「今日は我らが郭英士くんの誕生日だ!わかってるか野郎ども!」

「おう!!」

「・・・お、おう。」

「声がちいさい!特にそこのリンゴちゃん!」

「リンゴちゃん!」

「だ、誰がリンゴちゃんだ!って、何でこんなに張り切ってんだよお前らは!!」

「なんだお前おれよりも長く英士と一緒にいるのに誕生日を祝おうという気はないというわけだなんという友達甲斐のないやつなんだ英士にリンゴジュースおごってもらったこともあるくせにそれにリンゴヨーグルトをもらったこともあるくせにそんな恩も忘れて誕生日を祝う気なんてさらさらないとお前は「なげーーーよ!!どんだけ張り切ってんだお前は!!」

「リンゴちゃんはリンゴの恩なんか忘れてんだな。リンゴの絆もすぐに忘れちまうんだな・・・」

「何おまえら?!リンゴにとり憑かれてんの?!」

「いや俺らは昨日、お前の筆箱からリンゴのシャーペンが出てきたことに驚いたわけじゃないよ?」

「いくらリンゴ好きでも、まさかお前がリンゴキャラのシャーペンを使うメルヘンさんだったなんて思ってないよ?」

「え・・・!?ええ?!いや、あれは違っ・・・!姉ちゃんのシャーペンが混ざっ」

「よし、それじゃあ英士の誕生日、準備はいいか?!」

「おう!バッチリだぜ!」

「・・・。」

「返事がないぞリンゴちゃん!ちゃんと気合入れないとお前の嫁のリンゴシャーペンが人質になるぞ!

「頼むからもうリンゴから離れてくれ!!」





新年の慌しさも落ち着いた頃にやってくる、今日1月25日は英士の誕生日。
男友達で誕生日を祝いあうなんてあまりないことだし、祝ったとしても一緒に飯を食うとかごく簡単なものが多い。
今まで俺と結人と英士ではそんなものだった。お互い祝いの言葉くらいは伝えていたけれど、
こんなにも気合を入れた誕生日会などしたことがない。それが今回はなぜ違うのか。答えは簡単だ。





!英士きたきた!」

「よし、1階へ急げー!!」





同じ東京都選抜のチームメイト、がいるからだ。
ノリのいい性格の結人と組んで、英士の誕生日を盛大に祝って驚かせてやろうということらしい。
1月に入ってから英士を除いた俺ら3人は何度か連絡を取り合って、この日に何をするかということを決めていた。

何をするかも何もの家で集まって、英士の誕生日を祝って騒ぐということでしかないのだけれど。
今までこうあらたまってお祝いなんてしたことはなかったから、さすがの英士も驚くかもしれないな。



と結人が階段を駆け下りて、その後に俺も続く。
玄関の扉の前に着くと、それと同時くらいに来客を知らせるチャイムが鳴った。
が一旦インターホンを取りにいき、入ってきていいよと伝えるとゆっくりとこちらへと近づく足音が鳴った。
そしてガチャリ、と扉が開く。





パンッ



ガスッ



パァンッ!!





扉が開くと同時に俺たちは準備していたクラッカーの紐を引いた。
勢い良く大きな音が弾け、中からは色とりどりのリボンが飛び出し英士を包んだ。・・・一部を除いて。





「ちょ、俺のしけってるんですけど!!」

「結人!何やってんの!バカじゃないのー?!」

「え?!これ俺のせい?!俺のせいなの?!」

「あ、違う!つっこんでる場合じゃなかった!英士、誕生日おめでとー!!」

「あ!そうだった!誕生日おめでとー!!」

「お、おめでとう!」

「・・・。」





結人のクラッカーがしけっていたせいで、なんかすごいグダグダ感に包まれた。
そんな俺たちを英士が無表情のまま見つめていた。





「・・・どうも。」





そう一言だけ言うと、あがっていい?と聞かれが頷いた。
あれ?これって喜んでんのか?それとも呆れてんのか?呆れてるよな確実に!





「結人がしけってるから!ぐだぐだになっちゃったじゃんか!バカ!」

「ちょ、いや、俺のせいじゃないよな?!ていうか俺がしけってるわけじゃないからね?!

「仕方ない!次行くぞ!俺についてこい!」

「おう!行くぞ一馬!」

「・・・おう。」





立ち直りが早いのはこいつらの長所だろう。・・・長所?うん、長所だよな?
英士はいつもの家にきていたときのように、2階にあるの部屋に行こうとしていたけれど
そっちではなくこっちだと、リビングの方へ英士を引っ張っていく。
そしてリビングのソファの上にはみっつの包みが並べられている。俺らが英士にそれぞれ用意したプレゼントだ。





