それすらも





生まれて初めての気持ち。
それを教えてくれたのは、君だった。



。なんだか浮かない顔をしてるか?」

「・・・。」



昼休み、いつものように中庭のベンチに座る。
は口数が多いほうではないが、今日は俯いて黙ったままだ。表情も明るくはない。



「具合が悪いか?」

「・・・ううん。」



一体どうしたのだろう。
は俯いたまま、言葉を発しようともしていない。
生まれて初めての恋愛で、こんなときにどうしたらいいのかわからない。
いつも相談していた幼馴染の顔が浮かんだ。ならどうするだろう。
・・・情けない。いくら幼馴染だと言ったって、こんなときまで頼っていては呆れられてしまうな。

は俺の彼女で。
俺の好きになった相手。
ならば、俺が支えてやれなくてどうする。



。何かあるなら・・・」

「・・・別れてほしいの。」



・・・今、は何と言った?
のその言葉で、頭の中が真っ白になった。



・・・?」

「・・・ごめん・・・ごめんなさいっ・・・。」



いつもする穏やかな表情とは程遠い、悲しい泣き顔。
にこんな顔をさせたくなんて、なかった。

涙を止めることもなく、謝りつづけるをただ、呆然と見つめていた。
のその姿は俺を傷つけることで、自身も傷ついているかのように見えた。

理由は、わからない。
けれどが俺と別れたいと思っているのは本当で。
俺をできるだけ傷つけまいと、自分が悪いと謝りつづける。

こんなにも人を好きになったのは初めてで
こんなにも愛しい気持ちはそのままなのに。

ただ、一緒にいたかっただけだ。
一緒に笑っていたかっただけだ。



なのにもう、それすらも叶わない。