「「ちょっと待てー!!」」

「あ?」

「え?」

「なんでお前がここにいるんだ?」

「あ、兄上こそ・・・!」

「俺はあの女に用があるんだ。」

「俺もだ!」

「ほーう、兄様に逆らおうってか?」

「べ、別に・・・俺はっ・・・!」

「まあいい。お前がどうでも俺は好きにやらせてもらうぜ!」

「俺だって!」





シンデレラを追うのは二人の男。二人は兄弟であり、なんとこの国の王子でした。
けれど、シンデレラは引き止めるその声に答えることはできませんでした。





「なんで追いかけられてるの?!
でも止まれない!止まったらなんだか大変なことになりそうな気がする!」





なぜなら、シンデレラには時間が限られていたからです。
0時になる前になんとして魔法使いの元に戻らなければ、魔法が解けてしまいます。





『まだ時間に余裕はありそうだけど・・・』

『裸がかかってるから必死だな。』





入ってきた玄関の前にはたくさんの人がいて、とても出ていけそうにありません。
シンデレラは違う扉から出て行くことにしました。
目の前には長い階段。慎重に、けれど急いで駆け降ります。

そして、その先に待っていたのは・・・





「シンデレラ!」

「ね、ねずみさんっ・・・?!」

「そこから飛べ!そこは通ったらダメだ!」

「え?ええ?!」

「大丈夫!俺が受け止めるから!!」





『ねずみさんんんーーー!!かっけえええ!!』

『もうオチはねずみでいいんじゃね?』





迎えにきたねずみの言葉どおり、シンデレラは階段の途中で下にいるねずみ目掛けて飛び降りました。
ねずみとは言え、今は馬の姿。魔法使いの力も借りて、シンデレラを背中に乗せると颯爽と走り去っていきました。





「なっ・・・なんだよあの馬!!」

「いいから追うぞ!見失っ・・・ぐああ!!」

「どうし・・・って、うわあああ!!」





シンデレラを追おうとしていた二人が、同時に階段から転がりおちました。





『なにこれ?!どうしたんだよ二人とも!』

『見事な階段落ち・・・』

『それどころじゃねえだろ?!』

『お前知らないのか?階段落ちってすごく技術が必要なんだぞ。』

『そういう話じゃねええ!!』

『まあ確かに本物の階段じゃないしな。
そんなに高さもないし、素材も考えたみたいだし・・・でも俺は見事な階段落ちだったと思う。』

『どこまで階段落ちにこだわるんだよ?!』





「な、なんだ!こんなの聞いてねえぞ?」

「確か軽く転ぶ・・・だったはずじゃ・・・」

「「チッ」」

「おい、そこの従者二人!なんで舌打ちしやがった?!」

「王子たちがあまりに不甲斐なさすぎて・・・」

「せっかく俺たちが后を捕まえるチャンスを作っておいたっていうのにね。」

「はあ?!」





従者たちが転んでしまった王子たちに手を貸し、体を起こします。





「あ、手がすべった。」

「っ・・・お前は・・・!!」

「大丈夫?ピンク王子。」

「もうそれはやめろ!!」

「ていうか、なんだよこれ。足元がヌルヌルしてんだけど。」

「あ、俺もだ。」

「ああ、タールですね。」

「タール?」

「王子が気に入った女性が現れたら、逃がさないように、あの扉へ追い込み、
ここで捕らえるつもりだったんです。」

「それなのに、自分たちで引っかかるとは・・・つくづく期待を裏切らない人たちだな。」

「こええよ!その発想がこええ!!」





王子たちはシンデレラの名前すら聞いていませんでした。
走り去っていってしまった彼女の正体は、わからないままです。





「しかし、タールに気づいて、彼女を飛ばせたんだったら・・・あの馬、やるね。」

「あっちのブレインなのかもね。」

「馬が?!」

「せめて人にしろよ!」





けれど、王子は彼女のことをもっと知りたくて、仕方ありません。
何か手がかりはないか、会場に彼女を知っているものはいないか、考えを巡らせます。





「あれは・・・?」





すると近くに何か光るものを見つけます。





「靴だ。ガラスの靴・・・」

「王子、あちらにももうひとつ。」

「こっちは何だ?」

「これは・・・ダイヤですね。」

「ダイヤ?!」

「足の大きさが違う。同一人物ではないのでしょうが・・・」

「よし、その靴を手がかりにあの娘を探すぞ。文句はねえな?」

「靴ひとつで探せますかねえ。」

「お前はさっきから、士気をそぐことばっか言ってんじゃねえよ!」





こうしてシンデレラが落としていっただろう靴を手がかりに、
王子たちはシンデレラの捜索をすることを決めたのでした。






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