「・・・。」 「さん?いきなり何言うてんねん翼。」 「隠れてないで出てきたら?こそこそしてるのは嫌いだって知ってるだろ?」 「え?え?」 「ごめんなさい。」 「おおおー!?なにしとんねんさん!!気配消しすぎやわ!!」 僕の本心はともかくとして、ファンクラブを認めたということにはなっているのに、彼女の行動は相変わらずだ。 新聞部として堂々と取材をしているときもあれば、今みたいに物影からこっそりと僕らの様子を窺っていることもある。 「聞きたいことがあるなら、聞けばいいだろ?」 「私はいろいろな椎名くんが見たいんです。友達と話しているとき、一人でゆっくりしているとき、サッカーをしているとき。 本人に聞いてもわからないような、いろいろな椎名くんが知りたいんです。」 「・・・。」 「写真だってそうです。カメラ目線と自然体の姿を撮るのでは、その写り方も違う。そのためにはこうして少しずつ・・・」 「あーもう!わかったわかった!」 「よかった。わかってくれますか。」 「が変態だってことが。」 「!!心外です!私はただ椎名くんをもっと知りたいだけです!」 「っ・・・だから!なんでそういうことを堂々と言えるわけ!?」 彼女とのやり取りはもはや日常の一部となり、他の奴らにからかわれることも、理由をつけて会いにいかされることも少なくなった。 けれど、彼女と話す頻度は徐々に増えているように思える。 「俺の存在無視や・・・!俺、無視されるの嫌いやのに・・・!」 「何気に相性ぴったりよね、あの二人。」 「・・・!?さんもいたんかいな!!」 「新聞部ですから。」 「そうかなるほど・・・ってどないやねん!!」 それと同時に、今まで出会ったことのないタイプの彼女に保ち続けていた距離感が、日に日に縮まっているように感じ始めていた。 another report 「ちょっと不安になってきた・・・。」 「何が?」 「の行動ってちょっとどころか、だいぶ異常だよね?会報っていったってたかが知れてるって思ってたけど、一体何が書かれてるんだか・・・。」 「まあ、ファンクラブを虜にするくらいの情報は載ってるだろうな。」 「どうするスリーサイズとか載ってたら。」 「男のスリーサイズなんて知ってどうするんだよバカじゃないの!」 「わははっ!『好きな人のことは何でも知りたいのです』とか言いそうやなあ!さん!」 「翼になら会報ってやつも見せてくれるんだろ?見てみればいいじゃん。」 「嫌だよ!」 「こんにちは!新聞部です!」 「あ、さん。」 「こんちはー。あれ、さんは?」 「残念ながら、補習です!」 「相変わらず見た目と一致しない人だなー。」 「会報とか作ってる場合じゃないんじゃねえ?」 「それは言っちゃだめだよ!の楽しみなんだから!」 校内新聞にサッカー部の情報が載るようになってから、新聞部との付き合いも多くなり、特にととはしょっちゅう話している気がする。 聞けば、今まで一番付き合いのなかった部活は僕らサッカー部だったようで、話を聞けなかった分を取り戻そうとしているようだ。 「そういや今更だけど、俺らのことばっかり書いて、教師に目つけられねえの?」 「ああ、一応説得済みだから。」 「説得したの?すげえ!!」 「そもそもサッカー部は創部1年で、しかもこんな少人数で都大会上位まで勝ち進んでるんだよ? 話題にして駄目なわけがないじゃない。ネックはそのメンバーが問題児だらけっていうだけなんだから。」 「問題児ってなんやねん!」 「生徒からしたら、その問題児たちが活躍するのって、こう・・・スカッとするわけ。 でも先生方からしたら、面白くないんでしょうねえ。記事も翼くんのことを大々的に書けとか制限がかかっててさ。」 「うわ!最悪!」 「だから信用ならねえんだよなあ。」 「私としては、翼くんのことが書けてたから、それはそれでいいやと思ってたんだけど。」 「「「おい。」」」 