恋愛迷走路









「はあー!つっかれたー!相変わらず監督は容赦ねえー!」

「俺たちが苦しむ姿を笑顔で楽しんでる感があるよな!」

「でも結人は、そういうの興奮するらしいからいいじゃん。」

「そうそうちょっと俺ドキドキしちゃ・・・ってするか!!」

「・・・おいお前らその辺でやめとけよ。どこでどうやって監督に伝わるかわかんねえぞ。」

「そうだよ、その話題、椎名あたりが飛んできそうで嫌だ。」





普段の練習も相当な量とは思うけれど、ここに夏の気温の高さなんてものが加わると、疲れもぐっと増す。
とはいえ、そんなものにプレーが左右されていたら話にならないから、文句はないけれど。
それでもつい、疲れたや暑いなんて言葉が出るのは不可抗力というものだろう。





「でも、親戚で憧れのおねーさんを邪な目で見られたら俺だって殴りたくなるわー。」

「だって。気をつけなよ結人。」

「俺!?俺何も言ってないんですけど!邪な目とかで見てるわけ・・・ね、ねーだろ!」

「今なんで言葉につまったの?」

「結人・・・お前っ・・・!彼女が一番だとか言っておきながらっ・・・!」

「やめろ!やめろー!!俺は彼女が一番なの!妙な言いがかりつけんな!!」

「・・・!?」

「な、なんだよ?」

「遠くから雄たけびが聞こえる・・・!」

「・・・え?」

「・・・・・・ぉぉぉ・・・ぉぉぉ・・・うおおおおおおおお!!」

「まさか・・・!本当に椎名が!?」

「雄たけびをあげて?」

「なんだとー!?」





なんだろうこの茶番。どうしてこいつらこんなにノリノリなの?練習で疲れきってたんじゃねえの?
椎名が雄たけびあげながら迫ってくるとか、想像することすら怖いわ。
まあつまり、どう見たって聞いたって椎名のわけがないんだけど、奴らの悪ふざけはまだ続く。





「うおおおおおーー!!」

「とまあこんな感じで椎名が怒ったら大変だろ?ちょっとは自重しなさい結人!」

「おおおおおーー!!」

「椎名がこんな原始的な怒り方してたら笑いが止まらなくなるけどね。」

「ふぬあああああーー!!」

「だから俺をそういうキャラに仕立てようとするのやめてくれる!?」

「ぬおりゃああ「「うるせえよ!!小岩!!」」」





とりあえずどうしたらいいのかわからなかったので、傍観を続けていたら、一向にやまない雄たけびにたちがキレた。
先ほどからの雄たけびの主は、練習が終わってもなぜか走りこみを続けていた小岩の声。
本人は全然関係ないのにキレられてちょっと可哀想になった。でも、うるさいのは本当だから特に何も言わない。





