうしたいいの?と途方にくれたところで聞こえた間抜けな裏声。
「帰ってくるのが遅いと思ったら、何よこの不思議なメンバー。」
「いやあ、思いのほか盛り上がっちゃって。」
に事の経緯を説明すると、呆れたようにため息をついた。そりゃ呆れるよな。呆れるよ。
ついでに、その話をしている途中には、谷口の友達が戻ってきて、
忘れ物を届けると自分も支度があるからと部室へ戻っていった。
「本当お前ら、俺のこと好きな?」
「だ、誰が・・・!」
「そう!好きなんだよ!」
「だって友達だろ!」
照れ隠しにしても否定しようとした鳴海はまだいい。
全力で恥ずかしげもなく肯定する結人と谷口を誰か止めてやってくれ。
「直接聞いてくれれば話したのに。」
「代わりに俺が話してやったよ?」
「それはどーも。妙なこと言ってねえだろうな?」
「言ってない言ってない。女に不自由しないタラシ男なんだよむかつくよだなんて言ってない。」
「言ってんじゃねえか!」
先ほどまで笑いながらのことを話してた奴が、やはり一番仲がいいようだ。
軽く小突きあう二人を見て、仲の良さが見てわかる。
そしてそれを隣で見つめる英士の機嫌が悪いのも、どことなくわかる。
あの、怖いんですけど。なんで?が誰とでも仲がいいのはわかってることだろ?
「そんなに聞きたいなら、俺の初恋から話してやろうか?」
「おおう!!」
「はーい!聞きたいっす師匠!」
「うむ、いい返事だ。
しかしそんな話聞くの面倒とか言われるかと思った。とんだ予想外でした。」
でも皆待ってるから帰りながらな、と付け加えたと一緒に歩き出す。
つーか、俺ら迷惑以外の何者でもないな。どんだけ暇人だって思われたんだろう。
さっき雑誌に載ってたって、褒められたばっかりだったのに・・・。
「俺の初恋は年上のお姉さんでした。だけどその人には好きな人がいて、決して叶わぬ恋でした。
どんなに好きになっても俺は年下で、子供扱いしかしてもらえなくて。気持ちを伝えれば笑われた。
そんな・・・切なくて苦しい恋だった。」
「・・・。」
「今思えば親が離婚して、母親の温もりってものを求めていただけなのかもしれないな・・・。
優しいその人が母親であり、姉であり、俺のすべてだったかのように・・・。」
「・・・・・・」
あまりにも予想外なシリアスな雰囲気からの始まりに、俺たちものチームメイトたちも沈黙する。
これ、このまま聞いていっていいものなのかと誰もが思ったそのとき、
「しかし俺はモテた。近所でも有名な好青年であり、可愛がられ、告白もされた。」
「?!」
「切ない恋の傷を癒すのは、新しい恋だ!楽しい恋だ!刺激的な恋だ!ひゃっほう!と思ったわけです。」
「ちょ・・・ええ?!」
「若いって単純だよね・・・!」
「いくつの話?!今も充分ガキだろ?!」
「そんな感じで、もうそのお姉さんのことはすっかり忘れて楽しい時間を過ごしたわけです。」
「わけです、じゃねえよ!雰囲気ぶち壊し!」
「けど・・・」
皆のツッコミが入ったところで、またの表情はシリアスなものに戻る。
何これ?真面目なのかふざけてるのかわかんねえんだけど。
「俺が楽しいからって相手も楽しいわけじゃないんだよな。それを教えられる子にあって・・・」
「・・・え・・・?」
「自分が本当に好きな子は誰なのかって、考えるようになった。
自分の気持ちを埋めるために、軽い気持ちで付き合うのは止めようと思った。」
「・・・。」
「俺、たくさんの子を泣かせたな。向けてくれる気持ちに応えられてなかったな。
俺がお姉さんに持った気持ちと同じ想いをさせたんだろうなって・・・そう思ったんだ。」
「・・・」
「だからこれからは誠実に付き合いたいって。本当に好きになった子だけを大切にしたいって・・・。」
の切なそうな、複雑な表情に、俺らは何も言えなかった。
さっきみたいな大声を出して突っ込む奴も、茶化す奴もいなかった。
「・・・っていう、ドラマチックな恋愛がしたいなあと思って。」
「「「ちょっと待てえ!!」」」
「え?」
「え、じゃねえよ!何最後の?!そんなドラマチックな恋愛してきたんじゃねえの?!」
「何言ってんだよ。そんなものが簡単に転がってたら、世の中皆ドラマチックですよ?」
「お前が何言ってんだ!!お前の話じゃねえの?!」
「ああ、初恋はお姉さんだよ?」
「初恋『は』って何!その続きは?!」
「ドラマチックな俺の願望。」
「誰もお前の願望は聞いてねえええ!!!」
「もー俺本気で聞いちゃったよ!本気で言いづらいこと言わせたって気まずかったのにさーーー!!」
シリアスな雰囲気からまた一転。先ほどまで黙り続けていた分を発散するかのように、
皆、一斉に騒ぎ出した。なんだこの落差。こいつらこんなテンション上げ下げして疲れねえのかな。
「でもホラ!いろんな子と付き合ってたのは本当だし!ついでに最近パッタリ誰とも付き合わなくなったし!