「あるときが思い立って、先生たちに掛け合ったのよ。今まで集めたたくさんの資料を持ち出して、サッカー部みんなのことを書きたいって。」 校内新聞には、割と幅広い部活動や話題が書かれているのに、サッカー部の記事は極端に少なかった。 顧問に認められなければ、取材も、試合へ向かう予算も出ない。別に記事にならないことに何も問題はなかったけれど、僕らのことが校内新聞に載らなかった理由は予想どおりのものだった。 「わかってると思うけど、こうと決めたときのの行動力はすごいからね!最初は返り討ちにあって帰ってきたんだけど、の熱意に部員たちも協力し始めて、最終的に取材許可をゲットですよ!」 「おお、すげえ!」 「・・・なんでそこまでして、サッカー部のことを載せたかったの?」 「、元々サッカー部が好きで、よく見に行ってたんだよ。 だから、サッカー部が周りに噂されてる怖い人たちの集団じゃないってこと、知ってほしかったんだって。」 「なんやて・・・!」 「やべ、俺感動してきた・・・。」 「翼、お前さんのこと変態とか言ってないで、もっと優しく接してやれよ!」 「何言ってるんだよ。ファンクラブだとか会報とか黙認してる辺り、すごく寛大だと思うけど?」 「・・・た、確かに!」 そして、ずっと謎だった、突然僕らの話題が増えた理由もわかった。 サッカー部の評価があがっても、にはメリットなんてないだろうに。 そんなことに労力を使って・・・だから補習になったりしてるんだよ。バカじゃないの。 ガラッ 「翼くーん!差し入れ受け取ってくださいー!!」 「うわ、誰だ!?」 「・・・あれ、確か・・・」 「昨日、翼を呼び出してた子じゃん。お前、付き合うことにしたの?」 「まさか。きちんとお断りしたよ。」 「じゃあ何で部室に乱入してくんだよ。」 「今日はクッキーを作って・・・って、あれ、会長のお友達じゃないですかあ。何してるんですかー?」 「新聞部の取材中!ノックもせずいきなり部室に入ってくるなんて失礼じゃない?」 とのやり取りを見ていると、どうやらファンクラブの一人のようだ。 最近はこんな風に迷惑をかけられることが無くなっていたから油断していたけれど、彼女たちの中で何かあったのだろうか。 「だって、私もうファンクラブじゃありませんし。何をしたって自由でしょう?」 「だからって、彼らに迷惑でしょう?」 「新聞部っていう特権を使って、翼くんと仲良くなろうとしてる人に言われたくないですー。」 「はあ!?」 「もういいじゃないですか!翼くん、これ受け取ってください。」 「・・・迷惑。受け取らないし、とっとと帰ってくれる?」 「っ・・・」 無駄に敵を増やすつもりはないけれど、人の迷惑も考えずに突っ走る奴の相手をまともにするなんて御免だ。 昨日の告白を断ったときとは違い、冷たく突き放すように言葉を返すと、彼女は悲しそうに顔を歪めた。 「私は・・・!!きゃあ!!」 さらに何か言おうとした彼女の後ろから、腕が伸び、そのまま部屋から引きずりだした。 そして扉の隙間から顔を出したその子は、僕らの見知った顔。 「失礼しました。彼女にはよく言って聞かせます。」 「さん!?」 「?あんた補習は?」 「終わったので来てみたら、大変なことに・・・。ご迷惑おかけしました。」 それだけ言うと、騒ぐ彼女を連れ去り、本当に帰っていった。 僕らはが去っていった方向へ視線を向けたまま、あっけにとられていた。 「えーと、何、ファンクラブの子だったのか?」 「この間までね。だけどファンクラブじゃない子に前回の会報パスワードを教えちゃったのよ。それでしばらくパスワードを伝えないって言ったら怒って、それならファンクラブ止める!って言い放っていった子。」 「うわー。」 「それで逆切れして、翼に告白して、迷惑考えず突然現れたってわけか。」 「我が強そうだけど、さん大丈夫なのかな。」 「ならなんとかすると思うけど・・・私も様子見にいってくる。