「っ・・・はあっはあっ・・・ぶはー!!な、なんだよお前らっ・・・!」

「もう練習終わりだぞ?いつまで叫びながら走ってんだよ。」

「どうでもいいけど黙って走れないわけ?」

「べっ・・・別にいいじゃねえか!叫びたいし、走りたい気分なんだよ!」

「あれ?小岩くん、まだ走ってたの?」

「杉原。」





先に更衣室へ行っていたらしい、杉原と風祭が着替えを終えた姿で現れた。
汗だくで息を切らせている小岩を見て、呆れたようにため息をついた。





「なあ杉原。小岩の奴、どうしちゃったの?
叫びながら走り出すとか、青春ドラマにでも出たいの?夕日に向かって走りたいの?海に向かってバカヤローって言いたいの?」

「まあ、そのようなものじゃない?」

「へー。なんのドラマに出たいの?」

「いや、ドラマは関係ねえだろ。」

「好きな子への誕生日プレゼント、何あげたらいいのかわからないんだって。」

「・・・は?」

「彼女にプレゼントなんかしたことないから悩んでるんだよ。
でもそんなことで悩むなんて男らしくねえーって悶々としちゃって、それを走ってごまかしてるんだ。」

「まーじーでー!!やだ小岩!可愛いとこあるじゃん!」

「好きな子ってなに!?彼女?!小岩に?!恋愛とかめっちゃ疎そうなくせに信じらんねえ!!」

「物好きもいるもんだね。」

「おいコラ!タッキー!!なにサラッと暴露してんだああああ!!」





杉原が軽い冗談でも言ったのかと思ったけれど、小岩の慌てようを見ると、どうやら本当のようだ。
コイツって絶対嘘とかつけないタイプだよな。俺も人のこと言えないけど。





「いいじゃない。別に悪いことじゃないんだし・・・。それに僕らじゃあまり相談に乗ってあげられないし。ねえ、カザくん。」

「そうだね。好きな子とか、僕もよくわからないからなあ・・・。」

「というわけでくん。小岩くんに適当にアドバイスしてくれない?」

「適当でいいの?」

「だって面倒くさいでしょ?」

「うん。」

「本人目の前にして言うことじゃなくねえ!?」





風祭はともかくとして・・・杉原はわからないとか言いながら、ただ面倒なだけなんじゃねえの?
と思ったらめちゃくちゃ口に出してた。すげえなこいつ、そういうの本人目の前にしてなかなか言えねえよ。
英士とかはしょっちゅう言ってるけど。今も言ってるけど。





「でも、小岩みたいなピュアボーイだったら、ちょっと応援したくなるよね!」

「ピュアボーイってなんだよ?!」

「杉原杉原!俺に託してくれてもいいんだぜ?なんてったって俺、彼女持ちだから!」

「ああ・・・そういえばそうらしいね。でも若菜くんはいいや。

「なんで!?」

「もっと面倒なことになりそうだから。」

「はああ!?」

「「杉原正解。」」

「はあああああー!?」





昔一緒のクラブに所属していたとはいえ、結人と杉原ってそんなに多く話してるわけでもないのに、いろいろ見抜かれてる気がする。
確かに結人は、悪意はないのに事を大きくするっていう、やっかいな属性を持ってるからな・・・。
・・・いい奴なんだけどな。どこか、どこか残念なだけなんだ。





「なあ、そろそろ着替えようぜ。また俺ら最後だ。」

「そうそう、話は着替え終わってさっぱりしてからな!」

「じゃあ僕らは先に帰・・・」

「オイコラ、この状況を作り出して一人で逃げる気かタッキー!」

「何言ってるの小岩くん。」

「え、そっか・・・なんだ俺、お前が俺を見捨てて帰るのかと・・・」

「一人じゃないよ。カザくんと一緒に帰るよ。」

「おいいいいい!!!」





なんだろう。杉原を見てると、どこかの誰かさんを思い出す。
そして小岩の姿がやっぱり誰かさんにかぶる。
俺、小岩とあまり接点なかったけど、なんだか少し優しくしてやりたい衝動に駆られつつある。













着替えを終えると、結局、先ほど話していた全員で一緒に帰ることになった。
駅までの帰り道で、は小岩の話を聞いてやることになったみたいだ。





「そういや彼女ってどんな子なの?まずそこから始めないと。」

「どんなって・・・ふ、普通だよ!」

「あのなあ、普通にもいろいろあるわけだよ。人によって価値観だって違うし。
見た目とか性格とかいろいろあるだろー?可愛いとか美人とか、大人しいとかテンション高いとか、優しいとか厳しいとか。」

「か、か、かわいいとか・・・そんなの、そんなの言えるかあああ!!」

「なにこの子すごく面倒くさい!本当面倒くさい!!」

「ね?面倒でしょ?」

「何勝ち誇った顔してんの杉原!?」





確かにこれは面倒だ。たぶんその女の子の些細な話をすることすら、小岩にとっては恥ずかしいことらしい。
・・・まあ俺もこれだけの大人数の前で、好きな奴のことについて話すとか、拷問かと思うもん。あーあ、小岩の奴、顔真っ赤だ。





「ていうか、別に俺らに話さなくても、その子のこと知ってる共通の友達に相談した方が早いんじゃない?」

「確かに。」

「い、嫌だよこっぱずかしい!あいつのこと知らないお前らだから、話せるんだよ!」

「「じゃあとっとと話せよ。」」

「う・・・!」

「はあ・・・、たかがプレゼントくらいで悩んでる奴なんてほって帰ろうよ。
迷って悩んで自爆したところで俺らには全然関係ないし。」

「そうだなあ・・・。人は失敗しながら学んでいくものですからね!」

「杉原もこっちに面倒ごと押し付けないでほしいね。そんなに恋愛相談に自信がないわけ?」

「・・・ふふ、別に郭くんに頼んではいないけどね?」





・・・ん?なんか若干ピリッとした空気になったような・・・。
でも英士ももいつもどおりだし、杉原は・・・よくわかんねえけど。





「ともかーく!彼女を喜ばせたいなら、恥もプライドも捨てろ!
男らしさとか恥ずかしさとかそんなもん二の次!」

「お・・・おお・・・」

「お前の彼女は可愛いのか!」

「あ・・・う・・・」

「イエスかノーで!はい!」

「い、い、い、いえす!!」

「喜ばせたいのか!」

「い、いえす!」

「彼女のためなら恥くらい捨てられんだろ!」

「「いえす!」」

「結人は参加してくんな!」

「なんでよ!俺も入れてよ!俺も相談乗りてえんだよ!!」

「邪魔!」

「っ・・・!!がひでえよ一馬ああああ!!」

「・・・。」





さっきから結人が何もしゃべらないと思ってたら、相談に乗るタイミングを見計らってたのか・・・。
しかし容赦なく一蹴されて俺に泣きつくところまで、悲しいくらいいつもどおりだ。





