「ねえねえイリオン。」 「なあに?」 「この手紙の最後にさ、ドイツ語で書きたいんだけどね。」 「なんて書くの?」 「Ich liebe dich.」 「・・・重い。わたしはまだ貴方を認めてなんかいないの!そんな言葉言わせないからね!」 「ええ嘘!わたし、もうイリオンのお姉ちゃんのつもりとばかり・・・!」 「嫌よそんなの!わたしはリョーイチ以外の妹になるつもりなんかないんだからね!」 「寂しい・・・」 「し、知らないもんそんなの・・・!」 「でね、好きだよって言葉を書きたいんだけど・・・ 日本語だとあまりに直球で恥ずかしいから、ドイツ語にしてみようかと思ったのね?」 「相変わらず話を無視する人ね。」 「辞書をひくとIch liebe dich.って書いてあるんだけど、さっき重いって言ったよね? 使い方として間違ってるのかな?」 「・・・間違ってるとかじゃなくて、それはすごく大事な人に向ける言葉。 結婚を前提にしているとか・・・すごく愛してる人に伝えるものよ。」 「いいじゃないそれ!わたし、天城のことすごく好きだもん!」 「わたしは認めないって言ってるでしょ!」 「しーらない。書いちゃおうっと。」 「やめなさいって言ってるでーしょー!!」 「なによーイリオンの意地悪ー!!」 「『Mein Deutsch ist schlecht.』」 「マイ・・・え?何?」 「それならいいよ。」 「ふむふむ、こう書くのね。で、これってどういう意味?」 「今の貴方をさす言葉。」 「え?何?どういうこと?ちょっと待って今調べ・・・あいたっ。」 「調べちゃダメよ!そんなにわたしが信用できないの?妹だって言ったくせに!」 「そんなことないよ!妹のことを信用しないはずがないでしょう?!」 「それじゃあそのまま封をしてリョーイチに送ってね。」 「もちろんよ!」 トゥルルルル・・・トゥルルル・・・ 「はい、もしもし。」 『か?』 「あ、天城!」 『手紙届いた。ありがとう。』 「あ、届いた?よかったよかった!」 『そっちではイリオンが世話になったみたいだな。』 「うん!一緒に遊んだよ〜。」 『俺も行ければよかったんだけどな。』 「まあ仕方ないよ。会いたかったけどね、すごく会いたかったけどね! イリオンが可愛かったから許す!」 『・・・。』 「ちょっと落ち込んでる?冗談だからね?イリオンが可愛かったのは本当だけど。」 『はは、ありがとう。だいぶ最初に会ったときはどうなることかと思ったけど、 大分打ち解けたみたいでよかった。』 「もう姉妹みたいなものよね。ちょっとずつだけど話も通じるようになってきたし。 ドイツ語のアドバイスももらえるくらいの仲になったし!」 『それはよかった。』 『ところでもらった手紙のことなんだけど・・・。』 「あ、うん。なんか照れちゃうな〜。」 『この最後のドイツ語って、』 「そんなひっかかる意味だった?それがわたしの気持ちらしいんだけどね。 メモする前に封しちゃったから単語全部覚えてなかったんだよね。」 『もっとドイツ語を知りたいってことか?』 「・・・は?」 『Mein Deutsch ist schlecht.って、自分のドイツ語が下手って意味なんだけど。』 「・・・はあ?!」 『脈絡なく入ってるから、相当勉強したいってことなのかと思った。』 「ち、ちち、ちがーう!!そこには私の愛の言葉を・・・!!」 『愛?ああ、ドイツ語が好きって言いたかったのか。』 「違う!鈍い!そういうところも好きだけど!」 『え?』 「そっちにイリオンいる?ちょっとじっくり話がしたいです! いくら可愛くたってお姉ちゃん、許しませんからねー!」 『(二人とも本当に仲良くなったな・・・)』 TOP ------------------------------------------------------- シェルム(Schelm)・・・ドイツ語で「いたずらっこ」 ※ヒロインとイリオンはお互いの言葉を片言でしゃべってる設定です。 |