取材は今度にまわさせてくれる?こっちの部員にも伝えておくから。」 「・・・ああ、別に構わないけど。」 「ありがとう!さっすが翼くん!」 を見送って、ファンクラブっていうのもキャーキャー騒いでいるだけではないんだと、ぼんやり考えていた。 確かにファンクラブじゃなくたって、いろんな奴らがいるし、人数が増えれば増えるほど、それをまとめるのは大変だろう。 元々、さっきの女子のように、他人の迷惑を顧みず、自分の考えだけを押し通す奴がいなかったわけじゃない。なおさら苦労も多いだろう。 それから数日が経ち、この間の女子はもう僕らの元へ来なくなった。 そして同じような行動をする子も出ない。たちはうまく説得が出来たということだろうか。 ただ、最近話すことが多くなったと、ここ数日会話をしていない。 クラスも部活も違うし、新聞部の取材だってない。会わないことが当たり前ではあるのだけれど。 「あ、。」 「あれ!翼くんから声をかけてくれるなんてどうしたの!?」 「は一緒じゃないんだ?」 「ああ、そうだね。さっきちょっと出てくるって・・・気になる?翼くん?」 「別に。いつも一緒にいるからどうしたのかって思っただけ。」 廊下で偶然見かけたはいつもどおりだ。 からかうように笑っているのが、ちょっと癪だったけれど、それだけ彼女も僕に慣れてきたということだろう。 初めの緊張ぶりをビデオにでも収めて本人に見せてやりたい。 「、落ち込んでるよ。」 「・・・え?」 「翼くんに迷惑かけたって。」 「・・・この間のこと?それは別にのせいじゃ・・・」 「そう思うのにね。一人で背負いこんじゃう性格なの。」 「それじゃあ最近見かけないのは、」 「そういうことだね。」 が呆れたようにため息をついた。 話を聞けば、あのときの女子はたちの説得で、僕に迷惑をかけないことを約束してくれたそうだし、 今回のことでルールの再検討も始めたらしい。表面的にはいつもどおりに見えるとは言うけれど。 「まったくわかりづらいったら。」 「・・・。」 「なに?」 「は何で、ファンクラブなんて作ったの?僕の情報を集めるだけなら、そんなもの作る必要なかっただろう?」 「・・・ふふっ。」 「・・・何。」 「翼くん、もうわかってるでしょう?」 「!」 「ね、3階の渡り廊下にいると思う。気が向いたら行ってあげて。」 何も考えていないように見せて、僕の考えていることを見透かしたように笑う。 別に僕はを探していたわけじゃない。偶然見かけたに、何気なしに声をかけただけ。 なのに、僕の足は自然と上の階へ向かっていた。 そして渡り廊下にたどり着くと、数日ぶりに見た彼女の姿。 手すりに手をかけ、視線は遠くに向けられていた。僕の存在には、まだ気づかない。 「。」 「椎名くん。」 「何してるの?」 「少し、考え事をしていました。」 「何考えてた?」 振り向いた彼女は相変わらずの無表情で。 端から見れば何を考えているのか、まったく読めない。 「・・・椎名くん。この間は迷惑をかけてしまって本当にごめんなさい。」 「別にのせいじゃないだろ。」 「いいえ。私の作ったファンクラブの会員だったのだから、私がしっかりとしておくべきでした。」 「・・・そんなこと思わないけど・・・でも、ルールの作り直しも考えてるんだって?」 「はい。確かに会報を見せなくなるってだけでは、綻びが出て当然でした。椎名くんを好きな者同士ならば守れるんだろうって考えが甘かったです。」 「そこまでしてファンクラブを管理していく理由なんてあるの?」 「はい。私にとっては、とても大切なことです。」 「・・・それは、僕のため?」 「いいえ。自分の自己満足です。」 サッカー部の奴らと話してたあの時、ふと飛び出てきた疑問。 「だけどさ、さんはなんでファンクラブなんて作ったんだ?」 その理由が浮かんでいないわけじゃなかった。 僕はそれまで、練習中に騒いだり、迷惑をかけていることすら気づいていない奴らに辟易としていた。 