「この間の正月、母親の実家に行ったんだけどさ。」

「うん。」

「毎年行ってるけど、年々疲れが増していってる気がする。」

「なんで?お年玉もらえるし、両親もなんでか甘くなるし、結構やりたい放題出来て俺は楽しいけどなー。」

「うーん、そういうのはともかくとして、親戚の集まり?」

「へ?」

「うちの親戚、女の割合が圧倒的に多いんだよ。」

「「あーあーあー。わかるー。」」

「え?俺わからん。どういうこと?」

「女家族が多いと、俺らって格好のイジリ対象になるんだよ。」

「特に俺らより年上な!」

「えー楽しいじゃん!俺は逆に親戚の集まりで男ばっかりだとテンション下がるけど。」

「バカじゃないの若菜!そんなあまっちょろいもんじゃないっつの!」

「親戚にそんな怯えるって、桜庭と上原が弱っちいだけじゃねえの?」

「ちがーう!だって考えてもみろよ。俺の小さい頃も弱みも知ってて、あの頃は『おねえちゃんだいすきー』って言ってたとか、いつまでおねしょしてたとか、野菜が食べられなくて泣いてたとか、昔の恥を掘り返されて笑われるんだぞ!」

「そうだよ!夜お化け怖がって一緒に寝てたけど、もう一人で眠れるようになった?とか、隠れて虫収集してそれをプレゼントするつもりだったらしいけどマジいらなかったわーとか爆笑されながら言われる俺の気持ちがわかるか!」