「はっ、くだらない。」

「何がくだらないの?郭くん。」

「たかがプレゼントでなんでこんな大事になってるんだか。」

「郭くんはたかがプレゼントで悩んだりしなさそうだよね?」

「まあね。」

「サプライズとか、めずらしいものとかはあえて避けて、無難なものばかりになりそうだよねえ。」

「何が言いたいの?」

「いや?郭くんらしいなあって。」

「杉原に俺のことを語られたくないね。」





・・・あれ?
なんかいつの間にかこっち側が険悪な雰囲気になりかけてるんだけど・・・。
あれ?なんで?英士が毒舌なのはいつものことで、や結人がどんどん話を進めていくのもいつもの通りなんだけど・・・。





「冷たいなあ。」

「別に?本当のことを言っただけ。」

「でも郭くん、まだ彼女とか出来たことないんでしょ?実際どうなるかわからないよね?」

「なんで杉原にそんなこと言わなきゃいけないの。」

「まだ恋愛もしてないなら、小岩くんのことバカに出来ないんじゃないかなあって思っただけだよ?」

「・・・へえ。」





・・・そうかわかった。わかったぞ。
英士の毒舌に反論する奴も対抗する奴も、今までほとんどいなかったんだ。
大体の奴らが英士とのタッグにへこまされて、なぜか俺らがフォローするという図式が出来上がっていた気がする。
俺らだってそれほどお人よしでもないはずなのに、特に英士は結構ひどいことサラッと言うから。当事者でない俺でさえたまに泣きたくなるから。
あまりにも可哀想になってフォローのひとつも入れたくなるんだよ。

と、まあそれは置いといて。杉原は英士の言葉に真っ向から・・・いや、どっちかって言うと遠回しに対抗してるんだ。





「ねえ、真田くん。あの二人・・・」





恋愛話だったからか、今までほとんど何もしゃべらなかった風祭が小声で話しかけてくる。
風祭、お前も気づいたんだな?多分、ここは誰かが仲裁に入るべきなんだ。
たちは小岩との話に夢中になってるし・・・ここは俺たちが二人を・・・





「一緒に話してるところをあまり見たことなかったけど・・・仲がいいんだね!」





って、なんでそうなる!?

お前、何を見てるの?何でそんな満面の笑みで嬉しそうにしてるの!?
どこをどう見たって険悪な雰囲気にしか見えねえよ!!天然にもほどがある!!





「小岩は何をあげようとしてたん?」

「わ、わかんねえけど・・・テレビとかだと花束贈ったりしてるよな・・・。」

「Oh・・・」

「なんで今外国風になった!?」

「俺はお前が花束を持って目の前に現れたら間違いなく笑い転げる。」

「間違いねえの!?」

「花は人を選ぶんだよ。彼女が思い入れがある花とかいうなら別だけど・・・思いつかないから花束でいいやって程度ならやめとけ。」

「はっ・・・!そうだったのか・・・!」

「そうしないと今の結人の反応のように、恥ずかしい過去がひとつ出来ることになる。」

「な、なるほど・・・!」

「そういうところだけ俺を会話に参加させないでくれる!?」





・・・あっちはいいなあ、和やかで。
別にどっちの会話にも参加してないんだけど、だから両方の会話が耳に入るんだよな。
俺もあっちの会話に参加してればよかった。そうすればこんな気まずい思いをしなくてすんだのに・・・。
・・・いや無理だったわ。俺、恋愛相談とか本当無理。みたいにこっぱずかしいこと言えねえもん。





「恋愛してなくたって、わかりきってることだと思うけどね。」

「郭くんは悩まないってこと?」

「少なくとも小岩みたいにはならないね。」

「ふふ、自信あるんだ?」

「当然でしょ。何か文句ある?」

「いや、別に?」





こっちは何でだんだん怖くなっていくんだろう。
一応、見た目には笑顔で会話してるように見えるのに。
なんだろうこの威圧感と圧迫感。見てるだけなのに、この場から逃げ出したい。
隣にいる風祭はどう思っているだろう。さすがにそろそろこの重い空気が伝わって・・・





くんは何でも知ってるんだね。すごいなあ。」

「え、あ、ああ、知ってるっていうか・・・妙な説得力があるっていうか・・・」

「杉原くんと郭くんはなんだか活き活きと話してるよね。
あんな二人、あまり見たことないや。楽しそうだなあ!」





風祭お前なんなの?!なんで一点の曇りのない目でそういうこと言えるの!?
何でもポジティブに見えるフィルターでもついてんの!?俺にもそれくれよ!





