無表情少年、百面相少女









君の表情が変わるところを見てみたい。








「・・・ふーわ!!」

「何だ。」

「・・・私は足音も立てずに貴方の後ろから突然声をかけました。
なのに貴方は何故驚かないのですか?」

「驚く必要がないからだ。」

「驚くのに必要とか関係ないから!」

「俺の登校時にお前が俺の背中を叩き、大声で挨拶をすることは予想できる。
驚く必要などないだろう。」

「あー。そういうことか!ちくしょう!!」





「ねー不破さー。何でいつもそんなに無表情なのさー。不破の表情が変わるとこ見たいんだけどー。」

「表情?特に意識などしたことはないが。必要もないしな。」

「つーか表情っていつの間にか変わってるものなんじゃないの?」

「そういうものか?」

「そういうもののはず!だから不破の表情も私が変えてやるのだ!」

「ふむ。そうか。」





「じゃあ手始めに。」

「何だ?」

「表情を変える練習!不破はなかなか表情変えないから、練習しとこう!いざと言うときに最高のリアクションが取れるように!」

「・・・それは必要なことなのか?」

「必要必要!私が見本を見せるから、不破も続いてレッツトラーイ!!」

「・・・。」

「怒り!」

「・・・。」

「悲しみ!」

「・・・。」

「喜び・・・って全然変わってない!!わかった、わかったよ不破!いきなりレベルが高すぎた!」

「・・・。」

「軽く笑う、微笑みレベルでいこうかね!とりあえず口の端をあげてーこんな顔で!」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・ごめん不破。ちょっと怖い。」





「よしわかった!じゃあ次の作戦考えてくるから!首を洗って待ってろよちくしょう!!」

「・・・。」








「相変わらず興味深い奴だ。」









彼の元を去るとき、いつもそこには彼女が望んでいる小さな笑顔が浮かんでいること。
そのことに彼女が気づくのは、まだ先の話。











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