謙虚少年、傲慢少女









さん、ちょっといいかな?」

「いいけど、告白だったらお断りです。」

「・・・え・・・?」





授業が終わり、突然俺らのクラスにやってきたのは
うちの学校でも1、2位を争うんじゃないかってくらいのモテ男。
丁度ドアの近くにいた目的の人物に声をかける。





「あ、違った?なら何の用?」

「え、いや・・・あの・・・」





目的の人物、はソイツの用など見透かしたかのように鋭く答えを返す。
声かけられて「告白だったらお断り」だなんて俺も言ってみてえっつの。
けれど彼女はまさにそれが日常茶飯事だから、その台詞が勘違いってことは少ない。
まあ今回のは呼び出し方といい、雰囲気といい、いかにも告白ですって感じはしてるけど。





「・・・告白・・・だったんだけど・・・。」

「じゃあやっぱりお断り。私、彼氏いるもん。」





クラスはざわついているけれど、皆、二人の方に意識を集中してるのがバレバレだ。
かくゆう俺もその二人が気になって仕方ないのだけど、まあそれは仕方ない。





「知ってるよ、上原だろ?」

「知ってるのに告白しようとしたの?すっごい勇気あるね。」

「いや、だから・・・俺のこと少しでも知ってもらおうと・・・」

「知るのはともかく好きになることはないと思うよ?」

「な、何で・・・!」

「だから私が好きなのは淳なんだってば。」





クラス中の視線とに告白したソイツの視線が一気に集中する。
そう、告白が日常茶飯事なの彼氏とは俺のことなのだ。





「でも・・・」

「あーもうしつこいな!付き合えません!好きになれません!告白はお断り!じゃあね!」





気の短いはそう言うと、ピシャンと扉を閉めた。
扉の閉まる瞬間、まさかこんな断り方をされるとは思っていなかったモテ男の呆然とした顔が見えた。





「・・・いやー、愛されてるな上原。」

「あのをどうやって落としたんだよお前。」





クラスの奴らが笑いながら言う。
つりあいの取れていないカップルだと言われていることは知ってる。
だから俺という彼氏がいるのに、はしょっちゅう告白なんてされるんだ。
だけどこの平凡な顔は生まれつきだし、自信があるのはサッカーくらいで、大人しくもないが目立つ性格でもない。
他の奴らと何が違うかと言われれば、俺は小さい頃からを知っているいわゆる幼馴染だということだけ。
どうやって落としただなんて聞かれてもわかるはずもない。
少し前にしたへの告白がOKだったことすら驚いたんだからな俺。






















「・・・、あのさー。」

「何?」





家の方向が同じ俺たちは、彼氏彼女になる前から一緒に帰ることが多かった。
その道の途中、あの二人付き合ってるのかとか、どうせ姉弟だろとか、そんな目で見られているのも知っていた。





「変なこと聞くけど・・・。」

「だから何?」

「お前、俺のどこがよかったの?」





がキョトンとした顔をして、こっちを見る。
小さな頃から一緒にいたとはいえ、成長するたびに綺麗になっていったにそんな凝視されると
どうしていいのかわからなくなってしまい俺は思わず視線を背ける。





「本当に変なこと聞くね?」

「だってお前・・・さっきの奴とかの方が俺より明らかにモテてるし、俺、平凡だし。」

「別に人の好みはそれぞれだと思うけど。」





まあそりゃそうなんだけどさ。
俺みたいな平凡な奴は不安になるんだよ!
俺のどこが好きだとか、いつかもっといい男のところに行ってしまうんじゃないかとか。





「あえて言うなら。」

「え?」

「淳がそうやって悩んでくれるところかな?」

「・・・はあ?」





が笑いながら答えるその意味がわからなくて、俺は間抜けな声を返す。





「わたし、我侭だからさ。愛されてるなあっていつも実感してたいんだよね。」

「・・・?」

「淳が私のことで、一喜一憂してるのを見るのが結構好き。」

「・・・ええ?」

「私の外見だけみて告白してくる奴はいっぱいいると思うけど、私を一番知ってるのは淳でしょ?」

「・・・。」

「私も淳のこと、一番知ってるからわかるんだよね。」









がいたずらでも思いついたかのような、無邪気な笑みを向ける。
少し意地の悪いその笑みにも、ドキリと反応する心臓。
ああもう、昔から何回も見てきてる表情なのになー・・・。








「これからも、私を一番好きでいてくれる人を選ぶのは当然でしょ?」








・・・なんつう自信だよ。
ていうかまさにその通りだと思うから何も言えないんだけど。
俺はそこまで自信持っては俺が一番好きなんだろうとか言えないぞ・・・!








「ちなみにこれからも淳を一番好きでいるのは私だから。そこんとこ忘れないよーに。」








そんな俺の考えを見透かしたかのように、平気で恥ずかしい台詞を付け加える。
自信家だし、言葉きついし、俺とは違った非凡なオーラを持つ彼女。
だけどいつだって正直で、まっすぐ。
だからのその言葉は嘘なんかじゃないとわかるんだ。



だって彼女を一番よく知っているのは、俺なんだから。



不安になってもいつだってそう思わせてくれる彼女。
もう少し男らしく、彼女を引っ張ってやれたらいいと思っていたのに
ああ、やっぱり当分は叶いそうにないかもな。







TOP