「ここに包みがみっつ!」

「うん。」

「俺らそれぞれ考えて英士にプレゼント持ってきたー!」

「・・・どうしたの?今年は凝ってるね、ただの誕生日なのに。」

「ただのとはなんですか!英士くんが生まれた日ですよ!盛大に祝わなきゃな!」

「ああ、が発案?」

「ちょ、おまえ、それに気づいても言うなよー。照れんだろ?」

「別に照れるとこじゃないよねそこ。」





相変わらず英士の表情は変わらない。うーん、長くつきあってきてるけど読めないな。
そして英士はに促されるまま、並べられた3つの包みをひとつずつ開いていく。





「・・・漫画?」

「あ、それ俺!熱血くんシリーズに出てくる釣りバカ!フィッシャーくんの短編集!」

「・・・なにそれ。」

がさ、英士に熱血くん読ませたら面白そうな顔してたっつーから!英士、釣り好きだろ?ちょうどいいと思って!」

「・・・誰が面白そうな顔?」

「ええ!英士あの表情は面白かったんじゃないの?!俺はすごく面白かったんだけど!!」

「それの感想だよね。」

「まあいいじゃん!フィッシャーくん目指せよ英士!」

「ははは、ふざけるなよ?」

「「こわいこわいこわい!」」








「・・・次は、なにこれ。キムチ?」

「それは俺!英士の好きな食べ物と言えばキムチだろ?!」

「ふーん。まあ好きだけど、食事で出されるとかはともかくプレゼントにする人はじめて見た。」

「まあまあ食べて食べて!今食べてみて!」

「は?」

「いいから食べてくれよ!俺と英士の仲だろ?!」

「意味がわからないけど、はあ、仕方ないな。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・・・・・・ゴホッ、ゴホッゴホッ・・・!」

「はいキター!!どう?どうだった英士?!」

「・・・あまい。」

「そうです!キムチに見せかけたお菓子でした!ちょう甘いビックリキムチ!どう?サプラーイズ!!」

「俺にケンカ売ってるという解釈でいい?」

「ええ?!何?!何でそういう解釈になるの?!ツンデレにもほどがある!!」








「・・・なんかもう開けたくないんだけど。」

「なんでよ!俺たちの愛がこんなにこもってるのに!」

「・・・一馬は変なもの入れてないだろうね?」

「あ、当たり前だろ?!」

「「ちょ、それ俺たちにすごく失礼!」」

「・・・あ、本当だ。普通。」

「一馬はなんにしたんだ?あ、手帳!」

「いや、前に英士が結構使うみたいなこと言ってたから・・・。今年はまだ持ってなかったみたいだし。」

「・・・。」

「ちょっと待って待って!何一馬!なに一人で株あげてんだよこのやろう!!」

「なんで俺たちがネタにしたのに、お前一人まじめに買ってんだよこのやろう!!お前はオチ担当だろうが!!

いつからそんな担当になったんだ!た、誕生日なんだから真面目に物買うのは当たり前だろ?!」

「これだからリンゴちゃんは・・・!」

「リンゴシャーペンは・・・!」

「今それ関係ねえだろ?!」

「どうでもいいけど人の誕生日でネタ勝負しないでくれる?」

「ち、違うからな英士!別にネタ勝負のためにネタにしたわけじゃないぞ?!」

「そんな必死に否定しなくていいんだけど。」

「俺がまともに英士にプレゼント買ったら、素敵すぎて英士が俺に惚れちゃうかもしれないだろ?
俺はお前とはずっと友達でいた「天地がひっくり返ってもありえないから安心して?」





英士がニッコリと笑みを浮かべた。が、こわい。目が笑ってない。こわい。
結人もそれに気づいてひきつった笑いを浮かべているけれど、はまだ何か愛について語ってる。
本当お前大丈夫かいろんな意味で。









「あー、もうあんまりびっくりさせられなかったな!しけた結人から!!

だから略すな!俺はしけてねえ!!一馬が空気読めてないのだって悪いじゃんか!」

「俺は普通だ!お前らが張り切りすぎなんだよ!」

「張り切りすぎて空回ってたよね。」

「祝われた側が言うこと?!」





そんな風に笑いながら、俺たちはいつも通りにの部屋へ向かった。
、結人、俺の順で部屋に入り、英士がそこに入る前に俺たちは一斉に英士の方へと振り向く。





「なに、どうし・・・」





パンッ



パンッ!!



パァンッ!!





そして、今日二度目の音。
今度は途中で途切れることもなく、全ての音がリズムよく鳴った。





「誕生日おめでとう!!」

「こっちが本当の祝いセットでしたー!!」

「ケーキも肉もキムチも野菜サラダも何でもあるから、じゃんじゃん食え!!」





プレゼントの後で食べようと用意していたご馳走がズラリと並ぶ。
それは2段構えで用意していた俺たちのもうひとつのプレゼント。

先ほどまでほとんど表情の変わらなかった英士のポカンとした顔。
俺たちはしてやったりなちょっと意地の悪い笑み。





「・・・本当、張り切りすぎだよね。」





かたまっていた英士の表情が緩んだ。そしてそれはすぐに、





「ありがとう。」





小さく吹き出して、呆れたような笑顔に変わった。



















「ちょっとどうしよう、俺、なんかドキドキしてきたんだけど。」

「無表情のなかなか笑わない女の子を笑わせたような、そんなときめきを覚えるよな・・・!」

「そこの変態二人。いい加減にしないと口にこの激甘キムチつっこむよ。」

「そ、それは英士にあげたもの・・・」

「サプライズを期待してたんでしょ?それじゃあ逆サプライズで。」

「「ギャーーー!!」」














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英士はなんだかんだで友達に愛され、愛してると思います。
はたから見るとわかりにくい友情!しかしそれがまたいい!
新年から友達に囲まれてわかりにくく喜んでる英士を想像するとにまにましてきます。

お誕生日おめでとう!
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