「もう!なんなのよー!」



ああ、今日も彼女が人生を悲観して叫んでいる。



「可愛げがなくてごめんなさいねえ。守りたくなるような感じじゃなくてすいませんねえ。
・・・って、あほかふざけんなー!あんたらなんかにそう思われなくても痛くもかゆくもないわー!」



もはや日常茶飯事となっている、ネガティブモードとひとりつっこみ。
見ているこっちは面白いなんて言ったら、またいじけるだろうから、心にそっと秘めておく。












For good or bad














「どういうことなの・・・!」

「おわ!びびった!お前はいつも突然だな!」

「思い出し怒り。」

「隣で突然叫ばれた俺の身にもなって!」

「どいつもこいつもさんさんって、私だって女の子なんですけどおおお!!荷物が重たいのに変わりないんですけどおおお!」

「ああ、またの話?」

「同じ人間なのに、この扱いの違いはどう思います根岸くん。」

「ええー・・・まあ、そうね・・・どうだろ・・・」

「にごしてる時点で天と地の差があるって言ってるようなものじゃないの!」

「勝手に解釈して勝手にきれんな!」





目の前で落ちることのないテンションで話し続けている彼女。
びっくりするくらい、顔立ちの整っている友達に対する態度と、彼女自身に対する態度の違いに腹を立てているようだ。まあ、いつものことなんだけど。

俺としてはそこまで悲観的にならなくても・・・と思うわけだけど、確かにの友達、のモテっぷりはすごいと思う。
その外見もさることながら、性格も大人しく、動きもどこか上品で、誰かの一歩後ろに引いて奥ゆかしくしているような子だから、尚更だろう。





「そりゃは綺麗だよ。可愛いよ。抱きしめたくもなるよ。
でもさー、あそこまであからさまに差をつけられると、さすがの私も傷つくわー。」

「・・・まあ、に対しての一部の男子の態度は、ちょっと特殊っていうか・・・崇拝に近いところあるからな。」

「どうせ私は力強そうだよ。みたいにかよわくないですよ。可愛くもないですよ。平凡真っ只中な顔してますよ。」

「そこまで悲観的にならなくても・・・」





どこをどうとっても、悲観的な方向へ持っていってしまう彼女に、たまには自信を持ってもらいたいわけで。
よし、ここは俺が一肌脱ごうじゃないか。大丈夫だよ。そんなに自信を無くさなくたって。
だって俺は、じゃなくてお前のことが・・・す、す、す・・・・・・いやダメだ!恥ずかしい!頭の中でも言えない!!





「うるさいなあ!根岸だってサッカー部で女の子にキャーキャー言われてる人種でしょう!私の気持ちなんて・・・気持ちなんて・・・!」

「俺そこまで言われてな・・・」

「どうせ根岸だって、が好きなんでしょ!男は皆が好きなんでしょ!」

「そんなことな・・・」

「そもそも何でへの手紙とか告白で、私を中継にするかなあ!直接行けよ!恥ずかしいとか近づきがたいとか知るか!」

「お前、さっきから人の話聞けよ!」





なにこの人!俺のしゃべる隙間すら与えてくれないんですけど!

と違って、こういう性格だからか、とっつきやすいというか、話しかけやすいんだと思う。
大人しく、男が苦手そうなに近づくには、彼女の親友であるを味方につけたいと思う男子の気持ちがわからないでもない。
でもさ、話しかけやすいっていうのも、魅力のひとつだと俺は思うわけで、俺はお前のそういうとこ、す、す、ダメだやっぱり言えない!!





「いいか。男が誰でもが好きかって言ったらそれは違うぞ?」

「・・・はあ。」

「ため息つくな!俺、本気で言ってんだから。」

「・・・そうなの?」

「お前、の近くにいすぎて麻痺してるんだよ。落ち着いて考えてみろって。」

「・・・本当に?」

「そうそう。だから・・・」

「よし、わかった!」





そうだ。落ち着いて考えてみてくれ。そして俺にそのまま相談してくれ。
男は誰でもが好きなわけじゃない。ちゃんとお前を見てる奴だっているんだ。
たとえば誰がって聞いてくれれば、俺、ちゃんと話すから。それをきっかけにするから。
恥ずかしい恥ずかしいって思ってても何も始まらないもんな!ちゃんとよりもお前がって・・・





「あ、中西。中西ー!ちょっとー!」

「へ?中西?」

とネギじゃん。どうしたの?」

「中西に聞きたいことが。」

「高いよ?」

「大丈夫大丈夫。根岸いるから!」

「わかった。」

「おおおい!?」





なんでそこでわざわざ中西に聞くんだよ!!
目の前に俺がいるじゃん!俺に聞いてよ!!あと勝手に俺を巻き込むな!





