居眠り少年、世話好き少女 「ー、また横山くんが寝てるんだけどー。」 「・・・何でいつも私に言うの。」 「だって、横山くん係じゃん。」 「誰がそんな面倒な係になるかっての。」 「ははっ!まーまー怒るなって。じゃあ後は任せた!!」 「ちょ、ちょっとー!」 学校の授業が終わり、教室の掃除も終えたこの時間。 教室に残るのはもう誰もいない。 私と、今目の前でぐーすかと寝てるクラスメイト、横山平馬以外は。 「ちょっと横山!もう授業も掃除も終わってるよ?そろそろ起きろっ!」 小学校から何の縁かずっと同じクラスだった横山。 コイツがまわりを気にせず、いつでもマイペースを突っ走る人間だということはもうわかっている。 まさにそれを表わすかのように、コイツは自分の担当である教室の掃除もせずに、午後の授業からずっと眠りこけていたんだから。 このクラスになって、あまりにも眠ってばかりいる横山を起こそうと何人もが声をかけたんだけど 横山はさっぱり起きようとしなくて。横山の扱いを覚えていた私が奴の頭を軽く叩くと目を覚ましたものだから その日から私は不本意のまま横山係と呼ばれてしまっている。 「・・・。」 「起きた?このまま寝てたら風邪ひくよ。」 「・・・これくらいで風邪なんかひくかよ。」 「いや、別にそれはどっちでもいいけど。起きたなら私帰るからね。」 「・・・何で?」 「何でって私もう用ないし。アンタを起こしただけ偉いと思ってよ。」 「あー偉い偉い。・・・おやすみ。」 「そんな心のこもってない褒め言葉はいらないんですけど・・・って寝るなー!!」 一体どれだけ寝れば気がすむのか。 そりゃあ、サッカーのジュニアユースに入っていて練習が大変だっていうのも知ってるけど。 学校でこれだけ寝てたら勉強どころじゃないだろう。むしろ学校に寝にきてるっていうか。 大体もう学校は終わったんだから、こんなところで寝てるよりも家のベッドでゆっくり寝ればいいのに。 「あーもう!私はちゃんと起こしたからね!バカ横山!」 ため息と捨て台詞をはいて、席から立とうとすると 腕に重みを感じ、私は体制を崩す。 「ちょっと、横山ー!」 「・・・。」 横山がそりゃもうしっかりと私の腕を掴んで離してくれない。 こんな奴でも男だし運動もしてるし、女の私がそれを振り切れる力があるはずもない。 「何なのアンタは!離せー!寝るなら家で寝なさいよー!」 「・・・家じゃ意味ないだろー・・・。」 「は?!何が?!」 またコイツ訳のわからないことを言うんだろうなあなんて思いながら。 横山の見た目に反する力強さに必死で抵抗してみたけれど、その手は決してほどけない。 「お前、いないし。」 「・・・。」 必死の抵抗がピタリと止まった。 ・・・えー、えっと・・・。ちょっと待て。今何を言ったのこの寝ぼけ男は。 「・・・よ、横山・・・?」 「・・・。」 「だからそこで寝るなー!!」 昔からマイペースだし、そのくせ予想外な行動して人を困らせてばかりの奴だけど・・・何なのよ今のは! 腕はしっかり掴まれたままだし、今の言葉が気になって仕方ないし。 周りなんてどうだっていいって態度なくせに、結局自分の思うとおりにしているようで本当憎たらしい。悔しい。 けれど今の台詞の続きを聞きたくなってしまった私は、もう少しここにいるしかないようだ。 TOP |