に写真を勝手に撮るなと怒ったけれど、彼女以外にだってそんな奴はいくらだっていたんだ。 ずっとサッカー部を見てきたというのなら、彼女はそれを知っていただろう。 の記事が話題になり、写真が欲しいと殺到したとき、どんな会話があったのだろうと考えた。 もし写真を渡さないと言ったら?の持ってる情報をなんとか集めようとする子たちがいたら? 彼女たちの僕に対する行動は今まで以上のものになり、僕らはさらに困ることになっていた。 だからは、あえてファンクラブを作り、ルールを作った。気をひくために会報だなんて面倒な特典までつけて。 そこまで考えて、まさかと思った。いくらなんでも自惚れ我過ぎると。 だけど、彼女のまっすぐさも、正直さも、そしてわかりづらさも僕はもう知っている。 だから、それがただの自惚れではないこと、もうわかってる。 「はさ。」 「はい。」 「いつから僕に興味を持ったの?」 「・・・椎名くんは覚えていないと思います。」 「いいから。話して。」 「・・・以前に、私の書いた校内新聞を褒めてくれたんです。」 「・・・褒めた?」 「知っての通り、校内新聞は多くの生徒に素通りされるような存在でした。でも、暇つぶしであっても時々見てくれる人はいるんです。」 「・・・。」 「その日は偶然新聞を眺めてる人たちがいて、彼らの評価は"つまらない記事"でした。でもその場にいた椎名くんが、かばってくれた。 そんなことはないって。細かく調べてあるし、読みやすい。適当に眺めてないでしっかり読んでみろって、そう言ってくれました。」 今までどおり丁寧な言葉で、ゆっくりと話を続ける。 気恥ずかしいのか、話の区切りで一呼吸置いた彼女を見つめたまま、静かにその続きを待った。 「私、その時の椎名くんの言葉が、本当に嬉しかったんです。」 「・・・そんなことで・・・」 「それからサッカー部にも通うようになって、椎名くんがもっともっと好きになりました。 よく知らなかったサッカー部の皆は、噂とは全然違う人たちなんだって知りました。」 「それで僕らのことを記事に?」 「はい。」 「同時に僕の情報も集めたってわけか。」 「少しずつ少しずつ、椎名くんを知っていくたびに新しい発見がある。椎名くんの言動も行動も、私にとって憧れなんです。」 隠れて写真を撮ったり、勝手に僕の情報を調べたりと、端から見れば彼女の行動は褒められたものではない。 好意を寄せてくれていることも、嬉しかったという言葉も、悪くはないものだけれど、彼女の場合は行動と言動に表れすぎている。 それでも不快に感じることのなかった理由を、僕は最初から知っていた。 「僕も嬉しかったんだよね。」 「・・・え?」 「僕らの記事を書いたのが、で。」 「・・・どういう意味ですか?」 「の書いた記事の前にいたのって、偶然じゃないから。」 「・・・え、あの・・・?」 「ずっと、サッカー部の記事より前から、読んでたんだよの記事。 話の内容もありきたりだったのに、読みやすくて独特の書き方があって、面白かった。」 「・・・え、ええ?」 「サッカー部に取材に来たとき、おかしいと思わなかった?なんで略称だけで、の名前がわかったのかって。」 「!」 「はじめから知ってたからだよ。あの略称がのものだったって。」 サッカー部の記事が載ったとき、もしかしたら同じ子かもしれないと、人ごみから執筆者の名前を覗いた。 そこには予想通りの文字があって、少しだけ嬉しくなったりもしていたんだ。 「あんな記事を書くのは、どんな子なんだろうって思ってた。 実際会ってみたら、いろいろなことが予想外すぎて、びっくりしたけどね。」 「・・・そ、そんな予想外でしたか?」 「ああ。さすがの僕もどう接していいのか困った。」 思い立ったら驚くくらいの行動力を発揮して、あっけにとられている間に完了してる。 あまりにも堂々としすぎていて、思わず言葉を失ってしまうような言動ばかりで。 