「中西ってどんな子がタイプ?」

「金髪美人。」

「えええええ!?そうなの!?」

「嘘だけど。」

「嘘かよ!」

「でも嫌いでもない。」

「どっちだよ!」

「外国のお姉さんとか、無条件にえろい気がするよね。」

「そうなの!?」

「お前、からかってるだけだろ?」

「えーそんなことないよー?」





あれ、の話どこいった。なんでいきなり外国人の話になったの?
ていうか、すげえよ中西。俺、好きなタイプ質問されて、躊躇なく金髪美人とか言えねえよ。






「なに、俺のこと好きなの?ちょっと困るっていうか、対象外っていうか、もっと色気出してから出直してこいっていうか・・・

「そんなわけあるか!ばーかばーか!」

「えーひどーい。傷つくー。」

「こっちの台詞だよ!予想外のところから攻められて泣きそうだよ!」

「・・・えー、えっと、だからさ。世の中にはこういう奴もいるわけでな、全員が全員を好きなわけじゃないわけだ。」

「中西じゃ全然参考にならん!」

「え、なにこれ。なんで俺がけなされてんの?ネギ蹴っていいの?」

「どうぞ。」

「ダメだよ何言ってんの!?」





とりあえず中西とは、俺への態度を改善すべきだと思う。
俺、二人に対して結構親身になってるよ?相談も乗ってるよ?なんでいつも俺が痛い目見てるの?おかしくない?

最後になぜか中西に一発蹴りを入れられて、ちょっと泣きたくなった。
満足したようにその場から去っていく中西を諦めたように見送って、またと二人になる。
結局何も解決していない。は自分を卑下してるままだ。

もうきっかけとか待ってられない。
ていうか、にそれを求めるのは無理だった。いつまでも来ない気がする。

それならば、自分でつくる。大丈夫!頑張れ俺!





「・・・なあ。」

「なに?」

「俺、本気で思ってるってば。ばっかり好かれてるわけじゃないって。」

「もういいよ。なぐさめの言葉なんて、聞いても悲しくなるだけですよ・・・。」

「本当だって。俺、のこと好きだもん。」





言った!!俺は言ったぞー!!





「・・・・・・。」

「・・・・・・。」





けど、沈黙が怖い!なにこれすごく怖いんですけど!
お前さっきまであんなにうるさかったじゃん!早くなんか言ってく・・・





「What?」

「なあなんで今英語になったの?どうして今それなの?」





なにその返し!ロマンのかけらもねえよ!
なんでお前はいつもそう、俺のロマンチックな想像を打ち砕くの?





「だって今びっくりするような幻聴が聞こえた気がした。」

「そこまで!?幻聴じゃねえよ!」

「えっと、あの、すいません、もう1回言ってもらえますか?」

「まだ言わせんの!?」





さっきの言葉だって、気力体力ふりしぼったっていうのに、まだ言わせる気か!
俺、さっきまで心の中で言うのだって無理だったんだからな!俺の照れっぷりをなめんな!





「もう言わないからな!耳かっぽじってよく聞けよ!?」





友達がちやほやされ、優しくされるのを目の当たりにしながら、彼女自身はぞんざいに扱われ。
放課後呼び出されて、期待をしてそこへ行くと、照れ笑いを浮かべたイケメンに友達への手紙を託され。
友達の倍近くの荷物を持っていても、お前なら大丈夫と爽やかな笑顔で済まされて。



彼女は人生を悲観する。



もっと平等であるべきだと叫ぶ。



だけど、結局気の持ち様。見方の違いで世界も変わるのだと、知ってほしいんだ。





「俺は、お前が―――・・・」





伝える言葉は、君に届くだろうか。



そしたらさ、世の中捨てたもんじゃないって、そう思ってくれる?







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