「そうだなー。彼女は何が好きだ?どういう系統のもの持ってる?」

「え?そんなの急に言われても・・・」

「そういうの、すごく大事。彼女がどんなものを好んで使ってるとか、何か欲しいとか、古くなったから買いかえたいって言ってたとか、些細な会話から拾っていくんだよ。」

「そ、そっか・・・。」

「しっかり見とけよな!自分が言ってないのに、好きなものに気づいてるなんて、嬉しいに決まってんだから!」

「お、おう・・・!」

「何もせずにわかりあえるなんて都合のいいことはないんだからな。お互いを知る努力だって当たり前のことだ。
全員が全員、絶対に喜ぶプレゼントなんてありえない!」





小岩が真剣な表情でうんうんと頷いている。下手したらメモでも取りそうな勢いだ。
でも、確かに説得力はあるんだよな。の話し方なのかなんなのか、なぜか引き込まれる力がある。





「でもな、小岩。」

「おう?」

「相手が好きな奴だって言うなら、話は別。」

「・・・どういうことだ?」

「好きな人からもらったものなら、何だって嬉しいじゃん。」

「・・・え、」

「自分のために悩んで、慣れない相談までして喜ばせようとしてる。
そんな風に考えて選んだプレゼントが嬉しくないわけないじゃん。」

「・・・。」

「だから、なんだっていいんだよ。さっき言ってた花束でもいいし、
別のものにしたいなら、良さそうな店くらいは教えてやれる。ただし、どんなもの買うか目星はつけとけよ!」

「あ、ああ・・・!」





そうなんだよな。本当はきっと、あんなに迷う必要なんてないんだ。
失敗するかもしれない、気に入ってもらえないかもしれない、なんて考えが先に来てしまうものだけど。
好きな奴からのプレゼントは、それがどんなものだって、素直に嬉しいと思うんだろう。





「それでも出来るだけ喜ばせたいって気持ちはわかるからさ。
照れるより先にリサーチ!悩んで全力疾走する前に行動!」

「・・・おう!」

「・・・。」

「なんだよ結人。」

「・・・なんか、小岩に優しくねえ?」

「だって小岩、ピュアなんだもん。」

俺もピュアなんですけど!優しくしてよ!

「・・・やめろよ、そういう嘘。」

「マジな顔して言わないで!!傷つく!!」





小岩は相変わらずまだ顔を赤くしてるけど、次にやることは決まったみたいだ。
あいつ、見るからに単純そうだからな。の言葉に同感したなら、今度は行動することに一直線になりそうだ。

こっちは何の問題もなく、平和に終わりそうだ。あとは・・・





「あはは、僕が何かあっても、郭くんには相談したくないなあ。」

「奇遇だね。俺も杉原にはしたくないね。元々する気も聞く気も微塵もないけど。」





・・・・・・・・・うん。まあ、いっか。
俺は何も見なかった。何も聞いていなかった。





「真田くん、なんだか疲れてない?大丈夫?」

「え?あ、ああ。」

「あまりしゃべってなかったよね。
・・・って僕もだけど。好きな子とか、彼女とか、そういうの、まだよくわからなくて。」

「あー・・・うん。俺もわかんない。」

「そっかあ、真田くんもかあ。よかった!」

「・・・。」

「あ、よかったって言うのはないか!ごめん!」

「いや、いいよ別に。」

「あはは、そっか。」





・・・不覚にもまさかの風祭に癒されてしまった。
なんだこいつ、天然でとろくさいと思ってたけど、割といい奴だな。
いつものメンツでいることに慣れてしまうと、風祭ってすごく新鮮なんだよな。
こういうタイプって俺の周りにいない気がするし。

























!」

「あ、小岩!どうだった?うまく行ったか?」

「俺が気の利いたものプレゼントできたってことに驚いてたみたいだ。まったく失礼だよな!」

「じゃあ喜んでくれたんだ?」

「お、おう、まあな。で、あの・・・まあ、なんだ。」

「?」

「いろいろ話聞いてくれて、店も教えてくれて助かった。・・・あ、ありがとな!」

「・・・。」

「な、なんだよ!」

「ははっ、どういたしまして!」





それから小岩は、無事プレゼントを選び、彼女に渡すことが出来たようだ。
彼女は喜んでくれたみたいで、小岩はそれをうまく言葉に出来ていなかったけれど、表情からそれが伝わってくる。
ったく、見てるこっちが照れてくるくらいだ。





