「なんで王子様が私なんかを・・・?」
「・・・まあ、丁度よかったからな。」
「どういうことですか?」
「細かいことは気にす「消去法です。」」
「・・・は?」
「この会場にはあまり見目麗しい方々がいないようなのですが、
貴方はそこそこ可愛らしい。今日はアイツで楽しんでやるか、ふははー!・・・と言っていました。」
「おまっ・・・言ってねえよ!そこまでは言ってない!!」
「・・・ほーう。そうなんですかー。」
「そうなんですよー。」
「お前らあ!!」
『俺、このルートは突っ込まなくても大丈夫かなって思ったけど、うん、ダメみたいだな。』
『別に毎回突っ込みを入れる必要はないだろう。』
『必要あんだろ!!すごくイラッとしたときとか、もうつっこまずにいられない・・・!!』
『何かの病気か・・・?』
『ちがーう!!って何で物語に関係ないとこでまで突っ込まなきゃいけねえんだよ!』
王子に見初められたシンデレラは、周りの敵意を感じながらも
気さくな王子と一緒にサンドリヨンを探すことにしました。
「双子の姉妹?ていうか、迷子になったんじゃなくて、自分が楽しむためにお前を撒いたんじゃねえの?」
「それにしたって一言くらい・・・」
「言わない言わない。あっちも適当に楽しんでるだろうよ。」
「王子もこれからお楽しみですもんね。」
「だからお前はっ・・・」
「申し訳ないですけど、私、王子の遊びに付き合う気はこれっぽっちもないですから。」
「お前も冷え切った目で俺を見るな!!」
しかし、やはりサンドリヨンは見つかりません。
確かに自分たちは子供ではない。サンドリヨンも、もしかしたら自分を少しでも成長させるために、
あえて一人にしたのかもしれない。そんな考えが頭をよぎりましたが、やはり心配なものは心配です。
「王子。」
「あ?ああ、わかった。」
「?」
「お前の連れは今、別室にいるそうだ。」
「え?」
「迷子になっていたところを、うちの客人が保護したらしい。後で送り届ける。」
「そ、そうですか!よかった!」
「だから言っただろ?あっちはあっちで楽しんでるって。」
サンドリヨンが見つかったことで、ほっと一息つくと、
シンデレラはようやくこの舞踏会を楽しみたいと思うようになりました。
「・・・王子、私も舞踏会を楽しむことにします。一緒に探してくれてありがとうございました。」
「あ?ここで終わりだと思ってんのか?」
「え?」
「舞踏会を楽しむなら、一人じゃつまらねえだろ?俺が・・・」
「それなら私がお供しましょうか?」
「お前はすっこんでろ。」
『・・・笠井がすごく楽しそうだな。』
『逆に三上は苦虫を噛み潰したような顔をしている。』
優しい王子の言葉に驚きながら、シンデレラは差し出された手をとりました。
嫉妬や羨望の眼差しの中、ダンスを踊る二人は注目の的。とても美しい姿に多くの人が目を奪われました。
踊り終えると拍手が沸き起こったほどです。
「なかなか踊れるじゃねえか。」
「一通りの教育は受けているんです。」
「・・・嫁探しの舞踏会なんて、くだらねえって思ってたが・・・たまには悪くねえかもな。」
不敵に笑う王子の言葉の意味が、シンデレラにはよくわかっていませんでした。
けれど、なにやら少し照れくさくなり、顔を俯けてしまいます。
「王子ってば、よほどその方が気に入られたんですね。」
「あ?」
「・・・え?」
「そんな、女性お持ち帰りのときの常套文句まで使って。
今度は飽きたらポイだなんてしないでくださいね!」
「はああ?!」
「・・・っ・・・」
おおっと、まさかの従者の暴露に王子はどうするのでしょう。シンデレラもどうするのでしょう。
『次は横山が楽しんでるんですけど・・・!』
『さきほどは、なぜかつまらなそうにしていたからな。』
『三上っ・・・不憫な奴・・・!せっかく王子役だってのに・・・!』
「誰がお持ち帰りなんてされますかー!」
「誤解だ!せめてその誤解だけは解いて帰れ!!」
傷ついたシンデレラは一目散にその場を駆け出し、部屋から出て行ってしまいました。
王子と従者も彼女を追って・・・
「って、何してんだお前は!」
「いや、普通に走ったら追いついちゃうじゃないですか。」
「だからって何で止め方がクナイ?!ていうか服を刺すなーーー!」
「そういうのも期待されてるかなって。」
「お前、いつからそういうキャラになった?!」
「あはは、たまには俺も羽目はずしますよ。」
「わざわざ今を選んではずすな!!」
名前すら聞かなかった得体の知れない娘を、王子に簡単に追いかけさせるわけには行かず、
従者が王子を引き止めました。
けれど、その制止も振り切って王子はシンデレラを追いかけます。
その途中、少し遠くで声が聞こえました。
「言っておきますが、今、相手を決めないと会場に残る女性から選んでもらいますよ。」
「っ・・・あ、アイツは?!普通の女がいるっ・・・!」
「口を慎んだ方がいいですよ。会場にいる女性は普通じゃないって言うんですか。
ゴリラだって言うんですか。食べられますよ。」
「お前の方が失礼だ!!と、とにかく追うぞ!」
「チッ・・・つまらないな・・・」
聞き覚えのあるその声に反応しつつも、王子は必死でシンデレラを追うのでした。
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