けれど、 「でも、思ったとおりの子でもあったかな。」 「・・・それってつまり、どっちなんですか?」 正直でまっすぐではっきりとしていて、誰かの揚げ足をとって笑うような話題もない。 彼女が書く文章に、他人を傷つけるようなものはなかった。 言葉の中に隠れた意味を含めて、意味がわかると思わずクスリと笑ってしまうような、そんな文章。 「といると退屈しないよね。」 きっかけは1枚の校内新聞。 僕は彼女の記事を読み、彼女自身に興味を持っていた。 彼女は自分の書いた記事を認めた僕を気にしていた。 話題になった記事により、取材が始まり、出会う回数も話す回数も増えるようになった。 予想と違った行動ばかりをとる彼女との距離が、少しずつ縮まっていった。 いつしか、その姿を見ないだけで、違和感を感じるくらいに。 「。」 「はい。」 「は僕を好きなんだよね?」 「はい、大好きです。」 「僕も同じだって言ったらどうする?」 「それはもちろん、すごく嬉しいです。」 「・・・それだけ?」 「・・・それだけ、とは?」 「付き合うとか、そういう種類のものではないんだ?」 ここまで引っ張っておいて今更?とも思ったけれど、彼女の表情を見ているとそういうことでもないようだ。 表情と言ってもほとんど無表情なんだけど。微妙な変化がわかる辺り、僕もだいぶ慣れてきたよね。 「・・・成り行きとはいえ、私は椎名翼ファンクラブの会長です。」 「・・・うん?」 「ファンクラブに椎名くんとの恋愛制限は設けていません。 しかし、会長の私が皆の大好きな椎名くんを独り占めするわけにはいきません。」 「・・・なにそれ。それじゃあは一生僕と付き合う気はないんだ?」 「・・・いいえ。」 「?」 「私は椎名くんが好きで、好きで、好きで、仕方がないんです。」 「っ!?」 「中学を卒業すれば、ファンクラブは自動的に脱退になります。だから、その、」 「つまり?」 最後まで聞かなくても、彼女の言いたいことは予想できた。 だけど、きちんと言葉にしてもらわなきゃ、納得なんてできるわけがない。 「卒業したら、改めて私の気持ちを伝えにいってもいいですか?」 ああ、本当に彼女は不器用で損な性格だ。 嘘をつくことも、ずるがしこく生きることも、彼女の選択肢にはない。 いつだって、まっすぐで正直で、隠すことなく堂々と想いを口にする。 「それまで僕に待ってろって?」 「いいえ、それは椎名くんの自由です。」 「・・・。」 でも僕は、そんな彼女の性格を知ってしまったから。 そんな面倒な性格ごと、愛しいと思ってしまったのだから、仕方がない。 「いいよ。」 「え?」 「いくらでも伝えにくれば?」 「・・・はい!」 「ただし、その後どうなるか、覚悟してから来ることだね。」 普段表情の変化が乏しい彼女。けれど今日はたくさんの表情が見れる。 気恥ずかしそうにして、戸惑って、驚いて、顔を真っ赤にして。僕はそんな彼女を見て笑みを浮かべる。 卒業まで後数ヶ月。その間にどれだけ彼女を知ることが出来るだろう。 待つことは好きじゃない。だけどまだまだ計り知れない彼女だから。 待っている間に僕の知らない彼女を見つけていくのも、面白いかもしれない。 「ところで!」 「は、はい?」 「いつまで椎名くんって呼んでるんだよ。翼でいいっていっただろ。」 「・・・できません。」 「なんで?他の子なんて、許可もなく勝手に僕のこと名前で呼んでるのに。」 「・・・な、名前で呼んだりしたら、椎名くんのことがまともに見られなくなってしまいます。」 「・・・。」 待てるだろうかと疑問にも思ったけれど、そのときはそのとき。 彼女を知れば知るほどに後戻りできなくなりそうだと冷静に考えながら、体が自然と動き出した。 そうだな、とりあえず今は 思わず抱きしめてしまった彼女が、一体どんな表情を浮かべているのか知ることから始めようか。 TOP |