俺が例の作戦を開始してから、1週間がたった。 自分革命 「ー!これこれ!このマンガ見てみ!! ちょーおもしろくね??」 「何?んー?サッカー漫画??」 「そ!ぶっちゃけありえねーシュートとかあんだけど 見てて燃えるわけ!まあ俺の方がうまいけど!」 「漫画と競ってどうすんのよ。」 「マジマジ。どうせなら、その漫画に出てくる サンダーボルトシュートとかやってやろうか?!」 「いや、心から遠慮します。」 俺は周りかまわずに話しかけるようになった。 そのせいか、自身も結構俺に打ち解けるようになった。・・・気がする。 まあ俺の計画の賜物だな!けど・・・ 「あー若菜くん!!」 「またが独り占めしてるんだけどー!」 すっげえ確率で、の友達がつきまとう。 ああ、もう!邪魔だな!!俺はと話ししてんの! 俺の『俺の魅力にメロメロ(死語)にしてやる』作戦が台無しだっての!! 「ん?何コレ?」 「あ・・・それ・・・」 の友達が、俺の漫画を見つけて手につかむ。 パラパラ本をめくり、息を吸い込み・・・ 「・・・あーっはっはっは!!何コレ!!何コレ!! サンダーボルトシュートだってぇ!!ワケわかんなーい!!」 こいつ・・・こいつ・・・バカにしやがった・・・!! 俺の心のバイブルを・・・・!! 「・・・え?これ結人くんのなの??」 何時の間にか、呼び名が『結人くん』になってるし!! お前にそう呼ぶ許可なんて出してねーつの!! 「あははは!結人くんこれ好きなんだぁ!確かにこれ笑えるもんねー!」 やべえ。むかつく。イライラする。 何でこんな女に、計画を邪魔されて、俺の漫画をバカにされて、 結人くんとか呼ばれなきゃなんねーわけ?? 「うるさ・・「結人」」 が俺の言葉を遮る。 「結人、さっき先生に呼び出されてたでしょ? 行かなくていいの?」 俺はを見る。 は申し訳なさそうに、「はやく行け」と促す。 「あー!そうだったぁ!!俺行って来るわ!!」 「えー。結人くん行っちゃうんだー。残念ー。」 「じゃあなー!」 廊下を出て、一息つく。 助かった。がああ言ってくれなきゃ、多分、あの女子に怒鳴って、泣かせてた。 まあ、それはそれでよかったかもしれないけど。 そうしとけば、これからとの話も邪魔されないだろうし。 ・・・ん?違うな。 との話じゃなくて、俺の計画か。そうだよな。 もう、あの女子の集団はまっぴらだし、 次はを誘ってどこかへ行こう。それなら邪魔も入らない。 放課後、俺はを呼び出す。 今週の土曜だったら、サッカーの練習もないし、丁度いいだろう。 「今週の土曜?」 「そ!今週の土曜日、俺とどっか行かねえ?」 「・・・何で?」 返ってきた反応は意外なもの。 この一週間で結構仲良くなったし、当然OKが返ってくるものだと思ってた。 「何でって・・・と遊びたいからでしょう!」 「・・・結人さあ。」 「ん?」 「どうして私なの?1週間前からおかしいよね。 それまで私なんて気にしてたことなかったのに。」 ・・・やっぱりおかしいと思ってたのか。 そんなこともう、気にしてないと思ってたのに。 「1週間前に課題見せてもらったじゃん。 それでいい奴だなって。話してみたいなって思って! で、実際話してみたらやっぱいい奴じゃん。それだけだよ。」 「結人は・・・少なくとも今の結人は、笑ってるのに笑ってない。」 核心をつかれた。 今まで誰にも気づかれていなかったはずなのに。 そう、俺は『いいやつでいたいから』 何に対しても笑って過ごしてきた。 『騒がれていたいから』 女子に対しても、怒ったり切れたりすることはなかった。 『自分に興味のない奴がいることが悔しいから』 を俺の方に振り向かせようとしてた。 「悪いけど、私は行かない。 結人のこと、純粋に友達だと思えない。」 胸が、痛かった。 誰に言われるよりも、に言われたことに。 がいなくなってから、俺はその場に立ち尽くしていた。 どうして?何でに言われたからってこんなに苦しいんだよ? どうして? あんなに周りからの評価を気にしていた俺が 女子を泣かせて、怒らせてもいいなんて思った? 答えに、たどりつく。 なあ。 俺は『計画』を盾にして、お前への気持ちを否定してた。 計画を仕掛けた俺が、お前を好きになるわけなんてないって。 こんなに好かれてる俺が、平凡な、クラスの女子を好きになるわけなんてないって。 お前のさりげない笑顔とか、優しさとか、そんなのもうわかっていたはずなのに。 「見る目なくていいよ別に。だって格好よく見えないもん。私には。」 格好よく見えなくて当たり前だ。 誰が、ウソの自分ばかり振りまいて、愛想だけよくして 本当の自分をさらけださない奴が格好よく見えるんだ。 俺は、決心を固める。 もう『誰にでも好かれる若菜くん』はお終いだ。 そんなものよりももっと、欲しいものができたんだ。 次の日。 ざわついた朝の教室。君の姿を見つける。 「」 「・・・ゆう・・・?!」 迷うことなく、君の席に向かった。 そして、迷うことなく君を、抱きしめる。 教室が一瞬静まり、誰ともつかない悲鳴があがる。 けど、俺は気にしない。気にならない。 「結人!?何??何なの??」 「好き。」 「なっ・・・何言ってんの・・・!?」 「が好きだ。」 「ちょっ・・・!結人!離してってば!!」 「めちゃめちゃ好きだ!」 「・・・結っ・・・」 の抵抗する手がゆるまる。 俺の腕の中で、恥ずかしそうに顔を上げる。 そして、あの優しい笑顔を見せた。 周りは悲鳴やら、ひやかしやらすげえけど、そんなこともう気にしない。 俺は、 が好きだよ。 BACK
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