!」

「え?結人もなんかあんの?」

「俺も喜んでもらえた!別に何かイベントごとがあったわけじゃないけど、小岩のプレゼントの話聞いてたら、何かあげたくなっちゃってさあ。」

「へー。」

「もうやばい!やばいって!感動して俯いて顔が真っ赤になっちゃって!また俺ら一歩前進!うひょう!!」

「へー、よかったね。」

「な!よかったよかったよかったー!やっべ、俺今超しあわせ!」





小岩とは対照的に、照れた様子もなく、結人の高すぎるテンションでの報告が始まった。
の反応は小岩に対するものと明らかに違うけれど、結人はそんなこと全然気にしてないみたいだ。
よっぽど彼女の反応が嬉しかったらしい。





「「はっ」」





そしてそこに揃って聞こえてきた声に、俺はひんやりと冷たいものを感じた。
俺は最近、この威圧感とも圧迫感とも言えるような、重苦しい空気を感じたばかりだ。





「な、なんだよ二人とも・・・!今鼻で笑った?」

「特に何もないのにプレゼントとか、後ろめたいことがあるとか思われてなきゃいいね。」

「俯いてたのが、実は不安にさせてたとかじゃなければいいね。」

「なっ・・・!?」

「一人で舞い上がって勘違いしてるだけだったりしてね。」

「彼女が無理して笑って見せてただけだったりね。」

「なっ・・・なっ・・・そんなわけあるかあ!な?な?!?」

「さあ?」

「うおおおおお!!まだ時間ある?時間ある?彼女に連絡とってきていい?」

「「「ご自由に。」」」





やっぱり俺は間違っていなかった。
と英士も充分に毒舌だけど、杉原と英士は中から抉りこんできやがる・・・!
言うなれば外側からの堂々とした攻撃か、じわじわと追い詰めるような攻撃か。どっちだって嫌だけど。





「お、お前らさあ・・・からかいすぎだろ?結人、単純なんだから、また一人で落ち込むぞ?」

「だってなんかイラッときたから。」

「小岩くんくらいの謙虚さは持つべきだよね。」





この間はあんなに火花を散らしてたくせに、自分たちのターゲットが変わると協力するのな。
いや、協力し合ってる気はないんだろうけどさ!本っ当、敵に回したくねえよこいつら!





「あはは、やっぱり二人、仲いいね。」

「だよねー。ちょっと妬けちゃうんですけど!」

「「は?」」

「・・・どこをどう見てそう言えるわけ?」

「そうだよ。僕はともかく、郭くんにその気がないみたいだからなあ。」

「人のせいにしないでくれる?」

「はは、相変わらず冷たいなあ。」





風祭だけじゃなく、ついにまで同じことを言い出した。
え?じゃあやっぱり俺が間違ってたの?こいつら、こんなドス黒いオーラ出して話しながら、実は仲いいの?
どこをどう見たってそんな風には見えないんですけど。二人が揃うと、俺、ハラハラして仕方ないんですけど。





「ていうか・・・似たもの同士だよなあ。」

「それだ!」





小岩がポツリと呟いた一言が、やけにしっくりと来て、思わず同意の声を出してしまった。
そうか。そうだったんだ。こいつら性格が似てるんだ。
妙な威圧感とか、マイペースなところとか、誰かを罵ってへこませて楽しんでるところとか。





「一馬・・・?」

「あ、え、英士・・・。」

「なに今の。一馬の目に俺はどう映ってるのかな?」

「え?いや、別に・・・」

「別にってことはないでしょ。」

「ほ、ほら、に聞けばいいじゃん。俺、口下手だからうまく説明できねえよ!」

「はい!俺はどんな英士でも大好きです!」

「答えになってねえ!!」





こうなると思ってたから、傍観に徹してたのに・・・!
結局巻き込まれて、胃を痛めることになりそうだ。

相変わらずの笑顔で俺らを見ている風祭は、どうせ皆仲がいいなあなんて思ってるんだろう。
くそう、俺も欲しい。こいつら皆、笑ってスルー出来るくらいの精神力と余裕が欲しい。





「ねえ、一馬の話も聞かせてもらおうか?」





英士の後ろで同じように笑みを浮かべる杉原と、状況がわかってて面白そうにしてる



だから、俺が欲しいのはそういう黒い笑顔じゃないんだってば!








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