「そういや、あのお嬢様と手紙のやり取りしてるんだって?」
「お嬢様?ああ、してるしてる。」
「お嬢様って誰だ?」
「ほら、山口くんにストーカーまがいのことしてたあの子。」
「ああ・・・婚姻届持ってきてた子か!」
「いやーあの頃の彼女は若かったよなあ。今もテンション高いけどな。相変わらずの上から目線だし!」
「よくそんな女と文通なんてできるね。」
「だって面白いんだもん。っても、まだ数回だけどね。」
「どういう話してんの?」
「学校のこととか、選抜のこととか。」
「へー。」
「この店の服がいいとか。」
「ふんふん。」
「美味しいスイーツの店とか。」
「話題が女子っぽくねえ?」
「肌に合う化粧品の話とか。」
「女子か。」
「圭介くんの魅力についてとか。」
「女子か!!」「!お前大丈夫!?あの一件で女装に目覚めたの!?」
「えーそりゃ俺自身も可愛かったとは思うけど、
そんな、一馬じゃあるまいし。」
「俺が目覚めてるみたいに言うな!!」
「じゃあなんで化粧品の話までしてんだよ!?」
「彼女、俺のりんごちゃん姿を見てるじゃん?あんなんじゃ甘いって言われちゃってさー。
で、話を聞いてたら、メイクって奥が深いんだよなあ。ナチュラルメイクとすっぴんは違うとか。
簡単に見えて一朝一夕でいかないっていうか。どんどん進化していくっていうか?」
「あーそれわかるわかる!」
「そう思うと、化粧に一生懸命な女子って、一層可愛く思えてくるよな・・・。」
「そうなんだよ!お前らもわかるよな!?」
「わからない。ていうか、別にわかる気もない。」
「(だからこの前、化粧について熱く語ってたのか・・・)」
「もーお前らは!女心ってもんがわかってねえんだから!」
「「結人に言われたくない。」」
「なっ・・・なんだと!?」
「でもやっぱり一番盛り上がるのは圭介くんの話だけどな!」
「彼女、山口くんのことは諦めたんじゃなかったのか?」
「まーそうだけど、好き以前に憧れもあるからな。」
「どんな話するの?」
「圭介くんってお人よしで他人にコロッと騙されそうだよね、とか。」
「それ憧れてんの?」
「この間、地元のサッカー誌に圭介くん載ってたんだー、とか。」
「ファンか。」
「山口くんって天然だよね、かーわーいーいーとか。」
「女子か。」
「でも試合になると人が変わるよね。そのギャップがたまんないよねーとか。」
「女子かあああ!!」
「うおおお!が!俺の師匠が女子化していく!」
「ゆ、結人!落ち着け!」
「お前のせいだぞ一馬!お前が女装なんかするから!」
「誰がさせたんだよ!?」
「何言ってんだ結人。女子の気持ちを理解することが、良い男への第一歩だぞ?
女子に近づいていくことはすなわち、男をあげるってことなんだ!」
「はっ・・・なるほど・・・!」
「なるほどじゃねえし!言いくるめられんな結人!」
「じゃあ女装の得意な一馬は俺よりも・・・」
「そう!女の子の気持ちがわかる!」
「ふざけんな!全然わかんねえよ!!」
「「だよねー。」」
「お、お前らっ・・・」
「。」
「ん?」
「お人よしは山口くんだけ?」
「英士?」
「結果的に騙して引きずり出したあの子のこと、気にしてたんでしょ。」
「・・・。」
「心配だったんじゃないの?彼女のこと。」
「買いかぶりすぎ。俺はただ、楽しいから返事を書いてるだけ。」
「ふーん。じゃあ、そういうことにしとく。」
「おう。そういうことにしといて。」
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