その辺は一致してるよな!」
「そうなの。あんな感じで切ない感情が原因ダッタノデス。」
「嘘だろ!何そのふざけた感じ!絶対嘘だろ?!」
「恋愛って難しいし、疲れるときってあるよね・・・。」
「ダメだコイツ!女と付き合いすぎて疲れたってだけだー!むかつくー!!」
の友達が、ふざけながらケラケラと笑う姿に頭を抱えて、
悔しがりながらを蹴り飛ばそうとして、軽く避けられた。
「経験値がないどころじゃねえ・・・!隙なんか全然ないじゃねえかよ!!」
「ホラ見ろ鳴海!もうなんか、いろいろ悟ってよくわからない境地にまで行ってるんだよ!」
「になりてえ・・・!になってみてええ・・・!」
そこ感心するところか?と疑問に思ったわけだけど、まあこの騒ぎの当人たちが納得したんならいいんじゃねえかな。
谷口に至っては何も言わない。言えない。関わらない。
そういえば、英士が何も言わなくなったな。ていうか、英士はどこだ?
と思ったら、俺らの少し後ろにいた。ああ、この騒ぎに係わり合いになりたくないのか。わかる。
先ほどまで話の中心にいたが、騒ぐ奴らの中からこっそりと抜けて英士の隣に行くのが見えた。
「かじゅまー!やっぱりはすげえんだよな!」
「え?あ、ああ・・・。」
そこから先は、異様に興奮した結人に捕まり、二人の会話は聞こえなかったけれど。
「何一人で関係ありませんって顔してんだ?英士も仲間だからね?逃がさないからね?」
「嫌だよ。」
「まったまたー。休みの日に会いに来るくらい俺のこと好きなくせに〜!」
「・・・。」
「英士?」
「・・・どこまでが本当?」
「ん?」
いつも通りの二人の表情。
がくだらない話をふって、英士がそれに呆れてる。
「さあね。」
そんないつも通りの会話なんだろう。
「・・・ああ、そう。」
「ちょ、英士怒ってる?別に隠してるわけじゃないけど?」
「別に。」
「・・・まあ、でもさ。」
「?」
「そのうち話したくなるかも。そしたら聞いてよ。」
「何での都合に合わせないといけないの。」
「えー!」
「・・・気が向いたらね。」
「ははっ、英士はそう言うと思った!」
への疑惑が晴れたところで、結人が思い出したかのようにへと飛びついた。
それをかわされて、結人が地面にダイブしていたことは見なかったことにする。
「そう、そうそう!俺、に話聞いてもらいたかったんだよー!」
「え、やだよ。どうせ惚気だろ?」
「違えよ!!」
「ほら言ったのに。がいても結果は変わらないって。」
「なんだ若菜?恋愛相談なら俺が聞いてやろうか?」
「やだよ、空回るもん。」
「ああ?!お前、俺を空回りキャラにすんの止めろ!!」
「じゃあ俺が・・・」
「「いらん。」」
谷口をいじることに関しては気が合いすぎだと思う、この二人。
そして英士もも我関せずと言った表情。俺も特に話しかけることはない。
一応、同情はしてる。
「そうだ、鳴海の恋愛相談受けてもいいぜ!なんてったって、俺は彼女持ち。は経験豊富だから!」
「はっ?ふざけんなよ!」
「そうだぞ結人。俺もお前もまだまだなんだから。」
「なんで?もっと誇っていいのに!」
「恋愛は数じゃない。その深さが大事なんだ・・・!何を思って、何を感じ、相手とどう付き合うか。」
「!」
「お前もそうだぞ結人。彼女が大事なんだろ?別れたくないって思うんだろ?」
「当然!」
「その気持ちを大事にしろ。少しくらいの失敗なんてけろっと忘れられるくらいの、受け流せるくらいの器の大きな男になるんだ・・・!
そうしたらお前は俺なんか頼ることなく幸せになれるから・・・!」
「・・・っ・・・!!」
・・・えーと。
結人と熱い抱擁をかわすが、すごくわざとらしく頷いていたことは見なかったことにして。
「やっぱり結人がうるさいときは、に任せておくべきだね。」
悪びれることもなく呟いた英士の言葉に、少し同意してしまいそうになったことも、俺の心に秘めておくことにしよう。
の学校の部員たちが集合していた場所で別れ、俺たちも家へ帰ることにした。
「あれ、そういえば谷口、友達は?」
「呆れて帰った。」
「うわー、どこまでも谷口!」
「何だそれどういう意味?!」
「しかし、に弱みはねえのか。つまんねえな。」
未だの弱みを見つけようとしている鳴海に、
結人と谷口が二人で顔を見合わせ呟いた。
「お前、本当にのこと好きなんだなー!」
「まあ俺も好きだけどなー。」
「はあ?!誰がだよ!あんな得体の知れない奴のどこが好きなんだっての!」
「照れるな照れるな。」
「俺たちだってお前と同じ気持ちだから。」
「あああ?!やめろ!お前らみたいな変態と一緒にすんな!!」
「誰が変態だよ!変態は谷口だけにしろよ!」
「おおおい!!その反論の仕方は間違ってんだろ!!」
そんなやりとりを見て呆れるようにため息をつく。
本当こいつらって・・・
「バカだよね。」
英士の一言に思わず吹き出してしまった。
そう、本当さ、バカなんだけど。
「俺たちも、かな?」
「嫌なこと言わないでよ。」
それに一緒に付き合ってしまう俺らも、変わらないのかななんて
大声で騒ぎ続ける奴らを前に、英士と笑いながら思った。
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