「い、いや、可愛いじゃん。小さな頃の可愛い思い出じゃん。」

「可愛くねえよ!しかも会うたびにそのことが話題になってるんだぞ!」

「わかる!わかるよ桜庭!」

「・・・俺も、その気持ちわかる気がする。」

「真田?」

「俺は親戚っていうか、本物の姉ちゃんのことだけど。」

「・・・・・・お前も苦労してるんだよな。とっつきづらい奴とか思っててごめんな?」

「俺そんな風に思われてたの!?」

は?お前も姉ちゃんいるんだろ?」

「俺?俺は問題ないかなー。俺と姉ちゃん、ノリ同じだもん。」

「あー、ぽいぽい。結構強烈だよなの姉ちゃん。」

「親戚は?親戚の姉ちゃんとかに『くんおっきくなったねーあの頃はこんなに小さくて可愛かったのにー』とか言われたら?」

「失礼ねー今も可愛いでしょ?」

「「・・・。」」

と比べるのがそもそもの間違いなんじゃない?」

「確かに。」

「俺らももっと器用に生きたいよな・・・。」









「あとさー、俺より年下の姪っ子とか従姉妹が、他の姉ちゃんたちに影響されて、俺の扱いがぞんざいになっていくのも嫌。」

「わかる。超わかる。」

「昔はあんなに懐いてたのにさ。伯母さんや姉ちゃんたちを見て学んじゃうんだよな・・・。あ、この人からかっていい人だ、みたいな。

「泣ける。」

「やべえ、俺全然わかんねえ。」

「実際、俺は親戚のことでお前らにも迷惑かけたしな・・・。」

「ああ、あの子あれからどう?元気?」

「相変わらず我侭し放題。いつになったら大人になってくれるかなー。」

「桜庭がちょっと頑張れば、大体解決すると思うよ?」

「いやー無理っしょー。」

「「「・・・・・・。」」」

とかはあれだろ。年下から憧れられるタイプだろ?」

「どうだろ。遊ぶときに馬役とか敵役とかやらされるけど。」

「あーそれ大好きだわ。親戚のお兄ちゃん大好きになるパターンだわ。」

「郭とかそういうのないの?」

「特には。うちの集まりは割と落ち着いてるし。」

「えー潤慶とかいるじゃん。」

「あいつは別。そもそもちょっとペース乱されたくらいで慌てるから悪いんでしょ。もっと余裕持てば?どうでもいいけど。」

「本当に郭はあれだな。俺らに対して適当だよな。」









「そういや、年上の女性の扱いって言ったらさ。」

「呼んだ?」

「おわ!鳴海!!」

「おお鳴海、全然呼んでない。」

「なんだよ!アドバイスしてやるのに!!」

「話聞いてたのか。でも呼んでない。

「暑苦しいから帰れば。」

「ドヤ顔で入ってこられてもなあ。そんな期待は出来ないっていうか。」

「なにこれいじめ!?」

「で、話戻すと、年上の扱いは水野がうまいらしいよ。」

「俺の存在本当に無視して話進めやがった。」

「ごめんな鳴海。これがあいつらの通常運転。

「メンタル強くなるよな。」

「辛抱強くなる。」

「多少のことに動じなくなる。」

「うん、今のお前ら見てたら、すごくよくわかるわ。」









「水野?俺らの扱いはびっくりするほど下手な水野が?」

「お前、本人いないところで悪口はよせよ。」

「悪口じゃねえよ。愛だよ。」

「うわあ。」

「うわあ。」

「・・・・・・。」

「やめて!引かないで!離れていかないで!」

「水野の家族って女性ばっかりなんだって。風祭が言ってた。」

「えー!羨ましい!」

「お母さんもお姉さんかと思うくらい若いって。絶対美形一家だよな。」

「羨ましい!!」

「おばあちゃんと、母親の妹と姉さんが同居してるって言ってた。」

「「羨ましい!!」」

「うるさいそこの単細胞たち。」

「「ひどい!!」」

「あいつも家ではパシリにされたりしてんのかな。」

「そんな雰囲気ないけど・・・。」

「でも扱いうまいんだったら、パシリはしないだろー。むしろ美人なお姉さま方に可愛がられているという・・・」

「なにそれ!俺も可愛がられてえ!!」

「いや、お姉さま方の言うことをすべて聞いて、パシリをすることでなんとか平和に暮らしているという方向も考えられるぞ?」

「それはそれで面白いな!家では一番立場の弱い水野!」

「ふはっ!」

「普段あんなに偉そうなのに!」

「「「あはははは!!」」」

「随分楽しそうだな?」

「「「!!」」」









「水野って女系家族に囲まれて、大変なんだろうなって話。」

「お前ら暇だな・・・。家族なんだし、大変も何ももう慣れたよ。」

「お前もパシリとかさせられんの?」

「まあ頼まれたことは普通にするけど。パシリっていうのとは違うんじゃないか?」

「だって都合のいいようにこきつかわれねえの?」

「そもそも男性と女性は違うんだし、力仕事や体力的にきついことは当然俺がするよ。買い物ひとつにしたって、やっぱり一人だとつらかったりするし、夜なんかは危険だからな。って、何お前ら驚いた顔してるんだよ。」

「(水野が・・・!かっこいい・・・!!)」

「(まさかの事態!!)」

「(イケメンで紳士とかやめろよ!お前は残念なイケメンでいてくれよ!!)」

「なんて言いつつ、実際は逆らえないってのが本音だったりしない?たっちゃん?」

「なっ!なんでその呼び方・・・!!」

「えへ!」

「えへじゃなくて!誰に聞いた!?風祭か?シゲか!?」

「てへ!」

「てへでもない!くそ、なんでお前はおかしな情報ばっかり持ってるんだよ!!」

「なんだよびびった。お前も格好つけてただけかよ、たっちゃん。」

「危うく騙されるところだったぜ、たっちゃん。」

「今度お姉さまたちに会わせてね、たっちゃん。」

「やめろお前ら!!」













「ていうか、親戚と言ったら、一番近いとこに、椎名と西園寺監督がいるじゃん。はとこなんだろ、あの二人。」

「うん、知ってる。」

「西園寺監督も美人だし、親戚だったら・・・って、うおあああ!!」

「なにっ・・・って、ぐはっ!!」

「水野おおおおお!!!サ、サッカーボール!?どこから・・・」

「あーあー、ばっかだなあ。」

「え?ちょ、何が?」

「知らないのか?西園寺監督に対して下世話な話をしようものなら、どこからともなく制裁が降ってくるんだ。

「なにそれ!?」

「それはスパイクだったり、サッカーボールだったり、拳だったり蹴りだったり・・・」

「後半ただの直接攻撃じゃねえか。」

「どこの誰がそんなことをしているのか、そもそもそれは人の仕業であるのかすべてが謎だが、俺らはそれをウィングハンマーと呼んで恐れている!

「呼び名で犯人ほぼ確定してねえ!?」

「恐ろしいところは、こうしてほとんど関係のない周りの人間にまで被害が及ぶということだ!!」

「本当だよ。水野全然関係ないのに攻撃くらってるし。」

「だって、水野だもの。」

「それなら仕方ない。」

「そうだな。」

「おい・・・!!」

「これ以上続けるのは危険だ・・・。お前ら!それでも話を続ける覚悟はあるか!」

「「「イエッサー!!」」」

「いや、普通にもうやめとけよ。」

「大丈夫、水野と一馬がいるし。」

「・・・え?それってどういう・・・」

「勝手に巻き込まれて盾になってくれるから!!」

「「おい。」」











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