「さーてお集まりいただいたのは、東京選抜モテ代表の皆さんでーす!」

「何これ?こんなくだらないことにつきあってるほど暇じゃないんだけど。」

「・・・結人。何してるの。」

「なんで俺、こんなことに巻き込まれてるんだ?」





あ、若菜がまた妙なこと始めてる。
いつもは隣にがいることが多いけど、そういえば今日は休みだったっけ。





「集まってもらったのは他でもない!こちら、谷口くんの質問に答えてもらおうと思って!」

「どうも!谷口です!」

「どうもじゃないよ。なんで何の義理も関係もない俺が集められてるわけ?
遊びたいんだったら別の場所で、別のメンバーで遊んでなよ。」

「・・・。」

「質問ってなんだよ。なんでこんな大げさなことになってるんだ?」





帰ろうとする椎名と郭を、若菜と真田がなんとか引き止めてる。
・・・真田、また巻き込まれてんのか可哀想に。
水野にいたっては未だ状況を飲み込めていないようだ。
ていうか一番真面目な反応してるのに、誰も質問に答えてやってないし。答えてやれよ!





「前ににいい男を目指すアドバイスはもらったんだけどさ。
なかなかうまくいかなくて・・・モテるお前らはどういう人間なのか、ちょっと見せてもらおうかなって!へへっ。」

「なに?どういうこと?女にキャーキャー言われたいから、その方法を探してるってこと?
バカじゃないの。人間すべてが同じわけがないんだから、いいところも悪いところもあるだろ。
好かれる要因なんていくらだってあるし、嫌われる要因も同じ。そうやって誰かに頼って方法を探してる時点で見込みないけどね。」

「はっ。」

「そんなこと言われても、俺、別に特別なことは何も・・・。」





そういえば前に、みたいになりたいって相談してたな、谷口。
それで結局、モテる人種とは違った視点から入れって結論になったと思ったけど。
行き詰って、なぜか若菜を巻き込んで、本人たちに聞いてみることにでもしたのだろうか。

それにしても、全員一蹴してるな。郭にいたっては鼻で笑って終わりだし。予想どおりすぎて驚かないけど。





「まあまあそう言うなよ。俺が教えてもよかったんだけど、可愛い彼女がいる身だし?
俺は彼女一人に好かれればいいからなー。大多数向けのモテってなるとちょっと違うかな〜みたいな?」

「若菜の場合、彼女がいるからモテないっていうのとは違うと思うけどね。
若菜みたいな奴と彼女はよく付き合ってるって尊敬するよ。こんな調子がよくて気分屋で相手の迷惑考えない奴なんてさ。」

「結人は基本的にアホだからモテないってが言ってたよ。」

「うん・・・まあ・・・」

「なに?なんなのお前ら!?誰かをけなすことしか出来ないの!?俺だって人間よ?傷つくのよ!?」





ていうか、若菜も谷口もさ・・・、明らかに・・・





「何言ってるの?俺は質問に素直に答えてるだけだよ。暇なんてないのに、どうしてもって止めるから。
お互いをたいして知らない俺に聞くことじゃないし、聞いたところで素直にそれを実行するの?できるの?
誰かに好かれたいって思うなら、理屈よりも前に自分なりに行動で示しなよ。」

「やっぱりどうでもいいから俺帰るよ。」

「俺も・・・騒がれたいと思って騒がれてるわけじゃないしな・・・。」

「もー!お前らはせめて一人でも真面目に答えてくれよ!あと椎名、すべてに置いて話がなげえ!!

「話が長くなっちゃうのも仕方がないんじゃない?それくらいくだらなくて、ツッコミどころが満載だったってことだろ。
その辺指摘しただけでもありがたいと思ってほしいけど?」

「どうでもいいことに真面目に答えるメリットがない。」

「う・・・うっ・・・俺もう立ち直れないかもしれねえ・・・なんでこんな人でなしばっかり集めたんだよ若菜。
せめて東京都選抜の良心、渋沢を呼んでくれれば・・・!

「だってちょうどその辺歩いてただけだし・・・」

「そんな理由!?」

「ちょ、ちょっと待て!俺は真面目に答えてるぞ!?」

「正直、水野の答えが一番イラッときた。」

「うん。」

「!?」





そう。人選ミスだと思う。
このメンバーで優しい言葉を期待したってダメに決まってんじゃん。
も毒舌ではっきり言うけど、こいつらと比べたら割と優しいのかも。

















それから次の選抜練習で、谷口が神妙な顔でに何かを話していた。
おそらくこの間こてんぱんにされたから、その相談の続きだろうか。





「それでな、俺は思ったんだよ!あいつらは共通して性格が悪い!
良い言い方をすればクール!、前に言ってたよな。大人っぽい奴がモテやすいって!」

「あー、うん。そうね。」

「だから俺はそこから学んで、まずはクラスの女子たちにクールに振舞ってみた。
何か話しかけられても、あえてちょっと冷たくしたりな。」

「なるほどね。」

「でも!でもだよ!そしたら、谷口最近むかつくとかいらつくとか言われたんだよ!どういうことだよ!」

「谷口くん谷口くん。」

「なんだよ!?」

「『ただし、イケメンに限る』って、知ってる?」





暑苦しいテンションの谷口に対し、 が落ち着いて冷静な分、その言葉は、より一層重みを増した。
その後の谷口の悲壮感漂う表情は、見ている俺すらも同情させた。





「・・・うっ・・・ううっ・・・うおおおおお!!!」

「だから目指す方向性が違うって言ったのに。欲を出すからー。」

「お、俺はこれからどうすれば・・・」

「えー、またそこから始まんの?」

「だって・・・」

「いいか?谷口。」

「なに・・・」

「お前はな、お前のままで、いいんだ。」

「っ・・・ー!!」

「ギャー!!」





なあ。一見いいこと言ってるように見えるけど、お前の面倒くさそうな顔、俺、見逃してないからな。
結局谷口が何も変わらずに、今のままでいたら進展は何もないよな?お前それわかってて言ってるよな?

・・・なんてことはもちろん言わない。

そんなこと言ったらさらに面倒なことになるから、なんて思っていたのに。
俺の考えを見透かすかのように、ちょうど目があったは楽しそうに笑顔を浮かべ、
抱きつかれた谷口を引きずって、意気揚々とこちらへ向かってくる。

・・・結局俺が巻き込まれるのは、どうやっても回避できないようだ。





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