「リョーイチ。貴方に何か届いてたわよ。」

「俺に?」

「日本からみたいだったけれど。」

「・・・なんだろう。CD?・・・差出人は・・・アイツか。」

「アイツ?」

「前に話した東京都選抜のチームメイトなんだ。」

「あら、お友達からね。見てみたら?」

「そうする。」





母親に促され、送られてきたCDを持って部屋に向かう。
パソコンにCDをセットすると、1つの動画ファイルがはいっていた。
俺はそれをクリックして、再生する。





『せーのっ』

『『『天城、誕生日おめでとー!!』』』

『元気してるかー?』

『そっちの生活はどうだ?』

『可愛い妹を俺にもく・・・ごはっ!!』

『やめろそこの変態!そんなこと言ったら天城、このビデオ切っちゃうかもしんないだろ?!』

『が、がはっ・・・お前止めるにしてもみぞおちって・・・!』

『変態はほっといて、おめでとう天城!
お前がドイツに行っちゃって寂しいけど、俺たちはこうして今日も元気です!見ての通り!』





相変わらずの高いテンションに思わず笑ってしまった。
俺が選抜にいた頃にはあまり話したことがない奴もいる。
大方、アイツ・・・がどうせなら大勢でとか言って誘ったんだろう。
まあ、それが嬉しくないわけではないけれど。





『そういえば天城、日本ではポッキー&プリッツの日っていうのが出来たんだぞ?知らないだろ?』

『11月11日だからなんだって!こじつけ?とも俺は思っちゃったけど!』

『だからどうしたって顔してんだろどーせ。しかし聞いて驚け?この日は裏ゲームの日と言われているんだ。』





何をくだらないことを・・・と思ったけれど、奴らの真剣な表情に思わず構えてしまった。裏ゲーム・・・?





『ポッキーゲームって知ってる?あの合コンとかでポッキーを端と端から食べていくやつ。』

『11月11日にたとえば誕生パーティとかやるじゃん?そしたら合コン関係なくポッキーゲームやろうって流れになるんだよ。』

『何が危ないってそのパーティは合コンとか言ってるわけじゃないから、普通に出会いを求めてるわけじゃない奴も参加しちゃうんだよ。』

『そこに目をつけた危ない男たちが、子羊たちを狙っている・・・!』





・・・奴らが何を言いたいのかがさっぱりわからない。
しかしやっぱりすごく真剣な顔をしてるので、聞かざるを得ないだろう。





『そして俺たちは情報をゲットしてしまった・・・!』

『なんの情報かって?お前の彼女のクラスにお前と同じ誕生日、すなわち11月11日生まれの男がいる・・・!』

『裏ゲームの日はまだほとんど知られていないが・・・高校男子の間では結構有名になりつつある話!』

『お前の彼女、交友関係広いんだろ?もしかしたら・・・』





ブツッ





小さく音をたてて、ビデオはそこで切れた。





「・・・。」





俺は暫しかたまって沈黙する。
そして、とりあえず思考を再開する。

俺の彼女がと同じ高校に通っていることは知っている。
クラスは違うから他のクラスの誕生日の情報なんて知ることもないように思えるが、
なにしろの交友関係はかなりの広さだ。そんなことまで知っていてもおかしくはない。
しかし、なんだその裏ゲームって。日本はいつからそんな危ない国になったんだ。

いやでもアイツのことだから俺をからかってるのかもしれない。
そもそも彼女はそんなのにひっかかったり・・・ひっかかったり・・・しないとも言い切れないが。
しっかりしてるようで案外抜けてるところあるしな・・・。





「・・・。」





俺は数分考えて、受話器を持った。今こっちは昼・・・時間的にもまあ大丈夫だろう。







***







「まさかあそこでビデオのバッテリーが切れるとは思わなかったよなー。」

「『嘘デース!』って皆でポーズして終わりのはずだったのにな!」

「まあまた買うのもめんどかったし、ああいうぐだぐだ感も俺らっぽくね?」

「そうそう、おもしろきゃいーよ!」

「でもまさか天城、信じてないよな。ポッキー&プリッツの日で裏ゲームなんて。」

「まっさかー!いくら天城が鈍いっつってもなー。」

「「「あっはっはっは!」」」

「あ、メール。・・・天城からだ!」

「おお!タイムリー!」

「喜んでるか?」

「・・・。」

「どうしたんだよ?」

「・・・彼女に笑われたって怒ってるんだけど。」

「「「・・・。」」」

「天城あれ信じたのかよ!!しかも彼女に確認済み?!何この子、どこまで純粋?!」

「あんな顔して!」

「あんなガタイして!」

「両方純粋と関係ねーよ。」

「どうしよう、アイツ怒ったら絶対怖いぜ!どうすんだよ!」

「ははっ。大丈夫だよ。」

「何で?」

「最後に、『でも、ありがとう』って書いてある。」

「「「・・・。」」」





「意外と可愛い奴だなアイツ。」

「あんな顔して。」

「あんなガタイして。」

「・・・。」

「とりあえず、騙してすみませんでした動画でも作って送ってやるか!またサプライズ込みで!」

「「「おーっ!」」」






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天城は一度仲良くなってしまえば可愛くて仕方なくなると思います。
愛を持って友達にからかわれてればいいよ。
しかし成長してくると、天城はそんなアホみたいな悪戯も軽く受け流せるようになります。男前!

お誕生日おめでとう!
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